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上の空の恋人  作者: ニシ
5/5

月曜日は映画論5

深呼吸する。

教室の電気は消され、映画が上映される。

わたしは田仲を感じる。

田仲はわたしをみている気がした。

右側だけ温度を感じる。

あ~~~~!!

わたしは心の中で叫びカメラを構える。

そこらじゅうを撮る。

飛び跳ねる、転がる。

立ち上がる、ぐるぐる回る。

そしてカメラを右側に投げつけた。

心の中は自由だ。

だが現実は授業中でわたしは椅子に座り、右側には田仲がいた。

震える手を叱咤しカメラを構える。

フィルターごしに田仲をみる。

田仲は少し驚いているようだった。

わたしも驚いている。

授業はわたしをおいて進む。映画は流れる。

話はすすむ。

わたしは息が切れる。

田仲に向き合う。

なおもカメラは構えたままだ。

深呼吸する。

のどが震える。

声をしぼりだす。

もしかしたら気のせいかもしれない。

勘違いかもしれない。

そもそもわたしはこの分野は苦手だ。

でも言わねばならない。

理由はない。

もうなにがなんだかわからない。

わたしはありったけの勇気をだした。



「田仲、くん。おまたせ」


声はふるえていた。

これが正解か不正解かわからない。

わたしがなにを望むのか、田仲がなにを望んでいるか。

すべてがわからない。

衝動だったのかもしれない。


佐崎の息を呑む声が聞こえた。

フィルターごしの田仲は微笑む。

そして


「まちました」


と美しく笑った。

わたしは相変わらず汗が止まらない。

前では映画が流れている。

イージー・ライダー。

アメリカのロードムービー。

道をひたすら走る。

トンネルを抜ける。

その向こうには何がある?

空、雲、鳥。

そして道。

トンネルを抜けても道がある。

道の向こうにも道がある。

どこまでも続いている。



田仲の立てこもりはこの日終わる。

しかし、彼は卒業までにいろいろとまた事件を起こす。

わたしは起こすたびに汗をかき、ときに熱をだす。

そして気がつけば田仲とわたしは二人セットとみられる。

わたしは相変わらずわたしで、ぼんやりする。

田仲はいつも笑い謎の行動を起こしわたしを驚かす。

わたしはカメラをもちながら、でもカメラなしでも空を見上げる。田仲をみる。

空はいつもそこにあり、田仲は隣で笑う。

雨が降り、日は差し、雲がうごく。

田仲は田仲でわたしはわたしで。


そんな感じに田仲とわたしの話は始まる。


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