最終話 上編『君が残した宝モノ』-5
数年ぶりの下館の街。そして、駅前。
なにも変わっていない感じがする。
思い出したあの夏の時。あの時のこの駅前は、人でごった返した状態だった。
でも、今住んでいる池袋と比較すると、そうでもないけど……
そして、終わりの知らせになったあの手紙が届いて、一人で訪れた時。
あの時は、今と同じで駅前通りだというのに、人も車もあまり通らない場所で、静かで、淋しいなと感じた場所だった。
さて、ここままでは電車に乗っていれば、ほぼどんな人でも到着することができる。
問題は、それ以降かーーーー
そう、問題はーーーーこの後、どこに向かえばいいのか不明であること。
これについては、家をできる時も、電車に乗っている時も予想、予測できていた。
が、つけばなんとかんるだろう。な適当な感じで、あまり考えてなかった。
それが失敗だったか……
いや、まて。
まずは、やるべきことがあった。
あれっきりずっと黙った状態だけど、隣にいる少女ーー奏絵ちゃんを、無事、家に送り届けること。
なら、まずは彼女の家に電話をかけてみますか。
プルルーーープルルーーと、規則正しく鳴るコール音。
何度もーー何度もーー何度もーーそして、俺は、電話を切った。
今朝も出なかったんだ。なら、この時間でも出ない可能性があってもおかしくない。
やはり、彼女の家族は、彼女の子を探しに出ているかのか……
あの時に思い出したことが事実なら、彼女の家族は二人しかない。
そう、思い出した純玲からの手紙内容が事実ならーーーー
「お父さん」
突然、彼女ーーーー奏絵ちゃんが俺のことを呼ぶ。
その声を久々に聞いた。
「私ね、お父さんをここまで連れてきたのにはね、理由があるの」
連れてきた?俺を?理由?
俺が連れてこられた?
「お父さんに教えないといけないことがあるの」
君から教わること?
なんのことかさっぱりだ。
そもそも、ここに来たのは、俺が君を君の家に送りに来ただけだ。
君の家族にはそのことを伝えてないが……あんな時間に一人で来たんだから、親は相当心配してるだろう。だから、君の家に電話しても誰もでないんだ。
だから、送りに来た。
これは、俺の自己満足的な行動かもしれないが……そんなの、どうでもいい。
それ以外に、理由があるのか?
「でもね、それはね……お父さんに見てほしい。見てわかってほしい……」
見る?見ればわかる?
何を見せられ、何を知らさえれるのか……ちょいと恐怖を感じながらも、先を歩いていく奏絵ちゃんの後を追った。
*
彼女に案内された場所は、下館駅から歩いて10分ぐらいの場所。
そこまでの道のりは、初めて歩く場所だった。
そして、そこはーーーー
「妙西寺……?」
お寺だった。
なんで、こんなところに?と不振に思ったが、この寺の前にある墓地に挟まれた小道と、その向こうに見える住宅街を見た瞬間、ここから彼女の家に向かう近道がるのかと納得。
がーーーー
「こっちだよ」と、奏絵ちゃんが向かったのは、その小道ではなくーーーー
墓地のほうだった。
「は?」と、自然に間抜けた声が漏れる自分。
それは、予想外だ。
そっちに何がある?あるのはーーーー当たり前だけど、お墓だけ。
誰の?それも、あたりだけどーーーー彼女、奏絵ちゃんの家族の内、誰かだけど……
もし、そうなら、純玲の母親……になると思うが……
まさか、その母親のお墓の前で、あの罪の懺悔をしろ。と、いうことですか。
俺は、彼女ーー奏絵ちゃんが立っている、お墓の前に向かった。
そこには『仲波家之墓』と刻まれた墓石。
そしてーーーー
「う……嘘だろ……」
長い戒名の下に『純玲』と彫られた墓誌。
ここには、彼女ーーー奏絵ちゃんの母親が眠っていた。
会いたかった相手はーーーーもう、この世にはいない。
最終話 中編 『君が残した宝モノ』に続く。