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楽園

作者: 天ノ川夢人

 商用で東南アジアのスカティ共和国に入国し、首都で商用の取引の契約を済ませると、船で観光がてら離島に向かう。お目当ての離島では昼食代程度のお金で女を抱けるらしい。会社には一週間の休暇を届け出た。

 船が離島の港に着くと、街中の安モーテルに部屋を借りる。現地の社員にモーテルから外に出る際は貴重品は肌身離さず持って出るようにと言われている。

 昼食を食べにモーテルを出ると、日本人観光客らしき姿がちらほら見える。街角には美しい褐色の肌をした娼婦らが客引きをしている。大衆食堂に昼食を取りに入ると、店の奥の席に腰を下ろす。食堂には聴いた事のない英語のポップスが流れている。褐色の肌をしたスタイルの良い女が注文を取りにくる。女の親しげな眼差しは娼婦と区別出来ない程色っぽい。俺は隣の席の男が食べている焼き餅のような食べ物とシチューとビールを指差し、隣の男と同じ物を英語で注文する。店員は注文を受けると直ぐに俺のテーブルから離れ、厨房に向かう。

 注文した食事を緊張しながら食べていると、日本人客の団体が店内に入ってくる。何と言う料理かは知らないが、甘辛い焼き餅のような食べ物は非常に日本人の口に合う。シチューも辛めの味で美味しい。ビールもよく冷えていて、この国が生産している缶ビールのようだ。腹一杯飯を食わす食べ物のヴォリュームが良い。俺はこのスカティ共和国が酷く気に入り、また来てみたいと思う。

 食事を食べ終え、腹を満たすと、早々に席を立つ。頭が妙に爽快で、ビールが効いたのか、妙に足元がふらつき、世界が煌びやかに見える。店を出ると、娼婦達が通りで客引きをしている。化粧をした娼婦に比べると、先の店の店員は普通の女なのだと判る。

 客引きをする娼婦達の容姿を眺め、どの娼婦を買おうかと物色する。日本人には地黒と言う黒味がかった肌をした女性がいる。俺は子供の頃から地黒の女の子が好きだった。東南アジアの褐色の女性達は正に俺の好みである。彼女らの顔は日本人と違って、猥褻な程目鼻立ちがはっきりしている。俺は金髪に髪を染めた細身でグラマーな娼婦を買う。

「あなたは日本人です」と歩きながら娼婦が流暢な日本語で言う。「私の兄弟には日本人とのハーフが二人います」

「そうですか。父親の違う兄弟がいるんですね」

「私の母も娼婦でした」

「そうですか」と軽く受け答えをしながら、先進国の男達が行ってきた事を複雑な気持ちで受け止める。「直ぐ近くに私が泊まるモーテルがあります」

「そこの酒屋に日本酒が売ってます」

「ああ、じゃあ、買っていきましょうか。日本酒はお好きですか?」

「大好きです」

 俺は酒屋に入り、一升瓶の『白波』一本と安物の湯呑二つと干し肉を一袋買う。

「私は日本に五年住んでいました」

「へええ、そうですか」

「日本は良い国です。とても安全です」

「そこのモーテルですよ!」

「そのモーテルは高いです。もっと安いモーテルが沢山あります」

「いやあ、多少高くとも危険が少ない方が良いんです」

「そうですか」と娼婦が顔を歪めて言う。

 俺はその娼婦の顔を見て、何か危険な目に遭う予感がする。悪い予感がしながらも、娼婦を帰す決意が付かない。俺は周囲を警戒し、背後を振り返る。背後に怪しい追跡者らしき者はいない。モーテルのレセプションがしっかりしている事で娼婦の企みが果たせないのか。それならこのモーテルの選び方は正しかったと思う。俺は娼婦を連れてモーテルに入る。俺は先頭切って自分の部屋の前に行き、鍵を開ける。娼婦に背後に回られないようにとドアーを押さえ、娼婦を先に部屋に入れる。女が凶器を持っているとしても、ギャングに襲われる事の方を懸念してドアーの鍵を閉める。日本人は大金を持っていると外国人らは思っている。風呂に入っている隙に荷物や貴重品を盗まれるかもしれない。やる事もやらずに殺されるのは嫌だ。別に殺されると決まっている訳ではない。

「一緒にお風呂に入ろう!」と娼婦を入浴に誘う。

「良いですね!」と娼婦が笑顔で言う。娼婦は赤い花柄のミニのワンピースを脱ぎながら、浴室に入る。俺もスラックスのベルトを外し、廊下にズボンを脱ぎ捨てると、タイのない白い半袖のワイト・シャツを脱ぎながら、脱衣所に入る。娼婦は黒いレースのパンティーを脱いでシャワー室に入り、シャワーの湯を出す。娼婦に恥じらいなどは微塵も見受けられない。俺には外国人とのセックスの経験がない。日本のソープランドの女性には恥じらいも見受けられる。娼婦はこちらを向いてシャワーを浴びる。俺はそのシャワーの湯の下に入って、娼婦を抱き締める。娼婦の体の柔らかさを体で感じ、シャワーの水飛沫の中で娼婦にキッスをする。娼婦は俺のそそり立つペニスを握り、跪いて手で扱くと、ペニスを口に銜えてフェラチオをする。俺は娼婦の頭を両手で押さえ、強烈な快感をペニスに感じる。南国の食事は栄養があるのか、妙に快適な満腹感がある。日本に帰っても、あんな料理を食べに行きたい。それぐらいこの国の料理が気に入った。

 娼婦はフェラチオで俺のペニスを最大限勃起させると、立ち上がってキッスをしてくる。俺は娼婦を壁に追い詰め、娼婦の左の太腿を抱えて、モノを股の間の穴に挿入する。娼婦の豊満な胸を鷲掴みしながら、腰を前後に動かし、娼婦の穴の奥にモノを突き上げる。小柄な娼婦はすっかり良い気分になって、甘い声を漏らす。モノが穴の中の温もりに包まれ、ピストン運動がぺニスに快感を齎す。ゆっくりと腰を振りながら、この娼婦に満足を与えようと、射精の機会を延ばす。これきりの関係ながら、今まで関係した娼婦達の顔と体は全部憶えている。俺は娼婦の尻を揉み、娼婦の左の乳首に吸い付く。何と母乳が滲んでくる。

「お乳ですね」

「オチチって何ですか?」

「赤ちゃんが飲むミルクです」

「ああ、子供を産んだばかりです」

「セックスが好きなんですか?」

「体を売ると御褒美がもらえるので、なるべく休みません」

「御褒美って、何ですか?」

「この国では街中で娼婦をやると、国から多額の特別給付金が支払われるんです」

「へええ」

 俺は腰を激しく動かし、理性的に会話が出来る娼婦を快楽に酔わせる。麻薬がある国なのか。まさかレストランの料理にも麻薬が入っているのか。この頭の爽快感は南国の暑さから来るものではない。

「レストランの食事にもドラッグが入ってるんですか?」

「外国人にはサーヴィスで入れる事もあります」

「へええ」

 冗談じゃないぞ!それじゃあ麻薬中毒になるじゃないか!お金がある限り、南国の快適な暮らしを楽しめる。この国で仕事をすれば、ドラッグを手に入れられるのか。東京の生活に麻薬があっても、この南国の暮らしのようにはならないだろう。

「この国のドラッグは安いの?」

「安いです。この国にはドラッグなしで働く人はいません」

 ああ・・・・、イッた!

「どんな仕事をしてドラッグを楽しむのが幸せ?」

「あたしはセックスです。両親や兄弟は田舎で農業をやってます。太陽の陽射しを浴びながら、農作業をし、頭が朦朧としてくる感じにドラッグの気持ち良い感じが混ざってくるのが良いんです」

「俺も農業をやりたいな」

「農業を手伝うなら、村の人がお嫁さんを連れてきてくれます」

「へええ、夜は麻薬を打って、奥さんとセックスをするのか」

「奥さんに飽きたら、村の人の奥さんとセックスすれば良いんです」

「はああ、それは良いね」

「田舎は御飯も美味しいです」

「うん」と返事をする私の頭は完全にハイになっている。「お金がある裡に田舎の農家に行きたいな」

「じゃあ、家の叔父に明日の朝迎えにきてもらいましょうか?」

「ああ、はい。お願いします」

「まだ立ってるわね。ベッドに行きますか?」

「ああ、はい」

「若い人は皆、海岸で恋人とセックスしてます」と娼婦は話しながら、手早くタオルで体を拭き、脱衣所を出る。俺も急いでタオルで体を拭き、廊下に脱ぎ捨てた服を拾い集め、籐の椅子の肘かけに脱いだ衣類をかける。

 娼婦はベッドに腰かけ、タオルで濡れた金髪の髪を拭いている。俺はその打ち解けた姿を見て、再び性欲が募る。娼婦を押し倒し、白いシーツの上に横たわる娼婦の褐色の肌の輝きに唇を這わす。何と素晴らしい夜だろう。

 玉が小さくなる程セックスをすると、娼婦と日本酒を飲む。

「これを入れると良いお酒になります」と娼婦が一升瓶の中に白い粉を入れる。

「ドラッグですか?」

「はい。そうです」

「干し肉も沢山ありますよ」

「私達はこの干し肉をよく食べます」


 何時の間にか眠っていた。朝方目を覚ますと、娼婦がいない。財布やパスポートの入った鞄はある。娼婦が入口のドアーをノックして再び部屋に戻ってくる。

「叔父が迎えにきました」と娼婦が笑顔で言う。

「ああ、農業の仕事をくれるんでしたね」

「はい」

 俺は荷物を纏めてモーテルの会計を済まし、モーテルを出る。モーテルの前には白いピックアップ・トラックが止まっている。運転手の白髪の男が、「あなたが家に仕事をしに来る人ですね?」と訊く。

「ええ。宜しくお願いします」と俺は笑顔で言い、手を差し出す。白髪の男は握手で応じ、「車に乗ってください」と言う。俺は助手席に乗り、干し肉の袋を運転席と助手席の間に置き、「どうぞ、食べてください」と言う。白髪の男はにこやかな顔で、「ありがとう」と言って、干し肉を一つ素手で掴んで齧る。

「私はアタパンです。あなたの御名前は何ですか?」

「キヨトです。宜しくお願いします」

「宜しくお願いします」 

 この国の人達はドラッグによる快楽が根底にあるのか、とても爽やかな印象を与える。俺はもう麻薬中毒になっている。『覚醒剤やめますか?それとも人間やめますか?』と言う昭和のTVのコマーシャルが如何に日本人の心にドラッグの恐ろしさを根づかせた事か。麻薬や覚醒剤中毒は凡人には治せない。この国に住み、働いている限り、麻薬や覚醒剤は安く手に入る。麻薬事態は素晴らしく良い気持ちにしてくれる。薬物による快楽などなくとも普通に幸せに生きていた。今はもう違う。ドラッグを止める決意をしたなら、日本に帰れば良い。こんなに気持ちの良いものを止められるのか。アタパンがフィルターのない皺だらけの煙草を一本差し出す。

「ああ、俺は煙草を吸わないんです」

「吸ってみてください」

「ああ、じゃあ」

 アタパンが百円ライターを俺に近づける。俺は煙草をライターの方に近づける。

「口に銜えるんです」

「ああ」

 俺は煙草を口に銜え、アタパンが煙草の先に火を点ける。

 何とも品の良いお茶の湯気のような香りがする。アタパンは車を走らせる。何だか頭がすっきりする。

「どうですか?」とアタパンが訊く。

「頭がすっきりします」

「それはマリワナです。煙草よりうんと高いものです」

 高価なプレゼントながら、俺は複雑な気持ちで受け止める。

「キヨトとはどう言う意味ですか?」

「清らかな人と言う意味です」

「ほう、それは素晴らしい名前だ」

 アタパンは俺が手に持つマリワナを自分に遣すようにジェスチャーする。俺はマリワナを差し出し、アタパンはマリワナを手にして、思い切り煙を吸い込む。アタパンは再び俺にマリワナを差し出す。俺は入らないとジェスチャーする。アタパンはお前も吸えとでも言うようにマリワナを強く突き出す。俺は仕方なくマリワナを受け取り、もう一服する。美味ければ良いのか。気持ち良ければ良いのか。

俺はドラッグへの戸惑いを振り払うべきなのだろうか。真面目か?不良か?何て幼い判断力なのだろう。頭がフラフラッとした気持ちが良い。健康を気遣って喫煙すら避けてきた人間がマリワナを吸うのか。『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』でも聴きたいな。俺は自分がドラッグをやらない六十年代ロック愛好家である事に満足していなかった。

 アタパンがマリワナを遣せとジェスチャーする。俺はマリワナをアタパンに手渡す。何だか気持ち良くて眠くなってきた。


 何時間眠っていたのか。空が夕陽で赤く染まっている。車が田舎の民家の庭に泊まっている。運転席にアタパンの姿はない。寝かしたままにしてくれていたのかな。ああ、腹が空いた。クーラーは切ってないな。着いたばかりなのかな。ああ、アタパンが家から出てきた。アタパンが車の前で来い!とジェスチャーを示す。俺は車から降りる。アタパンは車のドアーを開け、エンジンを切る。車を降りると二人の若い女性が家から出てくる。二人は俺の両脇に片方ずつ腕を通し、俺と腕を組みながら、「あなた、日本人ね。日本人は私の好みよ」と年下に見える方の女の子が左側から流暢な日本語で話しかけてくる。ここに住み込みで働くようになると、日本語でも通じるんだな。俺も現地の言葉を憶える努力は惜しまない。

「名前は何ですか?」と年上に見える方の女性が訊く。

「キヨトです」

「私と妹と、どっちが好きですか?」

「あなたの方が好みです」

「それなら、明日、私と結婚式を挙げます」

「もう結婚ですか?」

「セックスは色々な女性と出来ますが、妻は一人です」

「はい。判りました」

 姉妹が何か話している。話し終えると妹の方が俺の腕から手を離して独り先に家の中に入っていく。我々も腕を組んだまま、後から家の中に入る。アタパンが姉の方に何か言う。

「あなたの名前は何と?」と俺が姉の方の名前を訊く。

「ダラです」

「ダラさんですか」

「ダラアチャラとも言います」

「長いからダラさんと呼びますね」

「はい」

 ダラの母親らしい女性が俺を迎えに玄関に出てくる。その人がダラと何かを話す。

「母のラタナです」とダラが母親を紹介する。

「キヨトと申します。宜しくお願いします」

「宜しくお願いします」とラタナが流暢な日本語で挨拶をする。

「日本語がお上手ですね」

「この国の者はほとんど皆、日本語を話せます」

「そうですか。それは良かった」

「妹さんの方の御名前を訊いていません」

 ラタナがダラの顔を見て、何か言う。妙に女性との関わりに神経質だな。

「妹はメカラと言います」とダラが言う。

「メカラさんですか」

 我々がフローリングの居間に入ると、「ここに座ってください」とダラが俺の座る席に案内する。床に直に座り、椅子や座蒲団や食卓はない。夕食がラタナとダラとメカラによって運ばれてくる。

「これがプー・パッ・ポン・カリーで、これがソム・タムと言うタイのサラダです」とラタナが説明する。

「タイ料理はトンヤムクンしか知りません」

「これから毎日色々なタイ料理が食べられます」と笑顔でラタナが言う。

 四十代のラタナにはまだ色気が感じられる。セックスは色々な女性として良いと言うフリー・セックスの村なので、何れはこの夫人ともセックスをするのだろう。熟女系の魅力に夢中になるかもしれない。妹のメカラにもそそられる。他にも近所の女性がいるだろう。やはり、ダラを妻に選んだのは成功だった。ダラには何処となく品のある高貴さが感じられる。明日は早速結婚式か。この村には初夜の儀式はあるのか。今日は誰かとやれるのか。

「美味しいですか?」とラタナが料理の感想を訊く。

「とても美味しいです」

「タイ料理は好きですか?」

「ええ。好きです」

「それは良かった」とラタナが笑顔で言う。

「息子さんはいないんですか?」

「息子は三人いますが、街の方に出稼ぎに行ってます」

「ダラは長女ですか?」

「三女です。もう二人の娘は街の人と結婚しました」

「六人兄弟ですか」

「ええ」とダラが言う。

 俺は外国人との付き合いが好きで、高校卒業後に英会話学校に一年通い、一年アメリカに語学留学をした事がある。アメリカの大学の芸術学部に進学しようとしたら、不合格となり、仕方なく帰国した。

 この家にはTVもレイディオやオーディオもある。夕食が済むと、アタパンが酒を持ってきて、「月でも見ながら、酒を楽しもう」と俺を誘いに来る。俺は床から立ち上がり、アタパンの後から庭に出る。ポーチにはベンチが置いてある。アタパンはベンチの端に座り、自分の左隣のベンチを手で叩いて、「ここに座れ」と俺に言う。俺はベンチに腰かけ、アタパンからグラスを受け取る。アタパンは俺のグラスと自分のグラスに氷を入れ、ウィスキーの水割りを作ると、白い粉を酒に入れる。粉はまた何かの麻薬なのか。

「さあ!飲もう!」とアタパンが言う。「チョンゲーオ!」

「チョンゲーオって、乾杯の事?」

「そうだ。英語で言うチアーズだよ」

「チョンゲーオ!」と俺は言い、水割りに口を付ける。白い粉に味はないようだ。夜空を見上げながら、満天の星を眺めていると、原色の色様々な星が煌いて見えてくる。これは幻覚だろう。これだけ麻薬や覚醒剤をやったら、日本に帰ったら、精神科の厄介になる。もうずっとこの国にいないと麻薬にはあり付けない。

「日本には恋人がいるのか?」とアタパンが訊く。

「いるけど、日本ではドラッグが手に入らない」

「じゃあ、ずっとこの国にいるつもりか?」

「出るに出れないよ。精神科の厄介になる人生も嫌だ」

 アタパンはグラスをベンチの端に置き、胸ポケットから紙巻煙草の紙を出して、マリファナらしきものを紙で巻く。アタパンは紙の端を嘗めて糊付けすると、口に銜えて火を点け、一服深く吸い込んでから俺に手渡す。俺はそのマリファナらしきものを深く吸い込む。日本茶の湯気のような香りがする。高級煙草のようだ。夜空の星の一つ一つが雪の結晶のように見え、空が明るくなる。これは素晴らしいけれど、もう日本には帰れない。何とも悲しくなる。右目から涙が滴ると、アタパンが左腕を伸ばして俺の肩を抱き、「俺の息子よ!元気を出せ!」と楽しそうに言う。俺もここでこの人のように幸せになるのだろうか。

「この村では結婚式の前夜だけはセックスをしてはいけない決まりがあるんだ」

「ああ、はい」

「結婚式が終わって、初夜を迎えたら、後は村中の誰とセックスをしても良いんだ。判ったか?」

「はい」

 アタパンが自分と俺のグラスにウィスキーを入れ、ウィスキーに白い粉を混ぜる。飲んでみると、妙に心が舞い上がるように爽快だ。頭の中で言葉を紡ぐと脳から何か気持ちの良いものが流れ込んでくる。

「街に行けば、日本料理も食べられる。季節毎に農作物を街に届ける。その時に一緒に街に行って、日本料理を食べよう!」

「はい」

「私の事はポーと呼べ。お父さんを意味する。ラタナの事はメーと呼べ。お母さんを意味する」

「ポーとメーか。判りました」と俺は呟いて、ウィスキーに口に含む。

「何か日本の歌を歌ってくれ」とアタパンが言う。

「じゃあ、ノリユキ・マキハラの『どんな時も』を歌います」と俺は言って、咳払いをすると、イントロも口ずさんでから歌を歌う。僕が僕らしくあるためにのところで妙に泣けてくる。俺にはまだこの国で一生を過ごす覚悟は出来ていないのだ。

 歌い終わると、アタパンが大喜びして拍手する。

「他にも歌える歌はあるのか?」とアタパンが訊く。

「日本ではカラオケをやるのに随分と歌の歌詞を憶えました。二、三十曲は歌えます」

「それなら、村の祭りの日に日本の歌を披露すると良い」

「この村には私の他に日本人はいますか?」

「昔は元日本兵の爺さんがいたよ」

「今は?」

「今はもういない。その爺さんのハーフやクオーターの子孫ならいるよ。日本人に似てるのは多紀と美弥子ぐらいかな」

「何歳ぐらいの女性ですか?」

「多紀が四十八歳で、美弥子は二十二歳だ。やっぱり日本的な女性を時々抱きたいか」

「ええ、まあ。しかし、自由な村ですね。楽園のようです。で、その人達は日本語を話せるんですか?」

「話せるが、中身は全くのタイ人だよ。日本の漫画やCDをよく買ってくるがな。家にも日本のレコードや本が幾つかあるよ」

「今度見せてください」

「今見せてやるよ」とポーが立ち上がり様に言う。私も立ち上がると脚元がふら付き、地面に尻餅を突く。

「大丈夫か?」とポーが笑いながら言う。

「大丈夫です」と俺は言いながら、立ち上がる。ポーは家の居間のオーディオのところで谷村新司の『昴』とザ・チェッカーズの『星屑のステージ』のシングル・レコードを見せる。他にもアメリカの五十年代ポップスのオムニバス・テイプやエルヴィス・プレスリーの『ブルー・ハワイ』やザ・ビートルズの『レット・イット・ビー』などのLPレコードがある。ポーは他にも美空ひばりの『川の流れのように』や八代亜紀の『雨の慕情』のシングル・レコードを見せる。本棚には川端康成の『雪国』や夏目漱石の『こころ』や村上龍の『限りなき透明に近いブルー』などがある。本は他にもヘミングウェイの『老人と海』やシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』や『リア王』などがある。本棚には地元の雑誌や漫画などもある。日本の『コブラ』や『アキラ』や『北斗の拳』などの漫画もある。

「ベッドは家族分しかないから、今夜はソファーで寝てくれるか?」とポーが訊く。

「ああ、はい。判りました」

「夫婦の家は何れ村のもんが建ててやるから心配するな」

「はい。ありがとうございます」

「あんたはもう家の家族で、村の大切な仲間なんだ」

「嬉しいです」

「俺も若いもんのように一度東京に行ってみたいよ」

「東京に行く時は俺も連れていってください」

「勿論だとも」

 俺は急に悲しみが募り、嗚咽しながら、泣き出してしまう。

「おお!俺のルーク・チャイ!泣くな泣くな!」と言って、俺の肩を抱く。

「何だか急に悲しくなってしまって・・・・」

「判るよ。この国のドラッグを恨んでいるんだろう?」

「ええ。日本に帰ったら、麻薬中毒者は精神科の管理下に置かれるんです。ルーク・チャイって、どう言う意味ですか?」

「タイ語で息子を意味するんだ。さあ!今夜はもう寝なさい。我々もそろそろ寝るから」

 俺は台所に入り、お水をグラスに二杯飲む。ポーが近づいてきて、「明日の結婚式の衣装と装飾品や靴のサイズを測りたいんだが良いかな?」と訊く。

「どうぞ」

 ポーが俺の体のサイズを測り終えると、背後からメーが近づき、「これ、あなたの歯ブラシよ。歯磨き粉は家の家族のを使って」と言う。

「ありがとうございます。有り難く使わせて戴きます」

 ポーが居間の電気を消すと、俺はソファーに横たわり、メーにタオルケットをかけてもらう。

「ノーン・ゴーン・ナ」とメーが優しく言う。

「ノーン・ゴーン・ナってどう言う意味ですか?」

「おやすみなさいのくだけた言い方よ」

「それじゃあ、ノーン・ゴーン・ナ!」


 風呂場で体を洗っていると、メーが全裸で風呂場に入ってきて、スポンジで俺の背中を洗ってくれる。俺は鏡で自分に隠れたメーの裸体の一部を見ている。メーは俺のモノを背後から握り、石鹸の泡で扱くようにモノを洗う。俺は素早く振り返り、メーを抱き締めると、メーの背中の滑らかな肌を撫ぜ、メーに口付けする。メーは舌を俺の口の中に入れ、俺の舌に舌を絡ませる。俺はメーを抱えて、モノをメーの膣に挿入する。四十代のメーへの性欲には余裕があり、ゆっくりと紳士的にメーの体を上下させる。メーの喘ぎ声が官能的で、モノが限界まで勃起し、固くなる。メーの穴は締りが良い。俺はメーの左の乳首を銜え、メーのアナルに左の中指をそっと入れ、ゆっくりと出し入れする。メーはアナルへの挿入が嫌いではないようだ。モノがメーの穴の中でよく締め付けられ、今にも行きそうなところを堪えている。メーは俺のモノを軸に激しく体を上下させる。メーの声が激しく乱れる。三十センチも勃起したモノを穴に受け入れるメーは自分勝手と言える程激しく体を上下させる。ああ・・・・。俺がメーの膣の中に放つと、メーが声もなく、俺の体にしなだれる。メーもイッたようだ。メーの香りが鼻を刺激し、俺はメーを風呂場の洗い場に横たわらせると、メーの穴に挿入したまま、まだ勃起しているモノを激しく前後させる。この熟した女の色っぽさが堪らなく良い。 


 物音や話し声がし、目が覚める。壁にかけられた時計を見ると、早朝の六時半である。トイレに行くと、下着の中でモノが夢精している。良い夢を見た。ラタナには出会った時から欲情していた。娘の母親とセックスをしても良い村なのだろうか。ラタナはダラの母親とは言え、まだまだ女だ。ラタナとはマザコンと解する程年は離れていない。いやあ、本当に良い夢を見た。

 今日はダラとの結婚式だ。ポーが言うには、普通は前日に親戚縁者に結婚式がある事を伝え、前日から結婚式の出席者が来るものらしい。今回の結婚式には俺側の親戚縁者がこないので、昨晩、ポーとメーが電話で親戚らに結婚式がある事を伝えたらしい。俺が寝た後から親戚達が続々と訪れ、今朝は家の外でダラの親戚らの声がとても賑わっている。結婚式に必要な物は全て用意してあるとポーは言う。

 参列者はピンクや白を基本とした服装をし、新郎の俺はグレイのスーツに黄色い袈裟を左肩から斜めにかける。日本のように参列者に黒いスーツなどを着ている人はいない。新婦の親類がバナナの葉でバイシーと言うおめでたい置物を作った。爆竹の破裂音を合図に参列者が封筒に入れたお金を参加者に手渡す。新郎は新婦の部屋に入る前に靴と靴下を脱ぎ、足を清める。結婚式の出席者は捧げ物を差し出すと、石鹸を一つ取って去る。

 新郎である俺が新婦のベッドルームに迎えに行く。新婦のダラもグレイのドレスに黄色い袈裟を左肩から斜めにかけている。

 愈々結婚式の儀式である。金のネックレスやブレスレットやリングなどのプレゼントを新郎の俺が新婦のダラの首や腕に嵌める。その次に金のネックレスをダラが俺に嵌める。聖糸を新郎の俺と新婦のダラの腕に嵌める。聖糸は結婚式後三日間外してはならない。

 それが済むとパーティー会場に移動する。パーティー会場には御馳走がたんまりと用意されている。

 生バンドの演奏がある中、参加者は自由に寛いで食事を楽しむ。新郎の俺と新婦のダラが結婚式の参加者の各テーブルを巡り歩く。この国では箸も使う。炒飯などの中華料理も食べる。食事が済むと参加者は自由解散し、最後にもう一度新郎新婦の記念撮影をする。


 一日慣れない国の慣わしに従って結婚式を行い、夕方、漸くダラと二人きりになる。俺はダラと一緒に近くの浜辺に行く。俺はダラのために浜辺にハンカチーフを敷き、「どうぞ」と言って、彼女に浜辺に腰を下ろすようにと勧める。ダラが緊張しているようなので、浜辺に腰を下ろした俺は彼女の肩に右腕を回し、肩を抱く。

「俺も漸くこの国の人間になるんだな」

 ダラは黙って夕陽を眺めている。ダラは見も知らぬ外国人との結婚が憂鬱なのだろうか。俺はダラの顔を覗き込み、ダラの唇に軽く口付けする。その途端、ダラの心に火が点き、ダラが俺の唇を貪るように口付けする。俺はダラを浜辺に押し倒し、ダラの股間に右手で触れ、左手でダラの御椀程の右の胸を揉む。俺はダラのシャツを捲り上げ、ダラの胸の谷間に顔を埋めると、ブラジャーのホックを外し、ダラの左の胸の乳首を吸う。俺はダラの唇に再び口付けし、黒いレースのパンティーを脱がして、ダラのクリトリスを右手の中指で刺激する。俺はダラの右の胸の乳首を吸い、ダラの両腕を頭の上に合わせて上げ、ダラの黒い腋毛に唇を這わせる。俺はダラの左の乳首を吸い、ダラの股間に顔を近づけて、ダラのクリトリスを嘗め、右手の中指をダラの膣の中で激しく前後に動かす。ダラは激しく可愛らしい声で喘いでいる。ダラが濡れてくると、ズボンのベルトを外し、モノをズブリとダラの膣に挿入する。ダラと見つめ合い、ゆっくりと優しくモノを前後に動かす。この人が俺の妻か。悪くない。外国人の女性と結婚する事とは夢にも思わなかった。ドラッグに中毒になって、日本に帰国したら、精神病院送りになる。日本には帰りたくとも帰れない。激しく腰を動かしたいところを根気良くゆっくりと腰を動かす。女性に尽くす男の役割りをきちんと出来るようになりたい。神様に祝福された初夜なのか、モノの勃起状態が今までになく長い。三十センチはあるのではないだろうか。若い頃にソープランドで童貞を捨てた時にもこんな長い勃起状態があった。アダルト動画の日本人男優でこれ程長く勃起したモノは見た事がない。ダラは右手の指を銜え、顔を右側に向ける。腰をゆっくりと前後に動かしている最中にも俺はダラの顔を眺めている。ダラも気持ちが良いんだな。女性がイクまで根気良くゆっくりとしたピストン運動を続けられる愛情豊かな男は余りいない。俺のモノはまだ感じてもいない。ペニスの挿入に安心し始めたダラが俺のモノをきつく締め付ける。ああ、これならイク。限界まで堪えて、最高の射精をしたい。モノは温かい穴の中で温められている。俺はダラの穴からモノを外し、ダラを抱き起こして、浜辺に仰向けに横たわる。俺はダラに上に乗るようにと手招きする。ダラは笑顔で俺の腰に跨り、モノを自分の穴に手で入れる。俺は女性に騎常位に誘う事も男のエスコートの一つであると思っている。騎乗位は一見男には楽なセックスのようで、素人相手では少々不安な体位でもある。ダラは楽しそうに俺のモノを中心に受け入れて上下に腰を動かす。ダラが自分の穴の中で俺のモノをシェイクするような事まで出来るようになったなら、我々のセックスは向上した事になるだろう。この体位でセックスをする度に俺は自分がモノだと強く自覚する。いつも自分をモノだと思って生活していたら、一体俺はどんな男になるのだろう。モノがダラの中できつく締め付けられ、俺は限界に達し、遂にダナの中で破裂する。こいつが俺達の第一子の誕生に繋がれば良い。

「ダラ、もうそろそろ家に入ろう」

「良いわよ。皆、あたし達が帰ってくるのを待っているでしょう」

「日本語が美味いな」

「そう?ありがとう。あたしは日本人の友達が沢山いるの」

「俺みたいにこっちに住み着いた日本人かい?」

「父親のビジネスで家族全員揃って転校してきたような日本人達よ。あたしは日本語をマスターしたかったから、一生懸命彼らに食い付いて日本語を勉強したの。まさか自分が日本人男性と結婚するとは思わなかったけど」

「俺と結婚した事を後悔してるの?」

「そんな事ないわ。あたしは今、とても幸せな気持ちよ」

「それなら良いけど、俺が日本に帰る時は必ず君を連れて帰る」

「うん」とダラが目を丸くして言う。ああ、当たり前の事なんだな。

 俺はこの国にずっと留まる事は出来ない。ダラには申し訳ないが、俺は何時か必ず日本に帰る。

 ダラと俺は手を繋いで田舎道を歩く。紫色とピンクの夕焼け空がとても綺麗だ。家は海岸から直ぐ近くにある。俺とダラは畑の間の道を歩きながら、日本の『夕焼け小焼け』を日本語で歌う。ダラは歌が上手い。

 ポーとメーのいる家に帰り、居間のソファーに腰を下ろすと、ダラは台所に向かう。ダラはアイス・ティーをグラスに入れ、自分のと俺の分を持ってくる。俺はダラからグラスを受け取り、アイス・ティーで喉を潤す。とても甘くて冷たい紅茶だ。

「今夜は結婚式の余り物で夕食みたいよ」

「今日の結婚式は御馳走三昧だっけど、緊張して碌に食べ物が喉を通らなかったよ」

「あたしもそうよ」

 玄関からポーが家に入ってきて、「ルーク・チャイ!」と俺を呼ぶ。

「はい!何でしょう?」

「一寸外に出ないか?良いもんが手に入ったんだ」

「今、行きます!」と俺は言って、アイス・ティーを飲み干す。ダラがグラスを手渡すようにと手を差し出す。俺は空のグラスをダラに手渡す。

 ポーチに出ると、ポーが俺を見て、ベンチの隣の席を手で叩く。俺はポーの左隣に腰かける。ポーは白い錠剤を差し出す。俺は右掌でその錠剤を受け取る。ポーは錠剤を口に入れ、噛み砕く。俺もポーの真似をして錠剤を口に入れると、錠剤を噛み砕く。ポーは二つのグラスに氷を入れ、ウィスキーを入れ、水で割る。ポーはグラスの一つを俺に手渡す。ポーはウィスキーの水割りを口に含み、錠剤を飲み干す。俺もウィスキーの水割りで錠剤を飲み干す。頭がクラクラするような酔いが回り、何だか頭がすうっと気持ち良くなる。

「どうだ、気分は?」

「頭が物凄く爽快です」

「そうだろう!これは高級なドラッグでな、なかなか手に入らないんだ。親戚連中がおみやげに持ってきたんだよ。他にも良い薬を一杯もらったんだ。都会の方ではどんな薬でも手に入るんだよ」

「頭が最高にすっきりしてます」

「酒なんかじゃこうはいかないぞ」

「はい」

 このままどんどんドラッグ中毒になっていくのか。もう引き返せないのか。この国にいる限り、ドラッグは簡単に手に入る。この国にいる限り、ドラッグには苦しまない。俺は何れ日本に帰るつもりでいる。どうしたら良い。この国から逃げるべきか。帰国したら、精神科にぶち込まれるぞ。頭のおかしい人間と一緒くたにされるんだ。ドラッグが絶えたら、俺も頭がおかしくなるのか。このまま快楽に溺れて身を崩すのか。ポーは精神病じゃない。皆、一見普通に見える。この国にいれば、幸せなドラッグ・ライフを生きられるのか。それは良くない。俺らしくない。俺は判断を誤ったのか。

 ポーが俺の空のグラスに氷を入れる。氷がグラスに入る音が妙に澄んでいる。ポーは俺のグラスにウィスキーを入れ、水を入れる。

「ありがとう」と俺は礼を言う。本当は酒浸りも良くない。「ポー!」

「何だ?」

「俺、ドラッグを止めたい」と俺は打ち明け、涙を零す。

 ポーは酷く困った顔をする。

「そんな悪質なドラックは与えてないんだ。この国のドラッグ中毒者はドラッグを止める事を望まない。ドラッグと共に生きて自分が成り立っているんだ。そんな子供のように泣くな」

 俺は黙って眼を瞑って泣き続ける。

「この国は幸せな国かな?危機的な状況に瀕しているのではないかな?」

「危機的な状況に瀕しているって、どう言う意味だ?」

「危険な目に遭っていると言う意味です」

「俺がお前にやったドラッグは命の危険はないものばかりだよ」

「でも、俺、ジャンキーになってるんでしょう?」

「そう言うアメリカ人がやるような中毒性や知能低下や幻覚作用のあるようなドラッグではないんだ。酒を飲め!ドラッグに関する悪い考えに染まってる」

「はい」と俺は涙声で言って、ウィスキーの水割りを飲む。

「ポー!キヨト!御飯よ!」とダラが玄関の戸を開けて、笑顔で我々を食事に呼ぶ。俺はハンカチーフで涙を拭き、泣き止むまで心を落ち着ける。

「ルーク・チャイ、先に行ってるぞ」とポーは言い、ベンチを立つ。

 夕食は豪勢な結婚式の残り物だから、肉料理もふんだんにある。床の上の自分の座に腰を下ろし、御馳走を戴く。

 ポーが真面目な顔でメーと話している。俺の事をチラチラと見ながら話しているから、俺が日本に帰ろうとしている事を話しているのだろう。ポーは俺とダラの新居も建ててくれると言う。ドラッグ三昧の生活に憧れるのは快楽主義者だけだろう。人間は適度に禁欲的な生活をするものだ。頭が妙にスカーッとして気持ちが良い。トニック・シャンプーよりスーッとする。ドラッグが切れたら、この爽快感が消え、普通の健康状態の頭になる。ドラッグ三昧の生活ではそこでまたドラッグを摂取する訳か。

「頭が良くなるだろ?」とポーが俺に確認する。

「ええ。スカーッとして、頭がよく働きます」

 ポーは満足そうに何度も笑顔で頷く。

「明日からお前達の新居を建てる。子供が沢山生まれると良いな。この村では女のセックスも自由だ。自分の妻とするセックスは子作りの時期ぐらいだ。同じ女とのセックスや同じ男とのセックスには飽きるんだよ。この村では村中の女としても良いんだ。女も結婚すると色んな男とセックスをする。そうなると嫉妬深い夫や妻などは現われない。しかしだな、自分の夫、自分の妻とは一人しかいないものだ。夫婦は仲睦まじく暮らすのが一番良い。夫婦共々或程度性を発散させながら、中睦まじく暮らすと良い」

 俺はダラと笑顔で顔を見合わせる。

「キヨトやダラとセックスをしたい男女は大勢現われるだろう。メーもキヨトを気に入っている」

 俺は自分が赤面しているのを顔の熱さで感じる。やはり、メーとしても良いのだ。

「キヨト、メーはこの村ではとても人気があるんだよ。別にお前がしたいと思うのはおかしな事じゃない」

「そうなんですか」

 メーがこっそりと俺にウィンクする。

「ダラと仲良くしてね」とメーが言う。

「俺は日本に帰る事はないんでしょうか?」

「ドラッグを止められる人はいないの」とメーが同情するような目で言う。「私達、女性もドラッグはやるのよ。ここらでは危険な幻覚作用のあるドラッグは入ってこないの。マリワナは家の畑で大量に栽培しているから決して尽きる事はないわ。ここにいれば、ドラッグには決して困らない。ドラッグは受け入れる者を必ず幸せに保つわ」

「ドラッグって、悲劇的な人生に繋がっていくでしょ?」

「手に入らなくなればね。私達は仕事をしてるの。あなたも私達と同じ畑で働くのよ。この国ではドラッグが安く手に入るの。この国ではドラックとは切っても切れない関係にあるの。誰でもドラッグをやるのよ。一日三食の食事と同様にドラッグをやるの」

「恐ろしい・・・・」

「怖いって感情より気持ちが良いのよ」とメーは言って、微笑む。「あなたのドラッグに対するマイナスの受け止め方は外国のドラッグの情報のせいよ」

「不安があって」

「ポー、不安の消える薬があるわよね?」とメーがポーに言う。「キヨトは気持ちをプラスに持っていくドラッグが必要よ」

「キヨトには困ったものだ」とポーが苦しげに言う。

「そうね。そろそろ食事にしましょうか」とメーが言う。

 女性陣が我々の前に食事を運んでくる。

「キヨトとダラの家は一月もすれば完成するよ」とポーが言う。「その家は我々からのプレゼントだ。家が出来上がるまでの一月は二階の屋根裏部屋で寝起きすると良い」 

「何から何までありがとうございます」

「ルーク・チャイ、お前は我々の息子だよ」とポーが笑顔で言う。

「はい。これからも宜しくお願いします」

「さあ、夕食を食べよう!」とポーが言うと、各々神様か仏様に感謝の祈りを捧げる。俺も太陽神を想って手を合わせてから肉料理を口に入れる。お腹が空いていたから余計に美味しい。結婚式の料理の余り物だから、御馳走三昧である。結婚式のあった日中は緊張して食べ物が碌に喉を通らず、ほとんど食べていなかったので、とてもお腹が空いている。

 夕食を食べながら、この家族の幸せそうな顔を見て、こんな国があっても良いのかなと少し気持ちが傾く。ドラッグ漬けの人生の何が良い。このままこの国に留まったら、俺も段々と満足な判断が出来なくなるのだろう。俺は商用でこの国に来たのであって、ドラッグの巣窟に足を踏み入れるために来たのではない。日本に帰って、精神科に入院した方が良いのか。精神科に入れられてドラッグが切れたら、想像を絶する程の辛い思いをすると聴いている。凡人はドラッグを止め切れないとも言う。自分はどうだろう。

「ルーク・チャイ、食事中に随分と深刻な顔をして考え事をしているようだが、ドラッグに関する事は心配する必要ないんだ。ドラッグを必要とするのはお前自身なんだ」

 奇妙な考えだ。ポーの考えには何かが抜け落ちている。ポーがにやりと微笑む。俺は批判的な目を向けている事に気付き、目を伏せる。

「ドラッグと仲良くすれば良いだけだよ。大切な物として受け入れるんだ。スカティ共和国で開発しているドラッグは悪魔の薬じゃないんだ。サプリメントのように正当なドラッグなんだ」とポーが言う。

 俺は白米を嚙みながら、茶碗に涙を落とす。

 夕食を食べ終え、家族団欒の会話を楽しみ、ダラと一緒に入浴をする。メーが俺を見つめている。メーは本当に色っぽい女性だ。俺はメーと愛し合う日を予定に入れて、ダラと愛し合う事を考えている。脱衣所で俺とダラは服を脱ぎ、ダラと一緒に浴槽に入ると、スポンジで互いの体を洗い合う。灯のあるところでダラの裸を見て、ダラの体が美的である事に気づく。ダラは俺の腰の上に乗り、俺の勃起したモノを穴に入れる。ダラが穴の中で俺のモノを締め付け、念入りに腰を上下させる。俺の頭は快楽に朦朧としてくる。ダラは恐らく処女ではなかったろう。こんなにセックスの上手い女に出会った事がない。ダラは騎乗位で自由に俺の勃起したモノを穴の中で利用する。ダラは激しく可愛らしい声で喘ぐ。俺はダラと口付けし、ダラの両胸を揉む。ダラの乳首が長くなり、硬くなっている。俺はダラの左の乳首を吸い、軽く嚙む。ダラの尻に手を回し、アナルに左の中指の第一関節まで入れ、小刻みに指を動かす。ダラが穴の中で更に俺のモノを締め付ける。ダラの腰の動きが卑猥な程細やかに動く。俺をさっさとイカせようとしているのか。俺は射精を堪え、ダラに縋り付くようにダラの上半身をきつく抱き締め、ダラの腰を腰の括れを掴んで上下させる。ダラは相当に感じているようで、半分白目を剥いている。やはり、ダラは処女ではなかった。初めてのセックスがこれ程激しくても痛くない事で判る。まあ、処女より淫売の妻の方がセックスは楽しい。ああ・・・・、イッた!

「キヨト、イッたわね。あたしももうそろそろイくわ」とダラは言って、俺のモノをシェイクする。ダラは感じるだけ感じてセックスを楽しむ。射精した俺は満足してしまい、ダラの両胸を手で軽く覆うぐらいしかしていない。射精に満足していると間もなくダラがイく。

 俺達は浴槽の中で眼を瞑り、静かに抱き合う。

「良かった?」とダラが甘えたような声で訊く。

「良かったよ。君は?」

「最高よ。こんな気持ちの良いセックスはした事ないわ」

「そうか。それは良かった。マリワナを吸いたいな」

「もう少しこうしてて」

「うん」と俺は言い、ダラの濡れた後ろ髪を撫ぜる。浴室から満月が白く輝いて見える。俺はダラの柔らかい内腿を左手で揉む。

「ここ、柔らかくて良いね」

「あなたが望むだけあたしの体を楽しんで」

「後はベッドでまたしよう」

 ダラはさっと俺の体から離れ、「そうね。またベッドでしましょ」と明るい声で言う。ダラの大きな茶色い眼が美しく輝いている。ダラは浴槽から出て、脱衣所に出る。俺も浴槽を出て、脱衣所に戻る。俺はダラの濡れた体をバスタオルで拭いてやり、「マリワナを吸ったら、直ぐにベッドに行くよ」と言う。ダラも自分のタオルで俺の体を拭く。ダラは俺の勃起したモノを右手で強く握り、しゃがんで俺のモノを銜える。

「またイキたい?」とダラが俺を見上げて訊く。

「後でね」

「まだこんなに立ってるのに」とダラが名残惜しそうに言って、モノから口を離し、立ち上がる。

 俺はバスロープを裸に羽織り、ポーチに出る。ポーチにポーの姿はない。ポーのマリファナがベンチに置いてある。それを口に銜え、火を点ける。本当にこのままジャンキーになっていくのか。飲み物も水でなく、酒を飲む習慣になっていくのか。マリワナよりは煙草の方が良いだろう。

 ダラがグラスを二つ持って、ポーチに出てくる。

「ダラ、明日、煙草を買いに行きたいんだ」

「じゃあ、ポーに明日、買い物の時にあなたを車に乗せていってくれるように頼んでおくわ」

「ありがとう」

「これ、アイス・ジャスミン・ティー」とダラがグラスに入ったお茶を俺に差し出す。

「ありがとう」

 俺はアイス・ジャスミン・ティーを口に含む。無性にウィスキーが飲みたい。

「ダラ、ウィスキーの水割りが飲みたいんだ」

「じゃあ、今、作って持ってくるわ。あたしも飲みたい」とダラはポーチのベンチにグラスを置いて、ベンチから立ち上がる。

「出来たら、干し肉の残りも食べたい」

「判ったわ」

 祖国に帰らない人生か。この国にずっといたら、何もかも判らなくなるんじゃないか。飛行機のチケットを買う事も出来なくなり、何とか飛行場に行っても、パンツ一丁で飛行機に乗ろうとするところを止められたり。末恐ろしい。ポーは街に車で買い物に出かけたり、収穫物の出荷をしに行くか。なるほど。ドラックが安く手に入り、ドラッグが切れる事がないのか。

 ダラがウィスキーの水割りのグラス二つと干し肉を載せたトレイを持って、ポーチに帰ってくる。ダラがトレイをベンチの真ん中に置き、その左隣に腰を下ろす。俺がグラスを手に取ると、ダラもグラスを手に取る。

「かんぱーい!」と俺が日本語で言うと、「カンパーイ!」とダラがカタカナ風の発音で言う。俺はウィスキーのグラスに口を付け、舌の上でウィスキーを味わう。ダラは藍色の夜空をぼんやりと見上げ、ウィスキーを口に含んで、喉を震わす。俺は干し肉を一つ手で掴み、甘辛い肉の味を楽しむ。

「この国では肉食は普通にするの?」

「プリースト以外は自由にお肉を食べてるわよ」

「ダラは人生に修行が必要だと思う?」

「勿論よ。修行のない人生なんて何の意味もないわ」

「俺もそう思うよ」

「ドラッグは気持ち良いからするのよ。修行者でも気持ち良い事はこの世の幸せに繋がるわ。生きていて不幸な人は大して良い事もしないわ」

「この世の幸せね。普通に重要な事だよね」

「自分が幸せになったら、他の人も幸せになって欲しいと願うものでしょ?自分が不幸なのに他者を幸せにする事なんて出来ないわ。だって、その不幸な人は幸せになる方法を知らないんだから」

「そうだよね。先ずは自分が幸せにならないといけないよね」

 俺はドラッグ中毒になる不安をどうにも振り払えない。こんな風にドラッグに関わり続けるのは良くない。これではまるで自分の意思がないではないか。

 憂鬱な顔をしてしょんぼりしている俺の左の頬にダラが突然チューをする。俺は驚いて、ダラに笑顔を見せると、干し肉を掴んで、ダラの口に近付ける。ダラは俺の手に握られた干し肉に齧り付き、笑顔で干し肉を味わう。ダラは眼を瞑り、「お肉美味しいわね」と感激したような明るい声で言う。

「そろそろ寝室に行こうか?」と俺がダラに言うと、「明日はあなた、ポーと街に買い物に行くのよ」

「ああ、煙草を買い溜めしたいんだよ」

「マリワナがあるじゃない」

「マリワナを常用しようとは思わない」

「何で?煙草より美味しいって、皆言うわよ。家は山にマリワナを栽培している大きな畑があるの。その畑から幾らでもマリワナが手に入るのよ」

「完全な麻薬中毒になったら、日本に帰れなくなるよ」

「こっちと日本のどっちが良いの?ドラッグが手に入らない日本の方が良いの?」

「ううむ」

「さあ!寝ましょう!」とダラが言って、ベンチから立ち上がる。

「うん」と俺は言って、ベンチから立ち上がり、ダラの後に着いて家の中に入る。ダラはグラス二つと干し肉の皿が載ったトレイを台所に持っていく。俺は歯を磨きに洗面所に行く。

 二階に上がり、ダラと俺の寝室にダラと一緒に入る。二階はお香の匂いが立ち込めている。

「お香の香りがするね」と廊下の先の薄暗がりを見ながら言うと、「ポーとメーの寝室よ」とダラが寝室に入りながら、背を向けて答える。

「皆、信仰心があるんだね」

「この国のほとんどの人が信仰に生きてるわ」

「ふううん」と不思議な気持ちでこの国の現実を受け止める。

 ベッドの前でダラが寝巻きを脱いで、黒い上下の下着姿になると、俺にウィンクをして、両手を俺の方に差し伸ばす。細身だが、出るところは出た女らしい体にムラムラと性欲が募る。本当に良い女を妻にもらった。モノが瞬く間に立ってくる。俺は服を脱いでダラの上に乗る。

「もう立ってるのね」とダラが俺のモノを見て言う。「夫婦は何回も何回も愛し合って、本当の夫婦になっていくものよってメーが言ってたわ」

「セックスは誰としても良いって本当?」とダラの髪を撫ぜながら訊く。

「本当よ。でも、夫や妻は一人なの」

「不思議なルールだね」

「もう他の女性に興味があるの?」とダラが笑いながら訊く。「大切なのはセックスの相手ではなく、夫婦関係よ」

「うん。この国にもゲイはいるの?」

「この国では同性同士の性行為は罪じゃないの。同性婚も認めているわ。あなた、男としたいの?」

「いや」

「この国には純粋なゲイは少ないわ。ゲイのほとんどがヴァイセクシャルになっていくのよ」

「へええ。何か判るような気がするな」

 俺はダラの薄く美しい唇に口付けする。ダラの乳首が硬く突き出ている。俺はダラの左の乳首を吸い、上半身を起こして、ダラの股を開いて、ダラの両脚の間に膝を突く。俺はダラの上半身の脇に手を滑らせ、括れた腰を両端から掴む。俺はダラの柔らかい内腿を揉み、ダラの内腿にしゃぶり付く。

「あたし、もう濡れてきたわ」とダラが甘い声で囁く。「入れて」

 俺は三十センチに勃起したモノを掴み、ダラの穴に押し込む。

「大きい」とダラが呟く。

「ドラッグをやる前は初体験の時以外こんなに勃起した事はなかった」と俺はダラを見下ろして言い、ゆっくりと腰を動かす。俺はダラの両足首を掴み、ダラの股を開けっ広げにする。

「恥ずかしいわ」とダラが甘えるような眼で恥らうように言う。

「俺は夫だ」

「そうです。私はあなたの妻です」

 俺は段々と激しく腰を動かし、「君は他の男ともするんだな」と言う。ダラは右手の中指を銜えながら、「いや」と口許に笑みを浮かべながら、ふざけるように言う。俺は硬いモノでダラの穴の奥の子宮を一発一発正確に突く。

「ああ、キヨト!あたし、頭がおかしくなりそうよ!」

 俺はダラの色んな喘ぎ声を聴こうと、モノの竿の長さを存分に活かして、ゆっくりと腰を動かしたり、早く動かしたり、腰の動きに変化を加える。ダラの穴の中が熱い。俺はモノを入れたまま腰をベッドに下ろし、ダラを股の上に抱きかかえる。ダラは俺のモノを穴に入れたまま、自分で自分の体を上下させる。俺はダラの左の乳首の皺の寄った乳輪を右手の人差し指の先で搔く。俺はダラのアナルに左手の第一関節まで中指を入れ、ダラに穴の中でモノを強く締め付けさせる。何て美しい顔だろう。こんな彫の深い美しい顔は日本人女性の中には先ず見当たらない。俺はダラの唇に口付けし、ダラの舌を吸うと、ダラの口から溢れる唾液を飲む。俺はダラの口の中に舌を入れ、ダラが俺の舌を吸う感触を楽しむ。ダラが激しく体を上下させ、激しく喘ぎ始める。もうそろそろダラがイキそうなので、ダラをベッドに横たわらせ、体を反転させると、ダラの膝を立て、背後からダラの穴にモノを入れ、激しく腰を動かす。俺は腰を動かしながら、ダラの両胸を後ろから鷲掴みにして、両胸を両脇から押し付けるように揉む。もう少しでイキそうなので、腰の動きをマックスまで早くする。

「あっ」と思わず俺は声を出すと、ダラの中で破裂する。モノがダラの穴の中でゆっくりと大きく波打つ。

 気持ち良かった・・・・。ダラは力尽き、突っ伏したように顔を枕に沈み込ませる。どうやらダラもイッたようだ。


 翌朝、六時に目覚まし時計が鳴る。ポーとメーが二階の洗面所で話している声が聴こえる。ダラが眠たげに欠伸をする。今日からポーとメーに農作業を習う。

「おはよう」とダラが俺の髪を撫ぜながら言う。

「おはよう。今日から俺も仕事が始まるね」

「農作業は気持ちの良いものよ。汗を掻いたり、体を動かせば動かす程頭が気持ち良くなるドラッグを飲んで働くの」とダラが言って、ウィンクする。

「へええ」

 この国の労働は快楽的だ。何でもドラッグと結び付いている。ここは本当に楽園なのかもしれない。この国を作ったのは神か、悪魔か。この国の習慣に従ってこの国で暮らしていると、何をしても良心の咎めを受けない。何かおかしいなと、開放的なお国柄の快楽的な自由さが信じられずにいる。何か背後に問題を孕んだ国だろう。

「キヨト、この国で最も大切にされるのは神仏への信仰心なんだ。この国は祈りの国なんだよ。この国には仏教も道教もゾロアスター教も儒教もヒンドゥー教もユダヤ教もイスラム教も神道もある。ないのは世界のキリスト教だけだ」

「何故キリスト教だけがないんですか?」

「少々乱暴な説明の仕方ながら、実在したイエス様の生涯や教えの全貌がキリスト教の教えと全く違うからなんだ。この国の植民地時代に宣教師達が建てた教会はこの国の建国の革命時に完全に破壊したんだ。この国にはあらゆる宗教聖典が売られているが、『新約聖書』だけはないんだ。お前はクリスチャンか?」

「俺は神道の信者です」

「そうか、なら、時々近くの神社に御参りに行くと良い」

「へええ!この国には神社もあるんですか!」

「キヨト、朝食を食べたら、農作業に加わってもらうぞ」とポーが笑顔で言う。「後で作業着を買いに店に連れていくが、朝はこの俺の作業着を着てくれ」と赤いツナギを見せて言う。

「はい。判りました」

「作業は良いぞ。農作業には良いドラッグがあってな、体を動かしたり、汗を搔いたりするのが天にも昇る気持ち良さなんだ。この国の農民は好んで幸せに農作業をする者達ばかりだ。まあ、楽しみにしておけ」とポーは言って、ツナギを俺に手渡す。

 綺麗に洗濯された色落ちもしていない真新しいツナギだ。俺はそのツナギのデザインや色をとても気に入る。

「畑では色んな女が誘いに来ると思うが、セックスは誰と何度やっても良いんだ。その変わり、お前の妻はダラ一人なんだ。良いな?」

とポーが真剣な眼で説明する。

 俺はポーの真剣な眼を見て、唯一の妻と言う認識がこの国のフリー・セックスの要となっている事を知る。恐ろしい法律と言うより、日本の法律に比べれば、相当に自由な精神で制定された法だ。

「これは我々の国の建国の革命指導者アラハン・ラーマ十一世が定めた大切な法なんだ」

「はい」

「ここは楽園だ。パラダイス。判るな?」とポーが真剣な眼で言う。

「はい」と俺は喜び溢れて、万遍の笑顔で返事をする。

「ナイス・スマイル」とポーは言って、ウィンクする。

 朝食はフレンチ・トーストとソーセージとサラダが出る。よく冷えたサラダのドレッシングはピリ辛の焼肉のタレのような味がする。この国の食べ物が非常に合う。

「この国では日本食を食べますか?」とメーに訊く。

「日本食はカツ丼とか、日本風のカレー・ライスとか、すき焼きとか、お好み焼きとか、こっち風にピリッと辛くして食べるわ。練り山葵を付けて、お刺身なんかも食べるのよ」

「へええ、それなら、時々、日本食を食べたいな」

「その裡、あたしが作ってあげるわ」とダラがフレンチ・トーストを食べながら言う。

「こっちには食パンって売ってないの?」

「ああ正方形のパンね。フレンチ・トーストにはフランス・パンを使う事が多いわ。食パンが好きなの?」とダラが言う。

「食パンのトーストにマーガリンを塗った奴を子供の頃からよく食べてたんだ」

「食パンは家の近くの日本人が経営するパン屋さんで売ってるわ」

「ええ!この辺に日本人が住んでるの!」

「日本人だけでなく、フランス人やアメリカ人も住んでるわよ」とダラの妹のメカラが言う。「中国人の経営する精肉店では豚足も売ってるのよ」 

「そうなんだ」と俺は言い、メカラの美しい横顔を眺める。

「メカラとはメカラが結婚するまでは出来ないのよ」とメーが言う。

 俺は心の中を言い当てられたようにドキッとする。よく俺の視線の先を見てるな。

「メカラもボーイ・フレンドとはしてるけどね。メカラもキヨトとはしちゃダメよ」

 メカラがしかめっ面をしてソーセージを嚙む。

 俺に気があるのかな。俺もこの国の法律を破ろうとは思わない。メカラが結婚したら、セックス出来るのか。自由な国だ。本当に自由で快楽的な人間関係を認めるお国柄だ。

 朝食を食べ終え、ポーの自動車で畑に向かう。商店街には先程メカラが言っていたパン屋と精肉店がある。おお!カラオケ屋もある!ロシア語の看板の店もある。何の店だろう。黒ガラスで外からは店内が見えない。

「あのロシア語の看板の店は何の店ですか?」と運転席の真後ろに座った俺がポーに訊く。

「大人の玩具やポルノ・ヴィデオを売ってる店だ」

「ああ、そんな感じだ」

「この辺ではよく儲かる店なんだ。女に大人の玩具を試すのは楽しいからな」とポーは言って、笑う。

「性風俗店はありませんね」

「いらないだろ」とポーは言って、また笑うと、助手席に座るメーが俺の方に振り返り、俺の認識の低さに微笑む。

 メーは色っぽい。普段から素朴な服装をした女性だが、顔の作りは美的で、しなやかな細身の体付きには品がある。

 自動車が海岸通りに出ると、美しい海の景色に見蕩れる。肌の露出の多い水着を着た若い女性達が沢山いる。ここから更に凸凹の地面の山道に入る。俺は木々の間から差し込む木漏れ日を眺める。その裡、一面畑が広がる空間が現われ、ポーはそこで自動車を止める。全員車から外に出る。強い陽射しの合間を気持ちの良い涼風が吹く。何とまあ広大な敷地だ!

「家の畑はお茶とオクラを作ってるんだ」とポーがマリワナを口に銜えて、火を点けながら言う。ポーはマリワナを深く吸い込むと、俺の手にマリワナを手渡す。俺もマリワナを吸う。本当に品の良い香りがする。何でこれが日本では違法なんだろう。日本ではマリワナを解禁する運動をしていた女優さんが麻薬不法所持で逮捕された。あの女優さんの社会運動が成功していたら、今頃日本もマリファナが解禁されていた事だろう。日本は本当に惜しいところでマリワナの解禁に失敗したのだ。ああ言う社会運動を堂々と行っても良いと思わせるお国柄は日本の良いところだ。このスカティ共和国もドラッグの価格が高騰したら、法で認めたドラックの自由化が国民を不幸に陥れるだろう。そう言う事が絶対に起こらないとは言えない。

「この国のドラックはどのくらい安いんですか?」とポーに訊く。

「普通の国が煙草代にかけるような税金が全く入らないような価格だよ」

「それは安いですね。それならドラッグの価格の高騰化を心配する事もありませんね」

「この国はタイの王族の聖者が作った独立国なんだ。だから、法に関しても非常に神の意思に忠実に作られているんだ。この国の人間は働く事が本当に好きだしな。でな、これから農作業をする訳だが、お茶の葉を積んだり、オクラを積んだりするサイズを先ず教える。その前に例の快楽のドラックを一錠飲ませておく」

「頭がおかしくなって、収穫物を積んだりするサイズを間違えませんか?」

 ポーは俺の心配を笑い飛ばし、「頭は寧ろ良くなるんだ。超能力を獲得するようにな」と言う。「ドラッグをやらない時の知能低下もない。ドラックに味を占めて、またスーパーマンになりたいと思うだけだよ」と言って、ポーが笑う。

 凄い文化だ。何時か本にして日本で出版したい。

「ドラッグのない日本に帰るとどうなるんだろう?」

「またこの国に帰って、ドラッグが欲しいと思うんじゃないか」

「ああ!そう言う事なのか!またこの国に戻ってきたくなるのか!」

「不安は解消されたかい?」

「はい」と俺は言って、もう一服マリワナを吸い込む。

 ポーは農作業用のドラッグを出し、「こいつを一錠飲め」と言って、俺の差し出した右掌にドラックを一錠置く。「噛み砕いて飲むと効き目が早いんだ」

「はい。判りました」と俺は言って、ドラックを口に入れ、噛み砕く。何だかグレープフルーツのような味がする。

「味もまあまあだろ?」

「はい。『ハイチュウ』って言う日本のソフト・キャンディのグレープフルーツ味のような味がします」

「ラムネって言った方が近いんじゃないか?」

「ああ、はい。そうですね」

「この国では酒や煙草が余り流行らないんだ。酒や煙草の代わりにドラッグを飲んで、日中は農作業をし、夜は図書館で借りてきた本を読むような人間が多いんだ。アメリカの科学雑誌に優れた学術論文を出すような学者も大勢いる。学問の代わりに文学や芸術創作をする人間も多い。俺もメーも夜は絵を描いている。ダラは小説を書き、メカラは彫刻を作ってる。全てはドラッグの賜物だがな。ドラッグを飲んで、体を動かして働いたり、頭脳を活かすと、例えようのない気持ち良さを経験するものだから、この国の人間は非常に働き者で、向学心が旺盛なんだ。仕事以外何もやらないような普通の人は先ずいないよ」

「素晴らしい国ですね」

「そうだろう!」とポーが大きく目を見開いて言う。「この国ではドラッグの力を活かして、各々五ヶ国語から十ヶ国語は自由に話せる人間が一杯いるんだ。この国では日本語なんかは話せるだけでなく、読み書きも或程度出来るんだ」

「ドラック万能な訳ですね」

「そうだ」

 ポーは収穫物を積む蔕の長さを説明し、早速農作業に入るように言う。

「女が近付いてきたら、ダラに構わずヤッて良いんだぞ。ダラの方もそうだ。ダラは長い事男達に結婚するのを待たせていたからな」

 ダラの方もフリー・セックスなのか。それならこっちも他の女とやらずにいる訳にはいかない。

 農作業で軽く体を動かすのが妙に気持ち良い。動き加減で気持ち良さが一定域に留まるような感じがする。素早く立ち上がったり、しゃがんだりを無意味に繰り返したくなる。呼吸が乱れる時の吐く息の調子に合わせて、物凄く頭や体や股間が気持ち良くなる。モノの方は意味もなく最高潮に勃起している。仕事をしていると、色っぽい眼をした褐色の肌の女性が近付いてくる。よく働く人なのだろう。宝石のように輝いた美しい黒い眼をした豊満な体付きの女性で、スタイルは物凄く均整が取れている。

「あたし、ダオ。あなた、ダラの旦那様ね?日本人でしょ?」とダオが流暢な日本語で言う。

「よく俺の事を知ってますね」

「ここらの女は結婚する男性が新しく現われるのをとても楽しみにしてるの。この国の習慣はお判りね?」

「ああ、はい」

 俺より年下なのに、緊張して敬語で受け答えしている。

「あたしを楽しんで」と言って、ダオが紺の花柄のワンピースを脱ぐ。ダオの下着は赤いレースのパンティーとブラジャーである。素晴らしい下着姿だ。

 ここのフリー・セックスの合図はとても判り易い。俺も早速上着のシャツを脱ぎ、ズボンを脱いで、パンツ一枚になる。

「もう大きくなってるわね。今、イカせてあげるからね」とダオが俺のモノをパンツの上から摩りながら、優しく言う。遠くの方に上半身裸のダラの後ろ姿が見える。良し!向こうもしてるなら、俺も気兼ねなくするぞ!

 ダオが赤いレースりのブラジャーを外す。物凄い巨乳だ。アメリカのポルノグラフィーで見た事のあるバレーボールの球のような漫画チックな巨乳ではない。前に突き出したような丸い乳房で、乳首が上向きに突き出ている。まだ本当に若い女性の胸だ。俺はダオの両胸に顔を挟み、ダオの左の乳首を吸う。ダオは俺の下着の中に右手を入れ、俺のモノを握る。モノの感度が良く、握られているだけでジンジンするような快感がある。こんな快感は経験にない。明らかにドラッグの効果だ。俺はダオの肉厚の唇にキッスをし、ダオの口の中に舌を入れる。ダオは俺の舌を啜り、俺の唾液を飲む。俺はパンツを脱ぎ、ダオの割れ目を右手で蔽い、クリトリスを擦る。左手で弾力のある尻を揉み、ダオの左脚を抱え、立ったままモノをダオの穴に挿入する。俺はダオの唾液を飲み、モノをダオの穴の中で静止させ、ダオが安心してモノを締め付けるのを待つ。ダオが俺のモノを締め付ける。俺はダオの尻の間からダオの柔らかい内腿を両手で揉む。俺は突き上げるように腰を動かす。ダオが甘い声を漏らす。ダオの色っぽい声が異様に聴覚を刺激する。声や音が異様に冴えている。自然と自分らしい音楽が頭の中にオーケストラの編成で生まれてくる。俺は普段クラッシックを趣味でよく聴く。モーツアルトを超えるような作曲家になる事を考えながら、腰を動かす。頭の中の音楽が段々と細やかな音になってくる。俺はモノをダオの穴から外し、ダオを土の上に寝かせると、膝を地に突き、再びモノをダオの穴に挿入する。モノがダオの穴の中で温もる。俺は三十センチに勃起したモノの竿の長さを十分に活かして、ゆっくりと腰を動かす。ダオが口の端から涎を垂らし、放心したような眼で俺の目を見ている。

「君の事好きだよ」と俺がダオの耳元に口を近付けて言うと、「あたしもあなたが好きよ」とダオが明るい声で言う。

 聖者が建国したこの国の制度を想うと、神はこの世を愛の宇宙にしたいのだろうと思う。ヴァイオリンの早弾きをイメージして、腰を小刻みに動かす。ダオがおかしくなったように声を震わせる。ああ・・・・。俺のモノがダオの中で破裂し、モノが四回波打つ。俺は力尽きてダオの胸の間に顔を沈める。呼吸の乱れたダオの可愛らしい息の音が聴こえる。ダオの胸が大きく波打っている。俺は起き上がって下着を穿き、ズボンとシャツを着る。ダオも赤いレースのブラジャーを着け、赤いレースのパンティーを穿き、紺の花柄のワンピースを頭から被るように着る。

「気持ちよかったわよ」とダオが笑顔で言う。

「俺も最高のセックスをしたよ」

「またしようね」とダオが明るい声で言って、ウィンクする。

 再び農作業に戻って、体を動かすと、頭の中に射精より気持ちの良い快感が齎される。もっと気持ち良くなろうと、素早く収獲作業をして汗を搔くと、更に頭や体やモノが気持ち良くなる。何て素晴らしい労働だろう!これではデスク・ワークは先ず流行らないだろう。肉体労働が一番感度の良い快感を齎すのだろう。確かポーは頭脳を使う快感があるとも言っていた。仕事なら何でも良いのか。快楽的に労働をするためのドラッグが幾種類もあるのかな。仕事があると言う事は素晴らしい事だ。俺は天照大御神を想って太陽を見上げ、太陽神に手を合わせると、「こんな素晴らしい国は他にありません。私をスカティ共和国に導いてくださって、ありがとうございます」と感謝の祈りを捧げる。清らかな祈りを神に捧げると、胸の中が深い満足感に満ち、神の喜びが流れ込むように頭の中に快感が齎される。確かポーはこの国の人間には必ず神仏への信仰心があると言っていた。恐らくこの祈りの快感に関係があるのだろう。神を想う頭の中がとてもクリアーで、澄み切った心で祈りの言葉を紡ぎ出せる。

「キヨト!そろそろ帰るぞ!」とポーの声が聴こえる。

 もう昼か。俺は快楽的な仕事に夢中になっていた。体中から汗が吹き出ている。それが堪らなく気持ちが良い。

 俺はポーの車の運転席の後ろに座る。

「帰りに街に寄って、画材やら文房具を買うんだが、キヨトは文学や芸術をやらないのか?」とポーが訊く。

「ああ、学生の時に描いていた漫画を描こうかな」

 何だか物凄く文学や芸術への好奇心が湧き上がってくる。読書でも快楽を味わえるなら、読書もしたい。

「漫画道具を買いたいです」

「漫画は良いな。漫画は頭脳と芸術的な感性を存分に発揮出来る。日本人用のタイ語の辞書も必要になるだろうな」

「はい」

「画材屋で漫画道具を一式買って、書店で辞書を買って帰るか」

「はい」


 夕食を食べ終えると、またポーからドラックを一錠もらい、それを噛み砕いて飲む。夜の時間は寝室のダラの机に向かい、記憶に残ったタイ語の勉強をする。それが済むと、漫画原稿用紙に鉛筆でコマ割りをし、漫画の創作に時間を費やす。溢れるように次々に不思議なストーリーが浮かんでくる。漫画のストーリー上に浮かんでくる情景から本当に風が吹いてくるようなリアルな描写に凝る。妙に画力が高くなっている。家の中は皆が各々の部屋で集中する中、一階にいるメカラの抜群な音感とリズム感によるピアノの演奏が聴こえてくる。俺はレイン・フォレストの描写を四コマ描き終え、その四コマに即興詩を書き添える。漫画は芸術であり、文学でもある。記憶の中の現実の風景が鮮明に蘇り、それが漫画の絵に写実的な描写として活かされる。作品世界に集中すれば、何処までもリアルな絵が描ける。森の中で原始的な生活をする太古の人類の物語を描く。ここまでの才能は学生時代にはなかった。頭脳を働かせると堪らなく気持ちが良い。森の中の木々の木肌や蔓や雑草を意欲的に描き込み、雨の描写も同じ表現の多様ではなく、色々な表現を試みる。今まで読んで知った漫画表現だけでは飽き足らず、新しい表現を斬新に表わしていく。細部を描き込んだ下書きが三時間で一〇枚仕上がる。一階から聴こえてくるメカラのピアノ演奏が天才的な細やかさを発揮する。俺も学生の時に少しやったギターを極めたい。

 漫画のコマ割りに固定観念があるんだな。もっと自在にコマを描き分けられる筈だ。必ずしも枠線としてのコマ割りが必要な訳ではない。そう言う漫画を嘗て見た事もある。強烈な個性ある漫画家達があのような斬新なコマ割りを試み続けているんだな。

 そろそろ十二時か。

「もうそろそろ寝ましょうか」とダラが寝室に入ってきて言う。「良い漫画になりそうね」とダラが俺の漫画の下書きを見下ろして言う。

「ドラッグによって信じられない潜在能力が発揮されてくるよ」

「それはこの国の皆が経験してる事よ。あたしは今、日本語で小説を書いてるの。『きことわ』って言う日本の小説を日本語で読んで、とても綺麗だったから、あたしもあんな風に日本語で小説を書きたいなって思ったの」

「『きことわ』は読んだ事ないな。東直子の『いとの森の家』って言う小説が良かったよ」

「なら、明日、図書館で借りて読んでみるわ。あたしは十九の時にこの国で小説家デビューしたプロの小説家なの」

「へええ、凄い人なんだね」

「まあね。この国では食べていくための労働の他に文学や芸術や学問を職業にする人が多いんだけど、副業にはもっと色々あって、機械の発明や料理の研究や医薬品の開発や馬の調教や家畜の飼育なんかをする人もいるの。この国でドラッグの効果を利用すると、何をやっても一流の人間になるのよ」

「じゃあ、俺もプロの漫画家になれるね」

「勿論なれるわよ」

「メカラのピアノ演奏を聴いてたら、俺もギターを極めたくなったよ」

「じゃあ、明日、ギターとチューナーを買うと良いわ。あたしは楽器はクラリネットをやってるの。ソロ・アルバムは二枚リリースしてるわ」

「凄いね!」

「あなたもそうなるわよ。メカラはピアノのソロ・アルバムを四枚リリースしてるのよ」

「へええ!凄い」

「ポーとメーは二人でヴァイオリンとチェロのアルバムを一枚リリースしたわ。ウチの家族は音楽活動は片手間なのよ。でも、音楽を作曲して演奏してると本当に頭が冴えて気持ち良いわ」


 ドラッグをやりながら、漫画を描く事に夢中になっていく。俺は段々と明るく幸せなロマンティックな漫画を描くようになる。その一方では光り輝く裸婦の絵や美的なエロティシズムの絵画を盛んに描くようになる。その裡、描き溜めた絵画を街に売りに行くかもしれない。

 時々、夜に家族の者らと車でカラオケ屋に行き、カラオケを楽しむ事もある。カラオケ機は日本製で、店内には色鮮やかな花々や南国の絵が飾られて、とても明るい。ダラはカラオケ屋でピアノを弾きながら、日本の五輪真弓の『恋人よ』を澄んだ高い美声で歌う。


 カンカン照りの強い陽射しを受けて、脳が剥き出しになるような朦朧とした快楽を感じながら、畑のオクラを摘む。ドラッグでハイになりながら、マイ・ペイスに行う農作業は何とも気持ちが良い。自分が単なる農作業をしているとは思えず、何かとても尊い仕事に携わっているような至福の一時を経験する。モノがビンビンに立っている。隣人の息子の嫁のカンニカが畑の真ん中で立ち上がり、俺をじっと見下ろしている。カンニカが俺にウィンクする。カンニカの目が発情したように潤み、陽に照り輝いている。カンニカはインド系の眼の大きな美的な顔立ちで、細身の体付きをしている。茶碗ぐらいの形の良い胸が白い麻の上着の下に膨らんでいる。俺は周囲に誰もいない事を確認し、カンニカに手招きする。カンニカがにっこりと笑顔を見せ、こちらに来る。俺はズボンのベルトを解き、カンニカは白い麻の上着を脱ぐ。褐色の肌の上半身の美しい事と言ったらない。俺は黒いブリーフを脱ぎ、カンニカももんぺのようなズボンを脱ぎ、生地の小さい黒いレースのパンティーを脱ぐ。俺はカンニカを地面に押し倒し、カンニカの赤い唇を貪る。カンニカは俺の玉袋を掴む。俺はモノをカンニカの口に近付け、カンニカの左の耳に中指を入れる。カンニカはくすぐったくて、首を竦める。俺は更にカンニカの耳を指先で刺激する。カンニカのフェラチオはとても上手く、自分のペニスを手で扱くのと同じくらいの感度で俺のモノを舌先で刺激する。これを続けて一回イキたい。

「一回、フェラチオでイカせてくれ!そうしたら、お前をクリトリスのフェラだけで一回イカせてやる」

「早く入れてくれない?あたし、ずっとあなたとしたかったの。あたし、もう濡れてるのよ。あたしの穴はここらでは評判の名器よ」

「判った。今直ぐ入れる」

 俺のモノは既に夢精している。カンニカの濃い陰毛を手で撫ぜ、カンニカの穴に三十センチの赤いモノを挿入する。カンニカは半眼の白目を剥き出し、意識が朦朧としている。

「ああ・・・・、硬くて気持ちが良い・・・・」とカンニカが甘い声で呟く。

 美しい人妻だ。自分のモノを硬くて気持ち良いと誉められた事が何とも嬉しい。ゆっくりとモノを前後に動かし、モノの先で子宮を突く。気絶しないようにゆっくりとピストン運動をし、愛の深さを表現する。モノがきつく締め付けられ、カンニカの穴の評判の良さを実感する。勘の良い女とのセックスは何とも気持ちが良い。

「綺麗だよ」とカンニカの左の耳元に囁き、モノを動かしながら、カンニカの左の耳の穴を嘗める。カンニカがにっこりとにやけたように微笑む。カンニカを耳攻めで一回イカしたいと思わせる程、何とも気持ちの良さそうな眼をしている。

「もっと激しく突いて!」とカンニカが言う。意外と紳士的なセックスの評判が悪い。俺は激しく腰を動かし、射精衝動に耐える。カンニカが頭がおかしくなったように唇を震わせながら、白目になり、激しく可愛らしい声で喘ぐ。何とも良い声だ。声を聴いているだけでイキそうだ。俺の眼前に人影が前に伸びる。俺は後ろを振り返る。メーが笑顔で立っている。

「カンニカ!カンニカ!」とメーはカンニカを呼び、「この子は女の世界ではレズの玩具なの」と俺に言う。「カンニカ、セックスしたいなら、他の男としてなさい。キヨトはあたしとしたいのよ」とメーが言う。

 全くその通り。メー以外の女は試しにしたい程度だ。メーがカンニカの穴にモノを突っ込んだままの俺の背後から俺を抱き締め、俺の両の乳首を強く抓る。俺はその痛みでカンニカの中で射精する。俺はカンニカの穴からモノを外し、四つん這い状態から立ち上がろうとする。メーは俺の背中に乗り、俺の勃起したモノを股の間から華奢な右手で握り、激しく扱く。男のオナニーの快楽を知悉したように、モノの握り方や扱き方が抜群に上手い。カンニカは立ち上がって、服を着ると、その場を急いで立ち去る。俺はメーの左腕を掴み、地面に押し倒す。メーの細身の品の良い体つきがしなやかで色っぽい。俺はメーのもんぺを脱がし、赤い麻の半袖の上着を脱がす。

「早く来て!」とメーが潤んだ眼で言う。メーは俺のモノを股の間で扱く。俺はメーの黒い布のパンティーを脱がし、メーのクリトリスを優しく念入りに嘗めながら、メーの穴の中で激しく右手の中指を前後に動かす。

「早く入れて!」とメーが言う。「あたし、昨日もあなたとする夢を見て、夢の中でイッたのよ」

 俺はズブリとメーの穴の中に勃起したモノを入れる。俺は正座をして上体を起こし、メーの美しい裸を上から見下ろす。メーは俺のモノを穴の中で締め付ける。モノが穴の中にぴったり嵌まった感触をペニス全体の感覚で受け止める。

「激しく腰を動かして!」とメーが甘い声で言う。メーは喜びの涙を流している。俺はメーの両脚を脇に抱え、穴を上向きにするようにメーに覆い被さり、上から下にモノを突き落とすように激しく腰を動かす。両膝を地に突いてメーの上に覆い被さり、メーの赤い唇に口付けをする。メーは俺の口に長い舌を入れて、俺の下顎の歯の裏を嘗める。俺はメーの唾液を啜り、メーは俺の腰を動かす動きに合わせて、あっ、あっと可愛らしい声を発する。俺はメーの甘い声を楽しむ。モノは当分イキそうにない。途中で萎える可能性もある。俺は自分がイク事ばかりを優先する男ではないので、メーがイクように腰を動かし続ける。メーの硬く突き出た左の乳首を吸い、メーの両手をメーの頭の上で束ね、メーの黒い腋毛を嘗める。メーは顔付きが清純で涼しげなのが良い。貴婦人的な衣装を着せたら、相当な美人だろう。まだ四十代半ばで、脂が乗りに乗っている。女ざかりの年令でありながら、顔付きに品があるのがそそられる。

「ああっ!」とメーは短い声を発し、遂にイッたようだ。俺のモノも間もなくメーの中で破裂する。俺はメーの穴からモノを抜き、立ち上がって服を着る。メーもしゃがんだまま服を着る。メーに尽くし、男の役割りを果たしたような満足感を覚える。周囲を見回すと、まだした事のない若い農婦達の視線が俺に集まっている。

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