オタサーの姫、異世界転生しまぁす! 4
再び目を開けると、そこは神様といた白くて何もない空間ではなくなっていた。
「ミカエラ、気を確かに」
私の正面には、神様ではないコスプレした変なおっさんがいた。
なにやら、私のことを心配しているようだが、当然だ。私はたった今、この世界に来たのだから。
異世界転生した。と言うことは、本当に夢ではなかったのだろう。
「ミカエラ? 大丈夫かい?」
どうやら、私の名前はミカエラのようだ。つまり、呼び名はミカちゃん。前と同じでいい。神様の粋な計らいだろう。やはり、媚びを売っていてよかった。
それより、ここはどこだろう。部屋の中を見回してみると、二人しか座っていないのに無駄に長いテーブル、どこがいいのか分からない絵画や自画像、無駄に豪勢なシャンデリア。
間違いない。ここはお城の中。そして、そんなお城の中でシックなドレスを着ている私はお姫様そのもの。
「無理はしなくていいからね。辛いことがあれば、パパが相談に乗るから」
「ありがとう、パパ」
パパと言うことは、私はこのおっさんの娘。間違いなく、私はこの城のお姫様。まさか、異世界に転生して、オタサーの姫から本物のお姫様になるなんて思わなかった。あの爺神様もやるじゃん。媚び売って正解だったわ。
「大丈夫。婚約は破棄されたけど、ミカエラの結婚相手は何も彼だけではないから」
「え……」
異世界転生した直後に、まさか、婚約破棄されているとは思わなかった。
「そう……なんだ」
テーブルの上には一枚の汚い紙が置いてある。そこには、日本語ではない文字が書いてあるのだが、なぜか読むことはできる。書いてあることは、私ことミカエラとの婚約を破棄するとのこと。
私は結婚させられようとしていた。でも、婚約は破棄。なんて、なんて、都合がいいんだ。見ず知らずの男と結婚なんて、まっぴらごめんだ。それも、私みたいなお姫様と結婚するとしたら、相手もそれなりに立場がいいだろう。絶対、このおっさんみたいに太ってる。デブとは釣り合わないっての。
あぁ、でも、顔に出してはいけない。このおっさんが父親なのだから、婚約破棄されて悲しいという表情は見せておかないと。
「ごめんなさい、パパ。ちょっと部屋で休んでくるわ」
「あぁ、可哀想なミカエラ。何かあれば、力になってあげるからね」
「ありがとう、パパ」
部屋を出ようとしたのだが、流石はお城。扉の数が5つもある。とりあえず、一番近いドアを開けよう。
「ミカエラ? 部屋はそちらではないよ?」
最悪。ハズレだった。
「部屋はどっちだっけ?」
「その隣の扉から行った所だよ。本当に大丈夫かい?」
「心配しないで、パパ。少し休んだら元気がでるから」
ドアは間違えたが、これはこれで傷心している感じを出せた。やっぱり、私は男心を掌握する天才だ。