白い手と水着の謎
暑い八月の海で、私、加藤円と、彼氏の加藤登は、
浮輪に乗りながら、冷たい海の中で遊んでいた。
今日は、友達のカップル(坂本美代、伊勢川ひろと)とダブルデートで来ているのだ。
前日の話。
「ねえぇ、円〜。水着どうする〜?」
私と美代は、水着を選んでいた。
「私はね、ビキニの上にタンクトップとハーフパンツがついてるヤツにする。」
「あ、それいいねえ!じゃ、私それ買ってくる!」
私と美代は買い物を済ませて、美代の家の部屋で試着してみた。
「円〜似合ってるよ〜!」
「美代もかわいいじゃん!」
試着をおえて、私と美代はクーラーの効いた美代の部屋でくつろいでいた。
「いいわね、海。」
といって入ってきたのは美代のお母さんだ。
「はい、ジュースとお菓子。」
「ありがとう、お母さん。」
「ありがとうございます。」
ごゆっくり、といって、美代のお母さんは部屋を出た。
「明日楽しみやなあ!円の彼氏ってどんな人だろう〜。」
「イケメンで優しいし、運動神経抜群で!美代は?」
「ん〜とね、メガネだけどイケメンでえ、頭が良いの!」
「勉強教えてもらってるんだあ〜?」
「えへへ!まあね。」
と、お互いの彼氏の話をしながら、お菓子を食べた。
自慢じゃないけど、私の彼氏の加藤登はイケメンで優しくて、運動神経抜群!
でも勉強はダメだから、私が教えてあげてる。
夕方6時になったので、明日早く出られるように、美代とバイバイして帰った。
帰っている途中、登に出会った。
「おお、円。ん?その袋…。もしかして水着か!?」
「うん!水着。」
「うひょーい!」
「なっ、何考えてんの?」
「いや、おしえん。」
「ぶー、じゃあ帰るよ!」
私はほっぺを膨らまして帰った。
「登のばか!」
「円のぺたんこ!」
な、ついてきてたのかって、方向同じだ…。
「私はぺたんこじゃありません〜。」
「……ぺたんこ!」
もうむかついたので、走って帰った。
…本当は、そういうとこが好きなんだけど!
その夜、私は眠れなかった。
そして今日に至るわけだ。
「円やっぱりぺたんこだな。」
「まだいうか、それ!」
今度は水遊びになった。
ざざんっ
海の波音は聞いてて心地良い。
ところが、
ぎゃああ!
音というより、声のしたほうをむいたが、何もない。
私たち4人は、同じ方向を見ている。
ということは、この4人の中じゃない。だれか別の人だ。
「なんか不吉ぅ。気持ち悪かったねえ。」
「なんか、聞き間違えじゃないの?」
「でも、みんな聞こえてたんでしょ?」
美代とひろとは話している。
「登、なんか怖くない??」
「円は恐がりだなあ。」
「しょうがないじゃん。」
そのあと何もなかったので、また遊び始めた。しかし、また
ぎゃああああ!
またみんなは同じ方を向く。
しかも、さっきより大きくなっている。
「ねえ、帰ろうよ…登。なんかおかしいよ。」
「…そうだな。なんか気持ちわりいしな。」
私たち4人が帰ろうとしたとき、
ぎゃあああああ!!
たすけてええええ!!
水着をよこせえええええ!!
またふりかえると、海から真っ白い手が無数に出ている。
「「きゃあああああああ!!」」
私と美代は叫んだが、男群は盾になってくれた。
走って帰ろうとすると、白い手が追ってくる。
手が伸びている。明らかにおかしい。
水着をよこせえええ!!
手がしゃべっている。
私と美代は、水着をとられてしまった。
「うそ、やだぁ…。」
「なんで水着をほしがるんだ?」
登は、自分が着ていたパーカを着せてくれた。
「ありがとう…、登。」
「とりあえず、着てろ。」
登のパーカはさすがに大きい。太股も隠れる。
私の背が低いだけだけど。
白い手は、私と美代の水着を持って
海の中へ消えていった。
それから、夕方になって、寒くなっても、私たち4人は
海を見続けていました。
あの、白い手が水着をほしがったのは、何でなのでしょうか……。
円「あれから10年かあ。」
美「だね。結局なんだったんだろう。」
登「迷宮入りの謎だな。」
ひ「謎ですね…。」
あれから、私たちは謎も解けていないまま、
事件の3年後、21歳に結婚しました。
ダブル夫婦で、10年前のことを話しています。
7歳になった娘も、ああならないように願っています。