始業式
「思い出した!!」
確かに俺は卒業式の日に松井恵玲奈に告白をした。なのになんで?……
鏡の前で呆然としていたら「いた!」という声が後ろから聞こえた。振り返るとそこには俺が立っていた。
「松島くんだよね?私にしか見えないけど」俺の姿をしたその彼?はそう言った。
俺が松井の姿なら、やはり松井は俺の姿になってるのだろうか。
「そういうお前は松井……恵玲奈さんでいいのか?」
「やっぱり……そうだよ恵玲奈だよ。わけわかんないけど、どうなってるの?」
「俺だってわけわからんよ」わかるわけがない。
「私はトイレに行きたいと抜け出して来たので、とにかく一旦戻って始業式に出てからまた二人で話しあおうよ、校庭のヤマモモの樹まで来て」
「そうだな、俺も戻るか。先生も本気で出て行けと言ったわけじゃないだろうし」
始業式が終わりヤマモモの樹の所で落ち合う二人。
「私は卒業式の日にここで松島くんに告白されて振ったはずなんだけど、それで間違いない?」
「確かに俺は卒業式の日に松井さんに告白して振られたよ」
振られた相手と改めてこんな話をする切なさで胸が痛む。
「それがなんで始業式の日に、一年戻ってるの?身体が入れ替わって?」
「だからわかるわけがないよ、俺に」
どんなに二人で話そうがこんな不思議な現象の原因を俺達がわかるわけがない。考えても無駄だと悟り、とにかくまずはこの後どう生活をするかを話し合う事にした。
「この後どうしよう?この身体のまま自分の家に戻ったら家族がびっくりし、もしかして警察に通報されちゃうよね?」
「そうだな、自分の家に戻るのはまずいだろうな。かと言ってこの身体に合わせた家に帰っても……」
「家の事も家族の事も何もわからないから……家族に怪しまれそう、何より松島くんに私の部屋入ってもらいたくない」
「ひどい言い方だな、俺だってお前に俺の部屋入ってもらいたくないから」
「えーなんでよ。好きな人が自分の部屋に入るなんてドキドキするでしょ」
「ドキドキね、なんか振られ方が酷かったせいかドキドキしない」
そう言いながら俺は今松井さんと軽口で会話してる自分に驚く。告白するまでは松井さんの存在にドキドキしてまともに話すこともできなかったのに。なんでだろう。
結局話し合いの末、帰る家はこの身体に合わせた家に帰ることになった。
「とりあえず家の場所がわからないから松島くん一緒に帰ろう」
初めての下校イベントが発生した
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でもなんか思ってたのと違うぞ……
次回も来週金曜日に投稿します。