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最終話 後編『君が残してくれた宝モノ』2

知りたくなかった現実。

知らせてもらった事実。

教わった現実。


それは、もう手遅れでーーーーどんなに頑張って手を伸ばしても、それに触れることができない。

自分の思いを伝えようとしても、伝えることができない。

その人は、もうどこいもいない。

どこをどんなに探しても……決してみつけることができない。決して会うことできない。


だって、彼女は、もう……この世にはいない存在になっているからーーーー


残っているのは、彼女がこの世にいたということを物語る記録と記憶。

例えば、自分の中に残っている彼女とともにいた思い出としての記憶。

例えば、今、自分の前にある彼女の名前が刻まれ、記録となった墓誌。


そう……彼女はもういない。

謝りたかった。

それは言葉にすることができなかった。

それは手紙にかく文章にすることができなかった。

でも……それでも、俺は謝りたっかた。


「ーーーーーん?」


それは、急に自分の視界に入ってきた。

いや、もとから俺は墓誌を見ていたが、それは見ていなかった。

見ていたのは、そこに刻まれている長く、意味が全くわからない戒名と、彼女の名前だけ。

つまり、それだけを見ていて、他に刻まれているものは一切見ていていなかった。

いろいろと困惑していた為、それを見ていなかったかもしれない。

見ていなかった、それーーーー。

彼女が亡くなった年齢。

彼女が亡くなった年月日。

その二つだった。


たった、その二つだけだった。

だが、何かが違和感として自分の中で引っ掛かりだしたのを感じた。

彼女が亡くなった年齢とその年月日。と、奏絵ちゃんという少女の外見と年齢。

なにかがおかしい。

そのなにかがなんなのかわからない。先程の自分が困惑していたときと同じで……おかしいことはわかる。

だが、それの正体や内容がわからない。思い付かない。

俺は、もう一度、墓誌に刻まれているものすべてを見た。

戒名。

その下に俗名と年齢。その隣に、亡くなった年月日。

彼女が亡くなったのは、今から大体……13年ぐらい前?

彼女ーーーー奏絵ちゃんのことを中学3年生か高校生。と思い込んでおり、実際の年齢を聞いていなかったことを思い出した。


「君はーーーーいくつになるんだ?」


後ろを振り向き、立っていた彼女にそれを聞く。

そう、俺の中に引っ掛かっていた違和感の正体。

それは、彼女が亡くなったときの日付と、奏絵ちゃんの年齢との関係。

あっていそうに思えた。だが、微妙にだけど会わない点があった。


「そうだよーーーー」


奏絵ちゃんがゆっくりと口を開き、耳を疑うような答えを口にした。


「私はね、この世には産まれてないんだ。パパとママの間の子だけど、本当はいないんだ、私」


何をいってるのか理解できなかった。

第一、池袋で彼女の手をとったとき、人としての温もりが感じれた。

更には、昨夜の彼女は気持ちよさように寝息を立てながら寝ていた。

それなのにーーーー


「うん。私はいないよ」


君はいないというのか!

君は、今、俺の前にたっている。触れることができる。触ることができる。

話すことができる。しゃべることができる。一時だけど、ともに食事をすることもできる。

それなのに、君もいないというのか……


「なら、君はーーーーーー!!!」と、俺は彼女の言葉を否定しようと叫んだ刹那、それは起きた。


すべてを消す光一色の世界に、いつのまにか飲み込まれていた。

なにも見えない。そのため、方角がわからない。


「パパーーーー私ねーーーー」と、その中から奏絵ちゃんの声が響く。

が、彼女の姿を見つけることもできなければ、それがどの方角から響いてきたのか判断できない。

「私ね、産まれることができなかった。でもね、私はパパとママをずっと見てきたの」

見ていたーーーー

「だからね、私はママの思いを知ってるの」


だから、あの時、奏絵ちゃんはあんなことが言えたいのか。と、納得する。


「それに、パパのことも見ていたよ」と、池袋の街の中で見ていたの満面の笑みで言う奏絵ちゃん。

君は母親を天から見ていたと言うなら、俺のことも見ていたんだろうな。

ただ、そう言われて、嬉しいと感じんかった。

真っ先に感じたのは、情けいない。だった。

さらに、そんな情けない父親の姿を見せて、すまないとも思った。

昔から逃げて、誰も知り合いもいなければ、自分の過去を知っているいない場所で、現実から逃避したことで得られた自身だけが幸せな生活を送っている父親の姿を見て、誇りと思えるだろうか。

もし、その立場が俺だったら、父親らしい誇りなんて感じない、むしろ、埃のような存在と思ってしまう。

だいたい、自分に娘ができていて、父親としての役割が就いているのに、そのことすら忘れて、気がつかないで……長い間、放置していた奴だ。

そんな姿を見られていたんだ。


「だからね、私からパパにお願いがあるの」


お願い?

こんなダメな父親に何を願いと言うのだろうか?

むしろ、それを叶えるだけの父親としての責任を果たせるかどうか怪しい奴にだ。


「そうだよ」と、少女は言う。

その口調は、完全に俺を信じているそれだった。


「これから、パパはとても大切な瞬間に目を覚ますの」


目を覚ます?

いったい、彼女が何をいってるのかわからなかった。


「そうだよ。今のパパは夢であって現実に近い世界のなかにいて、本当のパパはここではない、現実の世界で寝てる」


寝てる?俺が?

しかも、今、自分がいる世界が夢の世界?

彼女がいっていることが現実離れしすぎているせいで、理解不可能。

いくら、ライトノベルライターの俺でも、現実と空想の違いははっきりとできるが……


「大切な瞬間に目を覚まして、パパは自分の本当の答えを伝えあげてーーーー」


伝える?誰に?

だめだ、完全に放置状態だ。

一切、彼女がいってる意味がわからない。


「それが、私のお願いーーーーだよーーーーパパ」

「まっーーーー!!!!!」と、なにも理解できなかったから彼女を呼び止めようとした刹那、

光が強くなった。

いや、もともと光一色というか白一色の世界のなかだ。

白の濃さが増した。というべきか。

眩しい。といよりも、目映く。


そしてーーーーーーー

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