オタサーの姫vsオタサーの王子 14
「この人は……俺の元婚約者だよ。でも元だから! もう婚約を破棄しているし、それに、俺が愛しているのは君だけだよ、ウィル」
愛しているなんて気持ち悪い言葉を平然と受け入れているあたり、この男から搾り取れるだけ搾り取るためにターゲットをこの男だけに絞っているのだろう。この家の大きさから考えても、資産は申し分ない。複数人を扱うよりもカモにしているとバレるリスクが少ない。それに、多数から少しだけ巻き上げるよりも一人から多額を巻き上げた方が効率もいい。もちろん、この男のような金持ちと出会うことが必須条件。日本では、それがなかなか叶わなかった。見た目では誰が金持ちか分からないから。でも、この世界なら家の大きさで資産も分かる。実に効率的な戦略。だが、それを私から奪ったのは許せない。
「その彼が言っているとおり、私が婚約者だったの。結婚する予定だったの。それなのに、あなたが誑かして奪って、見境なく盛るなんて下品じゃない?」
オタサーの姫たちの暗黙のルール。他の姫の下僕には手を出してはいけない。そう言った痴情のもつれはお互いの破滅を招きかねない。もちろん、そんなことも知らない天然記念物は存在するが、大体、戦略に弱い。言葉で攻めれば、素直に引いてくれる。
ただ、それは日本で通用する方法で、ここは日本ではない。
「誑かすなんて、そんな……僕はただ仲良くお茶していただけなのに……下品だなんて酷いよ」
この青年、天然記念物ではない。一言も「好き」や「愛している」なんていう言葉を使っていない。いつでも切り捨てる準備をしているということ。こいつ、かなりのやり手だ。そして、そんな彼は、私と戦争する気だ。この金持ちの男の奪い合いを。
ただ、少々、私の方が分が悪い。
「そうだぞ! 元婚約者だからって、そんな酷いことをウィルに言うなんて、見過ごせないぞ!」
それは、単純な下僕の数。
私はついさっきこの世界に来たばかりで、下僕はほぼいない。
そんな私とは違い、ウィルと呼ばれる彼には、すでに私の元婚約者という下僕がいる。その他にも、声をかければ下僕になってくれる男はいるかもしれない。私が優位に立てるのは知識ぐらいだろう。その知識も日本のもので、この世界に適しているのかも分からない。この世界は日本とは違いホモだらけなのだから。勝てる要素は薄い。
「その人には肩入れするのに、婚約者だった私のことは大事に扱ってくれないんだ。ふぅーん……」
「そ、そう言う訳じゃ……」
いけない。つい熱くなってしまった。
私の目的は、この元婚約者ではなくこの世界の知識。そこを忘れてはいけない。
「お邪魔だったみたいだから、また日を改めて話し合いましょうか。今日は引いてあげる」
「そうだね。お互い、きちんと頭を整理する時間が必要みたいだもんね。でも、僕はみんなと仲良くしたいなって」
そっちから喧嘩をふっかけておいて、今更仲良くなんてできるわけがない。




