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冗長凱歌

作者: 泰然寺 寂

 あるいは全てをなげうってまで手に入れたい物があったとして、お前がそれを本当に手に入れることができるかというと、万が一にもあり得ない。断言する。絶対に、無理。諦めろ。

 こんなセリフを吐く教師が果たしてこの世に存在するのか、そう思う向きもあるかもしれない。そんな外道がこの世に存在しても良いのかと。だが残念ながら答えはそんな外道は確かに存在するし、そういうのに限って世に憚っていたりする。もし今まで生きてた中で出合っていないのであればそれこそ全てをなげうってまで手に入れたい。既に手に入れている人は十分に堪能したであろうから譲ってくれ。お願いする。だがかの教師の言を借りれば全てをなげうってまで手に入れたい物は手に入らないらしく、その教えを受け入れるのは癪だが経験則的に信じるしかあるまい。憎まれっ子は世に憚らずいなくなればきっとこの世はとかく住みやすいものになるだろう。断言する。断言したい。

 さてこんな教師に教わってまともな人間に成長するであろうか。いやいや果たしてかの教師の教え子たちはしごく真っ当に成長した。一人を除いて。可哀想なその一人は誰かなど今さら問うべくもないゆえ言及は差し控えるが、教師というのはとかく自分のお気に入りやその逆を作りたがる物で、いくらあの教師は正真正銘のクズであると声高に叫んでも、いやいやあの人は生徒のことをよく考えているし思い違いでないならばさては悪質な冗談だろうと、取り合ってなどくれなかった人もまた同罪であり断罪すべきである。泣きひれ伏しても許すつもりはないが一応言っておきたい、謝るなら今の内であると。謝りたくともコンタクトの取り方が分からないというのであるならば同窓会名簿を繰るがよい。さすれば同窓会委員の人間だけが知る連絡先が見つかるであろう。全ては秘匿される情報社会であるからにはコンタクトをとることが遅れるやもしれぬがそれはそれ。許さぬとは言い条そこまで苦労して連絡を入れてくれた人間には出涸らしの茶の一杯でも淹れてやらんでもない。人間的に堕落し性格が超ひも理論級に捻れている人間に教わったといえ、その教え子の性格=大統一理論級の難解さを誇る物で無し、寛大とは言わぬものの情状酌量を考える裁判官のごとき心は持ち合わせている。

 世知辛きは人の世。情に棹ささぬとも流される世の中というのは昨今始まったばかりではなく、古代オリュンポスの十二神が跋扈していた時代から同じような最近の若いもんはという若者にむやみやたらと辛く当る風習、その源泉をあえて指し示そうとすれば、それすなわち老いへの不安にしかあるまい。人は皆いずれ死ぬとは誰が言ったことか、まことに正しく寸分の狂い無く突き立てられた刃のようだ。人はいずれ死んでしまうのだ。金持ちの道楽は古来中国四千年の歴史を紐解いてみたとて不死への探求とはいったもので、今でも日進月歩の勢いで成長する医療技術はしかし不老不死の高みへとは未だ到達していない。四千年の歴史を以てしてなお打倒すること叶わぬ死、ひいては老いに対する不平不満鬱憤その他諸々が自身よりもより若く、つまりは死から一歩でも遠い人間への羨望が嫉妬から憎悪へ向かうことは必定であるといえよう。今どきの若いもんは優先座席に平気で座りよるから困る。今どきの若いもんはなにかとつけてインターネットで調べようとするから困る。今どきの若いもんは呼び鈴を鳴らしてもすぐに駆けつけず挙げ句入浴介助もせんから困るなどなど。挙げ始めるとキリのない八つ当たりを目にしてもまだこの世が平等であるといえようか。いえるはずはないであろう。これでもまだ先の例に挙げたようなけしからぬ教師が存在せず、神は天にいまし、全て世は事もなしなどと考える人がいるのであれば、今一度だけでもいいから胸に手を当てて考えていただきたい。それでも例が思い浮かばぬならそれはそれでけっこう。思い浮かばぬ人はその人なりの現実があるであろう、無理強いしたいとは思わぬ。だからせめてそちらの常識で規定せずかような意識を持つ人間も存在しているのだなと考えていただきたい。

 いやいや考えるだけでは互いの中で完結し合うだけの茫漠としたものである。よって腹を割って話したい。だから今月行われるという同窓会の会場を教えて欲しい。

ありがとうございました。

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