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不良と幽霊の話(5)

 数日前。

「君って掃除とかするタイプだったんだね。意外だよ」

「ちげえよ、逃げようとしたところを捕まえられたんだ。あの野郎待ち伏せしてやがった」

 いつもなら逃げてたんだ。などと、言いわけがましく言う。

「あーなるほどね。その先生がここにいないのは優等生の僕が見張をすると踏んでなのか、うまく考えられてるね」

「いやかなり普通の考えだろ。つか、自分で

優等生とか言うなよ」

「ん?だって間違ってないし、まあでも先生の読みは間違ってるね。僕は頭はいいし真面目だけど正義感は強くないんだ。君も気にせず逃げていいんだよ?」

「いややることねえし、手伝ってやるよ」

 どうせ暇人だし、というとソイツはおかしそうに笑って、やっぱりというように頷いた。

「君はさ、やっぱり正しい不良なんだよね」

「あ?俺が言うのもなんだが不良なんて正しくないだろ。つか、正しくないから不良なんだぜ?」

「いやそういうわけじゃなくてさ、うんなんて言うかな……」

 少し考え込む。

「不良になるのは二パターンあると思うんだよね、つまり君みたいに正しい行為がしんどいから悪い行為に走る、まあ純粋な社会不適合者だ」

「お前と話してると俺は案外怖がられてないのかもしれねえと思えてくるな」

 面と向かってそんなこと言うなよ。こいつは礼儀を学ぶべきだ。

「いやいや君は怖がられてるよ、純粋な社会不適合者は怖いけれど間違っていないよね、社会に不適合だから悪いという偏見から君たちは不良と呼ばれるんだよ。いうなれば君たちは被害者だ」

「被害者ねえ、初めて言われたな。加害者なら言われまくってるけど」

「ケハッ、だろうね」

 馬鹿にされている。全く、変な笑い方だな、こいつ。

「で、だ。もうひとつの方はね。まあありがちだな。悪いことをする必要もないのに格好の良さでしているタイプだ。俗にいうDQNだね」

「嫌な言い方すんなよ」

「まあわかるだろ?簡単に言うと腰が気持

ち悪いから腰パンしてるのと、かっこいいから腰パンしてるのとの違いだね。ちなみに僕は前者だよ?」

「お前は頭がいいだけで少しも優等生じゃねえ」

「ケハッ、まあまあそういう区分のうち前者であり、さらにそれを極めた君のような人間は普通にかっこいいと思うんだよ」

 そうか?なんか変な気分だな。

「俺としてはそんなこと思ったことねえよ。」

「そうそこなんだよね。結局君は別に悪いことをしたいわけじゃない、悪いことしかできないんだよ。選択肢がはじめから存在しない……と、まあ話を変えようか」

 そういって当たり前のように火の燃え盛る焼却炉に腰掛けた。

「これ危ないよねえ少し手を滑らせたら焼け死んじゃうよ。普通こんなでかい入れ口にしないもんだけどなあ。設計ミスだねこ

れ」

「そう思うなら降りろよ、マジで死ぬぞ」

別にどうでもいいとはいえ一応言ってやる。

「大丈夫死にやしないよ。それよりさ、ひとつ聞きたいことがあったんだ」

「ん?なんだ?不良になりたいとか言わねえよな?」

「言わない言わない、思っても言わないね、いやさ……」

目の色が変わった。

もちろんこれはこいつが変身をしたとかいう理由ではなくただ単に比喩的な意味合いだ。

しかし俺には、変身のように見えた。

「僕はね、気持ち悪いんだよ、この世界が」

「あ?何言い出すかと思えば、そういう思想は中学生で卒業しろよな」

 馬鹿馬鹿しいな。真剣に聞いて損した。

「うーんそうだね。確かにその通りだ。でもさそう思ってるんだから仕方ないよね。それでね、君に聞きたいんだよ」

「何をだ?」


「君はなんで生きてるんだい?」


 ひどく簡単なその質問が、

 まるで酷い質問のように心に突き刺さった。

「生きてることに意味なんてないことは明白だろう?ほら高校受験の時これが終われば楽になれるから頑張ろうとか思うじゃん?いや君はしなかっただろうけど。まあそれでね、高校に入って気づくんだよ。入ってからもかなりしんどいって。人生はそれを繰り返すのさ、夢見がちなお子様じゃないんだから分かっているはずだ。僕たちは永遠に苦しみ続ける。努力し続ける」

「いや……でもさ」

 それはいいことだろ?俺が言うのもなんだけどずっと努力し続けてそうしながら得られる幸せってやつが……

「それでね、面白いのはそういう現実を目の当たりにすると人間はそれを幸せだと思い込もうとするんだよ」

 そういってまた笑う。

「ケハッ。努力し続けるのがいい?そうしないと駄目になる?いやいやお前らマジもんの馬鹿だろ。苦労せずに遊んでいられりゃそれが一番いいに決まってんじゃん。なんだよ?したくないことするのがいいって全人類マゾヒスト計画でも始まってんのか?みんな苦しみに快楽でも感じてるのか?最低だな」

言葉遣いが荒くなってる。

まるで世界に怒るかのような言い様じゃねえか。

「ということはだよ。まあそういう変態ども以外からしてみれば浮世は辛いだけだろう?生きる意味なんて感じない。もっともまっとうに生きていればという話だけどさ。でもそれでも毎日退屈だよね。何も起こらない、だからさ」

 狂気の目。

 駄目だ、俺は。

 こいつが怖い。

「いっそ死ねばいいと思うんだよね。みんなこの苦しい世界から解放されてしまえばいい。それかまあ化け物にでもなれば話は別だけどさ、というわけで」

 ひどく当たり前のようにこちらを向いて泡介は言った。

「僕を殺さないでね」

 何故だろう、ただありがちな自論を語って最後に当たり前な言葉で締めくくった、そんな普通なやつを。

 俺は殺したのだった。


今日の更新は以上です。来週の残り二話でラスト。最後までお願いします。

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