天井と人形
ギィィ…、ギィィ…。
毎晩、12時ジャストに、天井から聞こえる奇妙な音…。
はじめの頃は、ネズミかなんかだろうとスルーしていたが、
時間帯はいつも同じだから、怪しくなって、今はその部屋では寝ていない。
時折、キャハ…、キャハ…。
のような声が聞こえるときもある。
おかしいと思い、親に相談したが、天井をのぞいても何もない。
ネズミもいない。では、何なのだろう…。
私は石原琴莉。中2になったばかり。
新しいクラスに、新しい担任。
楽しみで楽しみで、眠れない夜が続いたときに、
天井から音がすることに気づいた。
「琴莉、おはよう!」
「わぁ、琴莉一緒だね!!」
新しい教室に入って、小学校から一緒の市川葉と、小西愛羅と、
朝の挨拶を交わした。
「でもさあ、不吉だよね。」
「なんで?」
いきなり不吉といった葉に、私は驚いた。
「あ〜、2年5組はね。」
「だからなんでなの??」
「琴莉、忘れたの? 2年5組って、去年のここのクラスの人がさ、
自殺したんだよ!」
「ええ、そうだったかなぁ?」
「それでさ、今琴莉の座ってる席もさ…。”ゴメン”ってほってるじゃん…。
自殺した人のだよ。きっと。」
私の座っている机といすは、なんと、去年自殺した人が使っていた物らしい。
「えぇ、大丈夫でしょ…。」
「いぃや!わかんないよ!怨念がかかってるかもしれないぞぉ〜…。」
「お、脅かさないでよ!」
私は、半信半疑ながらも、普通に過ごした。
「2年5組のみなさん、おはようございます。私は担任の山田紀子です。
みなさんと会えたのも、何かの縁ですね。これから1年、よろしくお願いしますね!」
何かの縁…。か。
今年は、クラスの雰囲気も良いようだし、
まあ、縁でもおかしくはないか。
放課後、葉と愛羅と一緒に帰っていた。
そう、去年もずっとそうだったから、変じゃなかったけど。
家に帰り着いて、すぐあの部屋に行った。なんか嫌な予感がして…。
しかし、何の様子もないし、変な音はしない。
ほっとして、出ようとしたとき、
「いっちゃだめ…。」
「遊んでよ…。」
のような声がするのだ。
私は振り返った。その瞬間。
辺りは真っ暗になった。
「なによ、まだ4時でしょ…。」
「琴莉ちゃん…。いつもこの部屋で寝てたのに、
最近寝てないんだもん…。」
「いつも私たちで遊んでくれてたのに…。」
「どうして天井に捨てちゃったの…?」
「遊んで…、遊んでよぉ…。」
「遊んでくれるまで帰らせない!」
「遊んでくれるまで帰らせない!」
どうやら、天井に現れたようだ…。
私は、そっと天井を開ける。
私が目にしたのは…。
私が最近黙って天井に片づけた人形達だった。
そうだ…。お母さんに部屋を片づけろといって、部屋に置いてあった人形を
天井に隠したのだった。
「人形…。嫌いになったの…??」
「私たちが嫌いになっちゃたの?」
「ちがうよ…。大好きだもん…。」
「そう、なら、また私たちを、あの部屋に置いてよ!」
「ここ、寒いの。」
「また琴莉ちゃんと遊びたいよ!」
そして、私は人形すべて部屋に戻した。
それからは、何も音がしない。
人形もほほえんでいるようだった。
しかし、一つ疑問点がある。
なぜ、親とみたときは、見つからなかったのだろう…。
そして、自殺した人は、私になにかしてこないだろうか…。