おいてけ姉ちゃん=市松人形
「おいてけ〜…。おいてけ〜…。」
「ちょっと、やめてよ美保!」
「え〜、いいじゃん!」
私は岡田美保。中3。
この年になっても、幽霊を信じてる。
「おいてけばあさんだよ〜。」
「やめてってばぁ。」
友達の栗原知美は、幽霊を信じていないくせに、
私の怖い話は怖いらしい。
「あ、そういえば、おいてけ〜で思い出した。」
「なにを?」
「おいてけ姉ちゃんだよ。知らない?」
「知るわけないじゃん。」
「知らないの〜?じゃあ、教えてあげる。
あのね、先週の水曜日、遺体がバラバラの状態で見つかって、
髪の毛が無くなっていたという話。」
「あ、それね。なら知ってるけど、おいてけ姉ちゃんと何が関係あるの?」
「それがね…。おいてけ姉ちゃんが、髪の毛をおいてけ〜…。ってその人に言ったらしいんだけど、その人はもちろん否定。それで、殺されちゃったとか。」
「ひゃあ、怖い!やめて!」
「え、そんなに怖かった?」
知美はぶるぶる震えている。
あれ…?
知美は、ショートヘアだ。だが、髪の毛が短くなっている。
「知美、髪の毛切った?」
「え、切ってないけど。」
「あ、そう。」
じゃあ、なにかの気のせいかな。
そう思っていた。いれば良かった…。
放課後、今日は部活が休みなので知美と一緒に帰った。
好きな人のこと、今度遊ぼう、など、
いつもとなんの変わりもない話をして帰ったが、知美に変化は無かった。
「やっぱり、見間違いだね。」
「え?」
「あ、何でもない。じゃ、また明日ね。」
「うん、バイバイ。」
知美と別れて、一人でとぼとぼ歩いていると、妙に違和感が背中を走る。
だれかに見られているかのようだ。
後ろを振り返るが、何も無い。
「あ、あはは…。最近寒くなってきたのかなぁ…。」
ひとりごとをいって、心を落ち着かせた。
次の日、また怖い話をしていると、知美は、元気がなかった。
「知美…?」
「ねえ、美保…。」
「なに?」
「今日、遊ばない?」
「え、別に良いけど。」
なんで、今、そんなことを言ってくるのだろう。
いつもなら、やめてとか怖いとしか言わないのに。
でも、まあせっかく誘われたので、しかもまた部活は休みだし、
遊ぶことにした。
知美の家に招待されて、知美の家に行った。
「いらっしゃい…。美保。」
知美は妙に元気がない。
「おじゃまします…。」
いつもと違う雰囲気の知美に、私は違和感を覚えた。
「私の部屋で待ってて。」
知美の部屋に行き、座って待っていると、知美が来た。
「美保、はい、ケーキ。」
「ありがとう。」
やはり、暖かみがない。いつもの知美じゃない。
「ねえ、美保。ちょっとトイレに行って来るね。」
「え、あ、うん。」
私は、怪しかったので、知美にばれないようについて行った。
ところが、知美は、トイレではなく、和室らしきトコに入っていった。
障子をそっと開けてのぞいて見ると、そこには…。
「あっ…。」
市松人形…。そして知美…。市松人形が、知美の髪の毛を引っ張る。
「ミィタァナァ…。」
恐ろしい声。これも知美の声??そうなの??
市松人形が、ギロリとこっちを向く。
そして、おちょぼ口が、にたぁっと、口が裂ける。
「お前だなぁ…。」
市松人形が、こっちに向かってくる!!
「ぎゃああ!」
私は自然に叫んでいた。
私の自慢の長い髪の毛をねらってくる!
「おいてけ〜…。おいてけ〜!!!」
はっ。おいてけ?もしかして…。おいてけ姉ちゃん!?
「ごめんなさい!まねして遊んでごめんなさい!ゆるしてぇ!!」
「おいてけ〜〜!!!」
「いやあああ!」
気づいたときには、私の髪の毛は無かった。
そこに倒れてあった市松人形は、髪の毛がすごく伸びていた。
「え、ちょっと!美保!どうしたの、その頭!!」
私は、すぐに病院に運ばれた。
原因は不明だという。
しかし、知美も元に戻った。
おいてけ姉ちゃんは、どうして髪の毛をほしがったのだろう…。
退院して、また知美の家に行くと、そこには…。髪の短いあの市松人形が…。
「ひぃっっ!!」
「どうしたの、美保。」
「…。なんでもない。」
市松人形は、またも私を睨む。
しかし、私をねらってくることはない。髪の毛がないから。
だから…。今度は知美か誰かが…。