ありきたり
手土産に変わったものを、とガラス越しに探していると目玉と視線が合った。これもショートケーキというのだろうか。
「ありがとうございます」
買ってしまった。
「パティシエもケーキも嬉しそうだったのよ」
「ふうん」
訪ねた先の友人は懐疑の視線をケーキにのった目玉に投げる。目玉、反抗的に斜視で応じている。頼むから美味しそうにしてほしい。
その時、テレビでドラマをやっていた。つまらないお涙頂戴ものだ。
「あら、塩味が利いてていいわね」
ケーキのはしを食べて友人は言う。お陰で会話が弾んだ。目玉はテレビをさめざめ見ている。
後日、再訪すると例の目玉が茶碗に浮かんでテレビを見ていた。
「いい塩味を出してくれるの」
友人は満足そう。
テレビは相変わらず、お涙頂戴もの。
おしまい
ふらっと、瀬川です。
他サイトのタイトル競作に出展した旧作品です。といっても昨年の作品ですが。
塩スイーツをどうぞ♪