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オタサーの姫、異世界転生しまぁす! 3

 あぁーあ。最悪な一日だった。でも、これで明後日には可哀想なミカちゃんに元気を出してもらうためって言って、みんなからプレゼントを貰えるだろうから、良しとしよう。

 あいつに汚された服は捨てて、ついでに記憶も消して、今日は寝よう。寝不足はお肌の敵だから。

 ふかふかのベッドで気持ちよく寝ていると、いつの間にか、私は白い空間に立っていた。

「あれ……ここどこ……」

 私はベッドで寝て、そこからの記憶がない。ここまでどうやって来たのだろうか。

 真っ白な場所で、どこまでも壁がないような空間。壁がないので、当然、ドアもない。どこから来たのかも分からない。

「いらっしゃい。姫宮美香さん」

 振り向くと、一人の爺が立っていた。

「誰?」

「儂は神様じゃ」

「神様……あぁ」

 何となく、理解できた。

「分かった。これ、夢でしょ? こんな何にもない夢、早く覚めないかな……」

「残念ながら、これは夢ではない。そして、もう目を覚ますことはない。君は死んだんじゃ」

「え……?」

 今、この爺、私が死んだと言ったのだろうか。

「でも、私、ベッドで寝ただけで……」

「うむ。そのまま心臓発作で死んだんじゃ。苦しまずに死ねたんじゃから、ラッキーじゃったの」

 ラッキー? 死んだのがラッキー? そんな訳ない。私は、これから、可哀想なミカちゃんを演じてたくさんプレゼントを貰う予定だったのに……。

「そう落ち込むでない。生き返ることはできんが、違う世界で別の人生を歩むことはできる。どうじゃ?」

「それって……」

 聞いたことがある。キモいオタクどもが話していた。異世界転生というやつだ。異世界でチート能力を貰って無双して女の子にモテモテというバカな話。なら、私がそのチート能力というのを貰えば、イケメンにちやほやされる生活が待っているのではないのだろうか。そんな生活、今までのキモいオタクどもに媚び売る生活より、何倍もいい。

 決まりだ。異世界転生。でも、その為にはチート能力とやらをできる限りぶんどらなくてはならない。

「生きているだけでぇ、幸せっていうかぁ、違う世界でもぉ、私を必要としてくれる人がいるんだったらぁ、いかないとぉ、だめだよねぇ?」

 ここで媚びを売らずしてどこで売る!

「異世界転生してくれるんじゃな?」

「でもぉ、違う世界ってぇ、ちょっと怖いなぁってぇ。私ぃ、女の子で弱いからぁ、ちょっと不安っていうかぁ……」

「そこまで危ない世界じゃないから大丈夫じゃぞ」

 ちげぇよ。危ないとか危なくないとか、そんなの知らねえんだよ。ウハウハになる能力よこせって言ってんだよ。察しの悪い爺だな。

「危なくないって言ってもぉ、違う世界だとぉ、知り合いもいないしぃ、お金とかもぉ、心配だしぃ」

「お金も心配いらん。その辺はうまくしてやろう」

 よし。これで金銭面はどうにかして貰えそうだ。あとは能力。

「私ぃ、あんまり可愛くないしぃ、人に好かれるタイプじゃないからぁ、心配だなぁ……」

「それも大丈夫じゃ。転生した先でも君と姿は変わらんし、心配なら、人付き合いも儂が何とかしよう」

「うれしぃ。おじさま、ありがとう」

 よっし! これで完璧だ。私のこのオタサーの姫で学んだ演技と、誰にでも好かれる体質があれば、異世界のイケメンを全て誑かせることだって夢じゃない。

「それじゃあ、異世界へと転生させよう」

「お願いしまぁすぅ」

 これからウハウハのイケメン生活の始まりだ。

「あぁ、そうじゃった。岸田君のことなんじゃがな」

「岸田君?」

「今日、君がふった相手じゃよ。彼な、母親が病気で入院していてな、入院費と学費を一生懸命稼いでいたんじゃよ」

 これはやばい話になってきた。何とかしてごまかさなければ。

「そうだったんだぁ。岸田君、私に何も言ってくれなかったから知らなかったなぁ。言ってくれたらぁ、プレゼントも断ったのにぃ」

 チラッと神様の方を見たが、もうその表情を確認することはできず、視界に光が満ちていった。

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