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上の空の恋人  作者: ニシ
2/5

月曜日は映画論2

 事件は木曜日起こる。

木曜日は昼のみの授業の日で、水曜日は授業をいれていない。

だからか木曜の昼はいつも以上に対応がのんびりしてしまう。

ぼんやりと掲示板を眺め今後のスケジュールを確認していると佐崎がやってきた。

小走りで近寄り隣にたつ。

「ゆ~ちゃん、きいた?きいた?」

今日の佐崎はオシャレである。わたしは根拠もなくそう思った。

「佐崎、今日オシャレだね」

佐崎は顔をゆるめる。

「なにいってんだよっ!も~ゆ~ちゃんったら!

なになに?なにが目的なの?おれ?もしかして、おれ??」

佐崎は絶好調にしゃべる。

わたしは内容についていけず、あいまいに笑う。

佐崎は慣れているせいか気にせず笑う。

「も~!も~!!!!!」

身振りを激しくしひとり悶絶する。

夏だからか少しおかしいのかもしれない。

いつも夏はおかしなものを運んでくる。

佐崎、わたし、空。

そして田仲。


「あ」


急に声を上げたわたしに佐崎は目をみひらく。

「なに?ゆ~ちゃんでもおれ、だめだよ。

真由美うらぎれないよ。でも、さ。でも、本気なら、」

佐崎の言葉をさえぎりつぶやく。

「田仲のこと忘れてた」

しまったと思った。

佐崎は目を見開いて顔を輝かせ

「そうそう、田仲だよ」

と叫んだ。

まるで宝箱をみつけたかのようにくいつく。

わたしは太陽みたいだなあと思った。不思議だ。

ひとなのに佐崎からは空を感じる。

「田仲って、あの田仲でしょ。空間デザインのさ。あのイケメン!」

佐崎は興奮気味に話す。

わたしは正直に返す。

「よく知らない」

本当に知らなかった。田仲がなになのか。

わかるのは映画論で一緒ということだけ。

「映画論とってる田仲で大丈夫?」

佐崎に返すと佐崎は少し驚いた。

「びっくりした!!まじ驚いた!おれ、はじめてゆ~ちゃんと会話したよ」

佐崎は謎のことをいう。

よくわからなかったので笑って返す。

笑顔はときに便利だ。言葉がいらなく肯定にも否定にもなる。

佐崎はなおも興奮気味に

「そだよ、映画論で一緒の田仲!

いや、映画論って大教室だから同じ田仲かな?

田仲いっぱいいるもんね。あれだよ、イケメンで空間デザインの田仲だよ」

同じことをいう。

わたしは田仲、イケメン、空間デザインと頭に刻む。

いつも忘れてしまう。このこともそのうち忘れてしまうのだろう。

でも久しぶりにわたしは覚えておきたいと思った。

しかし、次の言葉で少し忘れる。


「その田仲がさ、月曜の映画論から大教室から出ないんだって」


佐崎は面白いよなと笑いながらわたしに返す。

わたしは、ふーんと思う。

「そなんだ」

世の中には不思議なひとがいるみたいだ。

何故か心が少しざわつく。

佐崎は続ける。

「そうそう。なんかね。約束がどうとか言って出ないんだってよ。

美形のやることは謎だよな。」

「へ~」

あいまいに返す。

佐崎は笑いながら

「よくわかんねえけど、おれは田仲のこと見直したな。心意気を感じるよな」

と馬鹿っぽいけどいいよなと、あまずっぱくていいよと笑う。

「でも、約束ってなんだろうな。ギネス耐久戦かね」

それから佐崎はあっと声を出し、大発見をしたかのように顔をゆるます。

そして体をくねらせ声を作り言う。

「教室に一週間こもれたらつきあってあげる!とかかなあ~」

あまずっぺー!!!と拳を握り締めて佐崎は叫んだ。

「も~ともかくここ最近この話題ばっかだよ。おれは今後を強く見守りたいね」

この久しぶりのビックウェーブを!

佐崎は興奮している。

わたしは約束かあ。と思う。

どんな約束をしたら教室にたてこもるようなことをするんだろう。

謎である。

わたしだったら、帰ってしまいそうだ。

そもそも約束をすぐ忘れるほうだ。

いつも怒られる。

最近も忘れてしまった。

そのことについて怒られたような気もする。

空をみつめているとなんだかいろんなことがどうでもよくなってしまう。

空は色を変える。

高さを変える。

わたしは地上にいてフィルターごしでしか空と関われない。

カメラは空の気持ちを写し取る。

彼女はとても気まぐれ。彼はとてもクール。

どこにでもいて、だれにでもなった。

愛もささやく。

そう、耳元で甘くささやかれた告白。

あいしてる。

あいしている。

あい。



あいしています。



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