7 僕にとっての『真の愛』とは。
「愛しています!」僕は叫んだ。
聖女様がギョッとなって固まるのがわかる。
でもそんなこと僕は構わない。今言わなきゃいつ言うんだ。
「雪のように白い御髪が素敵です。まるで女神みたいな微笑みがとろけそうなくらいに甘くて好きです。
『好きです』って言っても気づかなくて、『真の愛』とか言うくせに男のことを全くわかってなくて、とにかく鈍感なところとかもう最高なんです。
身分差とかあるのに僕に優しく接してくれるのとか、孤児院で死にかけだった僕を助けてくれた時からもうずっとずっと大好きなんです!
愛してるんです。本当に」
思い出すのは、僕が助け出された日のこと。
まだ幼かった僕は、孤児院に入れられて虐待を受けていた。
暇さえあれば殴られる。蹴られる。罵られる。
食事なんてまともな物を食べたことがなかった。ひもじくて希望なんてどこにもなくて、今にも死んでしまいそうだった時聖女様が孤児院に来てくれたのだ。
「だいじょうぶ? あたくしがたすけてあげるのです」
あの時の無垢な笑顔を僕はいつまでも忘れないだろう。
それからずっと僕は聖女様の虜だった。下僕として働くことに決めたのは、ずっと彼女の傍にいたかったから。
……僕は神なんて信じていない。だから言う。
「選ばれるなんてないんです。『真の愛』は自分で掴むものだと僕は思います! だから、聖女様。僕を選んでください。ご自分の手で。お願いしますっ」
ああ、情けないな。
人に頼ることしか僕はできない。この光景を見たらあの相談屋の老女に笑われるだろうなと思った。
今度のラブコールは本気だ。今回失敗したら、次はない。
勢いよく頭を下げ、その後、恐る恐る顔を上げた。
聖女様がじっと僕を見つめている。その瞳が揺れているように見えたのは気のせいか。
「ルイス……。正気なのですか?」
「はい。僕は正気です。――下僕に聖女が恋をするのは、いけないことでしょうか。かつて聖女様が僕をお助け下さったように、今度は僕が聖女様をお助けしたい。そう思っています」
聖女様がポッと頬を染めたのを僕は見逃さない。
そして、ちょっと嬉しそうに頷いたことも。
「あなたが『真の愛』の相手かはあたくしにはわからないのです。でも、ありがとうなのです」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして僕と聖女様――聖女ではなくなったのでワンダ様と呼ぼう――は、伯爵家を一緒に後にした。
ワンダ様の行方を探す者も多かったと聞くが、幸いなことにそういった輩に見つからずに済んだ。
一度だけ王国兵に尋問されたことがあるがその時は僕がぶっ飛ばしたので問題なしである。
その後ゴタゴタがあって、結局王都に居を構えることになった。
そこには例の相談屋がいて、たまたま再会した彼女は僕を見て愉快そうに笑う。
「ラブコール、届いたのかい?」
「うーん。微妙なところです」
「そうかい。でも何はともあれ良かったよ」
ワンダ様は「どうしたのです?」と首を傾げている。
やはりこの人はいつでも鈍感だ。そこが可愛いのだが。
「働き口がないだろう? それならこの店を使いな。ちょうどそろそろ引退しようと思ってたんだ」
と、いうわけで。
僕とワンダ様は相談屋を引き継ぎ、王都の一角で店をやっている。
毎日毎日やって来るお客様にはワンダ様が明るく対応し、僕はそれをサポートする係。
なかなか楽しくやっているので順風満帆。
ただし……。
ワンダ様はまだ僕をお相手に認めてくださらない。
夜を共にしているし、もはや夫婦同然なんだけどなあ。
彼女がいつ僕への『真の愛』を自覚してくれるのか。
鈍感なワンダ様のことだから、いつまでも自分の気持ちに気づかなかったり……いやさすがにそれはないか?
ともかく、元々聖女と下僕であった僕らは、こうして毎日を過ごしている。
もうすぐ子供が産まれそうな予定なのだが、さてはてどうなることやらだ。
〜完〜
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