この世界、なんかおかしいんですけど!? 7
路地に隠れて好機を待つ。
ターゲットは、内向的、それほどイケメンではなく、なるべく女性慣れしていなさそうな男性。
「おっ、カモが来た来た」
いい感じのカモになりそうな男が何も知らずにやってきた。
気づかれる前に路地へと隠れた。
そして、タイミングを見計らって、路地から勢いよく飛び出す。すると……。
「きゃっ!」
タイミングよくターゲットの男とぶつかった。そして、ぶつかると分かっていながら私は飛ばされて尻餅をついた。いや、むしろ吹き飛ばされる演出をするために、わざと後ろに飛び退き尻餅をついた。
これこそ、名付けて「曲がり角、ごっつんこ作戦」。これを学校でやれば、男は100%の確率で私に落ちた。
「いったぁ……前見て歩いてなかったぁ。ごめぇん」
もちろん、嘘。当たりに行くために、ちゃんと前は見ていた。
しっかし、今回はかなりいい出来だ。ぶつかったときに、少し胸も当てた。今頃、その感触が脳裏を駆け回っているはずだ。
「起こしてくれなぁい?」
私のような美少女との不意の接触。そして、この差し出した手。喉から手が出るほど握りたいはずだ。そして、あわよくば起きあがらせる時に勢い余って抱き留める、なんてことを考えているんだ。男心は手に取るように分か……。
「あれ……いない……」
差し出した手の先に、ぶつかった男はいなかった。
「……消えた」
まさか、私のように異世界に……と思ったが、違った。普通に歩いていた。まるで、私とぶつかってなんていないかのように……。
「ちょっと待って!」
と言っても、私に振り向くことなく、男は歩いて行ってしまった。
「なんだよ! っざけんなよ!」
私にぶつかっておいて無視って何よ。いいわよ。分かった。こうなったら、私も本気を出すしかない。あんまりやりたくはないけど、ここまでこけにされて素直に引くほど私のプライドは低くない。