表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強陰陽師教師、問題児だらけの転移者クラスを任される ~王立魔術学園第零組~  作者: ささかま
楔共鳴編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/36

8話 寮の夜

王立魔術学園の夜は、思っているより静かだ。


昼間はあれだけ騒がしい食堂も、今は灯りが半分落とされている。

廊下を歩く足音もまばらで、寮の窓からはところどころに魔力灯が揺れているだけだ。


……平和な夜だ。


少なくとも、表面上は。


俺は寮の廊下をゆっくり歩いていた。

教師寮は別だが、第零組の様子を見るのも仕事の一つだ。


扉の向こうから笑い声が聞こえる。

迅の声だ。



「だから言っただろ!雷乗せればあと二十は伸びたって!」


「それ魔玉の撃ち方じゃなくてゴリ押しなんだけど」



陽菜の声。

透が静かに言う。


「……理屈としては間違ってない」


「透まで言う!?」



悠真の苦笑が聞こえた。


「でも迅さん、魔力消費すごかったですよ」


「……まあな」



その横で黒斗は窓際に立っている。



「黒斗もなんか言えよ」


迅が振る。

黒斗は一瞬だけ視線を上げた。



「……騒がしい」


それだけ言って、また窓の外を見た。

迅が笑う。



「通常運転だな」



俺はそのまま通り過ぎる。


廊下の奥。

転入組の部屋の前で、灯りが漏れていた。

中から声。


「だからここで魔力を循環させるんです」



九条結月だ。

偶然だが、俺と同じ名字を持つ生徒。


机の上には紙と魔術式。

乃愛が目を輝かせている。



「おおー!」



結月が説明する。



「魔玉は生成より循環が重要です」


「循環?」


「はい。流れを作ってから集める」



乃愛が手を前に出す。

魔力がふわっと集まる。

……少し強すぎる。



「止めろ」



俺が言う。

乃愛がびくっとした。



「せ、先生!」



魔力を指で弾く。

球になりかけた魔力が霧散する。



「まだ制御が甘い」



乃愛が頭をかく。



「つい集めちゃって」



結月が真面目な顔で言う。



「乃愛さんの魔力量は異常です」


「褒めてる?」


「事実です」



二人を置いて、俺は廊下へ戻る。

階段の手前。


壁にもたれている影があった。

御影凪だ。



「眠れないのか」



凪は少し驚いた顔をした。



「……はい」



視線は床。



「胸がざわつくんです」



小さく言う。



「魔力が、落ち着かない」



……やはりか。

凪の体質は、周囲の魔力に引き寄せられる。

この世界に来たばかりなら、なおさらだ。



「焦るな」



俺は短く言う。



「魔玉は時間がかかる」



凪は少し黙った。

それから小さく言う。



「先生」


「何だ」


「先生は……怖くないんですか」


「何がだ」


「軍とか」



廊下の窓から夜空が見える。



「怖いに決まってる」



凪が顔を上げた。



「そうなんですか」


「怖くないやつは嘘つきだ」



俺は階段へ向かう。



「寝ろ」


「……はい」



屋上へ出る。

夜風が少し強い。


街の灯りが遠くに見える。

先客がいた。


神代梓。

柵にもたれて夜空を見ている。



「訓練か」


「休憩です」



振り向く。

黒髪が風で揺れる。



「魔玉は?」


「まだです」


「そうか」



沈黙。

しばらくして、梓が言う。



「先生」


「何だ」


「軍、本当に来ますか」


「来る」



迷わず答える。

梓は視線を落とす。



「やっぱり」


「嫌か」


「当たり前です」



即答だった。



「選ばれたら、どうなるんですか」


「戦場だ」



梓は黙る。

夜風が強くなる。



「……先生は」



小さな声。



「また一人で何とかする気ですか」



同じ質問だ。

俺は空を見る。



「教師の仕事は、生徒を守ることだ」


「それ答えになってません」



梓が言う。



「死ぬのは守るって言いません」



俺は少し笑う。



「お前は本当に面倒だな」


「先生ほどじゃありません」



その時。

屋上の扉が開いた。

篠宮怜奈だ。



「失礼します」



夜風の中でも姿勢が崩れない。



「こんな時間にどうした」


「少し通信を」



梓が眉をひそめる。



「通信?」


「家族に」


怜奈は微笑む。

完璧な普通の笑顔。

俺は何も言わない。


怜奈の視線が一瞬だけ俺を見る。

そしてすぐ逸れる。


夜空に、星が一つ流れた。

静かな夜だ。


だが、その静けさは長く続かない。

俺はなんとなく、そう思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ