散髪
首筋に
ヒタと感じる
鋏のつめたさ
目覚めるように
血は脈打つ
耳の近くで
リズムよく切り離される度に
試される覚悟
痛覚のない髪が
その白々しさを背負い
足下に降り積もる
鏡に映る
真っ白なケープを巻いた
私はまるで照る照る坊主
曇った心を晴らすように
晴れますように、と
この席に着く
いつかは見慣れる姿でも
新鮮な一瞬は
待ちわびた刹那の陽光
変わらぬ顔かたちも
変わらぬ心根も
眩ませるよう
スゥっと
涼しくなった襟足に
軽い足取りで
路地を歩けば
塀の隙間
硬い石を割り
花を咲かせた日々草が
風に揺れ
そんな私を笑っている




