最終話 後編『君が残してくれた宝モノ』3
ひんやりとした感覚を感じ、自然と目が覚めた。
まだ、はっきりとしない視覚で、首を動かせる可能な範囲を見回した。が、視界がぼやけているため、ここがどこなのかわからない。
次第に、それが消えていきーーーー物陰がはっきりと区別できるようになり、もう一度、見回す。
結果、わかったことがあった。今、自分がいるとこは見知らない場所であった。
なぜ、こんな見知らぬ場所で寝ていたのかがわからない。
上半身を起こして、改めて自分の回りを見ましたが、結果は変わらず。
ただ、目的を違うけど、わかったことがあった。
自分が裸であり、かつ、それを隠していたのは一枚のボロボロになっている大きな布だけ。
なにゆえ、こんな状況……
『大切な瞬間に目を覚ましてーーーーの本当の答えを伝えてあげて』
突然、誰かの声が頭のなかに響いた。
回りを見ましても、人影がなく、普通ならありえない現象。
空耳?聞き間違い?と、自身を疑うべきなのだろうか、その声が誰のものかがはっきりとわかる。
わかるだけじゃない。覚えてる。
誰に言われたのか。
どんな状況で言われたのか。
なぜ言われたのか。
それらを覚えている。
そして、思い出した。
俺ーーーー僕と純玲が4か月ぶりに再会した夏であり、初めて異性同士で身体を重ねて、大人の行為をしたあの夏。
そして、その翌日。
僕はいつのまにか畳まれていた私服と、下着を来て、慌てて表に出た。
「いたーーーー」
彼女ーーーー純玲は、出て直ぐのところにところにいた。
夜明けの空。あと数時間もすれば、月が沈み、太陽が顔をあげるだろう。
昨夜の街は、夏祭りと言うビックイベント開催中だったため、夜とは思えないくらいざわつき、賑やかであった。
が、今見えてる景色からはーーーー
「なんか、寂しいよね」と、僕が思っていたことを純玲が呟いてくれた。
違う。タイミングはぴったりだったけど、まぐれに近いものだったから、これは呟いた。になるんだろう。
「まだね。私がこの街にきて、そんなに経ってないけどねーーーー」
彼女が呟く声には、どこか寂しさを感じた。
独りになったとか、孤独とかーーーー心細いような淋しさではなく、今の街の景色が教えてくれるひっそりとした静けさの寂しさ。
誰もいなく、なにも動いてなくーーーー点々とついている町明かりが人がいることを教えてくれる寂しさ。
そんな寂しさを感じた。
「今見てるこの姿が、この街の本当の姿だと思うと、辛いよね」
「……そうだね……昨夜の出来事が夢のようだよ」
あんだけいた人が、今は誰もない。
あんだけ並んでいた屋台もない。
ただ、道端にはそれらがあったことを証明できるごみが落ちてる。だけーーーー
あっというまの代わり様。
それは、まるでーーーーいや、本当に夢を見ていた。と思う。
昨夜のことが、すべて夢でーーーー
「んーん」と純玲が僕の方を見ながらいった。
「昨夜のこと、すべてが夢じゃないよ。んーん、夢にしたくないな」
「ーーーーそれってーーーー」
純玲が言いたいことは、おそらくあのこと。
そして、今、その彼女自身は、それを言いたいが、あまりの恥ずかしさに顔が紅潮していた。
こればかりは、彼女だけではなく僕も同じだ。
「ーーーーうん。そうだね」
このままだと、気まずい雰囲気になりかねないと感じ、頭のなかが真っ白に近い状態のなかとっさに思い付いたことを口にした。
で、それを口にしてから、なぜ、そうなった!と、内心で突っ込みをいれ、その続きを練る。
だめだ。
まだ、余計なことと言うか、昨夜のあれの記憶が強くって、他のことにたいしてうまく思考が働かない。
「あ……あれだけ……」
あれーーーー初めての行為。
重ねあったことで、改めて知った自分以外の人の体温。
それらは、夢じゃない。
現実だ。
だけど、今から僕が言うことは、あれ以外のことは夢でもいい。に近い意味の言葉。
本当にそうだろうか。
本当にーーーーーー違う。
「違う」
「ちがう?」と、首をかしげ純玲。
「すべて、現実であって欲しい!!んーん、現実だ!!」
僕は、自分のなかにある本音をそのまま叫んだ。
「純玲とあったこの夏!!純玲と交わしあったこの夏までの間のこと!!純玲とともに過ごせた今の時間!!純玲とーーーー!!」
もう、なにも隠す必要なんてない。
自分の本音も。欲張りな自分も。
なにもかも隠す必要なんてない。
「わたしも「「ずっと一緒にいたい!!!!!」」
だから、僕の思いと、純玲の思いは同じだった。
そして、純玲の表情は耳まで真っ赤になっていてーーーー僕の視線をに気づくと、こっちをみて、満足した笑顔を浮かべた。
僕も、彼女と同じだろう。
なんせ、まだ夜明け前だと言うのに、すごく額というか身体中に汗が浮かんでる。
きっと、これは夏の暑さのせいかもしれないから。