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自覚




 目の前のわたくしの中身は、12歳のわたくし!?


 わたくしは混乱する頭を鎮めるため、大きく深呼吸を繰り返した。


 そして、冷静に振り返ってみた。



 パーティーがあったあの日、わたくしは階段から突き落とされて、気づいたら離れの庭に座り込んでいたのだ。


 突然のことだったから思いもしなかったが、よく考えればわかったことなのかも知れない。


 17歳の自分が12歳の自分の身体に入っているということは、12歳の自分はどこに行ったのか?


『17歳のわたくしの身体に12歳のわたくしが入っていた……』


 そう考えると、目の前のわたくしが外見の割に幼すぎることが理解できた。


『どうして今まで考えが及ばなかったのかしら……』


 つぶやいてからハッとした。


 以前、頭を整理するために、12歳から17歳までの記憶をノートに書き綴ったが、12歳頃の記憶がとても曖昧だった。


 思い出そうとした中で1番古い記憶だからかと思っていたが、12歳までの事柄が思い出せたにも関わらず、12歳の頃の記憶をまったく覚えてなかったことに違和感を感じていたのだ。


 そもそもランティス様と過ごした記憶なんて一切なかった。


『それはそうだわ。だって、14歳のランティス様と過ごしているのは17歳のわたくしだもの!』


 愕然と突っ立っていると、大人姿のランティス様がベッドの上のわたくしの手をもう一度ギュッと握ったのが見えた。


 ベッドの上のわたくしは、そんなランティス様に驚いているように見える。


 ランティス様は、握ったわたくしの手をそのまま顔に近づけて、なんとも言えないせつなそうな表情をした。


「可哀想に。怖かっただろう? でももう大丈夫だ。君を脅かす存在から僕が守ってみせる。絶対に僕が守るから」


 ベッドの上のわたくしに、そう語りかけるランティス様。


 わたくしは驚かなかった。


 その言葉は、わたくしの初恋相手の言葉とまったく一緒だった。


 ううん。ランティス様が初恋相手だったのだ。


 なんとなく考えていたことではあった。けれど、ランティス様と幼い頃に出会った記憶がなかったから、ただの妄想として切り捨てていた。


『そう、じゃあ、わたくしはまったく違う人を初恋相手と勘違いして追いかけていただけだったのね』


 グラード様がわたくしのことを嘘つき女と罵るのも、無理はなかったのだ。


 ランティス様が、最初からわたくしの事を好意的に見ていたことも理解できた。


『ランティス様は17歳のわたくしと出会って、交流までしていたんだわ。だから、再会した時、覚えていないの、とおっしゃったのね』


 わたくしは脱力して、その場に座り込んだ。


『……なんて馬鹿だったのかしら。初恋相手でもなんでもない人に振り向いてもらおうとしていたなんて。ランティス様も何も言ってこなかったから、わたくし……』


 そこまで考えて、ふと疑問に思った。


 ランティス様はなぜ、言ってくれなかったのだろうか?


 またそこで、もやもやしてしまうわたくし。


 しかし、ランティス様が何か言ってきたとしても、わたくしが信じなければ意味ないか。


 頭ではそうと考えられたが、心が追いついていないとわたくしは感じた。


 座り込んだまま顔だけをあげる。


 目の前のランティス様はこちらをちらりとも見ない。熱心にベッドの上のわたくしを慰めている。


 悲しくなった。


 イライラも、もやもやもする。


 デート中はあんなにわたくしだけを見てくれていたのに。


 セクシーな女性よりも、わたくしを選んでくれたのに。


 わたくしはランティス様を、ずっと見つめ続けた。


 けれども、全然目が合わない。


 ふと、仲睦まじく接するグラード様とメロディナ様を思い出した。


 そして、はっきりと自覚したのだ。



 ああ、そうか。


 わたくし、嫉妬しているんだわ。



 目の前の自分自身に、わたくしは嫉妬しているのだ。


 わたくしはランティス様が好きなのね。





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