34話 大型共鳴体
夜の学園広場。
空の裂け目の下で、巨大な影がゆっくり立ち上がった。
四メートル。
黒い体。
歪んだ腕。
赤い目が静かに光っている。
その視線は一直線に向いていた。
凪。
迅が舌打ちする。
「完全に狙われてるな」
陽菜が言う。
「感じ悪い」
透が小さく呟く。
「魔力密度が違う」
結月が言う。
「さっきの共鳴体の数倍です」
怜奈が一歩前に出た。
視線は共鳴体から動かない。
「大型共鳴体」
短く言う。
「全員、距離を取ってください」
落ち着いた声だった。
「前衛は迅と梓。
後衛は散開」
自然に全員が動く。
迅が笑う。
「了解、隊長」
次の瞬間だった。
大型共鳴体が動いた。
巨体が地面を蹴る。
次の瞬間。
姿が消えた。
「速っ!」
迅が叫ぶ。
黒い腕が横薙ぎに振られる。
迅が雷を足に流す。
雷が地面で弾ける。
踏み込み。
一瞬で共鳴体の横へ出る。
腕が空を裂く。
石畳が削れる。
迅はすでに共鳴体の横にいた。
剣を振る。
斬撃。
黒い体に刃が食い込む。
だが浅い。
迅が言う。
「硬すぎ!」
その瞬間。
梓が逆側から踏み込む。
剣が横から振り抜かれる。
共鳴体の腕に斬撃。
黒い体が揺れる。
だが止まらない。
共鳴体が腕を振り上げる。
迅と梓が同時に跳ぶ。
腕が地面を叩き砕く。
広場が揺れる。
怜奈が言う。
「陽菜」
短い指示。
陽菜が笑う。
「了解」
両手を広げる。
魔玉が生まれる。
十。
二十。
三十。
火の光球。
風が巻く。
雷が走る。
「三十連!」
弾幕が空を埋める。
共鳴体へ降り注ぐ。
爆炎。
煙。
だが。
影が煙を突き破る。
共鳴体が突進する。
怜奈が言う。
「透」
透がすぐ動く。
「精霊」
水精霊が地面を走る。
石畳に水が広がる。
共鳴体の足が滑る。
そこへ。
風刃。
斬撃が胸を裂く。
共鳴体がよろめく。
怜奈が続ける。
「黒斗」
影が揺れる。
黒斗が共鳴体の背後に現れる。
刃が閃く。
胸。
核を狙う。
だが。
共鳴体の腕が後ろに振られる。
黒斗が影へ沈む。
腕が空を裂く。
乃愛が笑う。
「危ないですね」
悠真が結界を広げる。
衝撃が弾かれる。
結月が言う。
「核が胸にあります」
怜奈が頷く。
「確認」
そして短く言った。
「胸を破壊してください」
迅が笑う。
「分かりやすい」
雷が足元で弾ける。
踏み込み。
共鳴体へ突進する。
梓も同時に動く。
左右から斬撃。
腕が弾かれる。
怜奈が言う。
「今」
透の風刃。
陽菜の魔玉。
黒斗の影刃。
全てが胸へ集中する。
共鳴体が咆哮する。
だが止まらない。
迅が踏み込む。
雷が弾ける。
剣が突き出される。
胸。
核。
刃が貫いた。
一瞬。
共鳴体の体が止まる。
次の瞬間。
黒い体が崩れた。
影の粒となって夜空へ消える。
静寂。
広場に風が吹いた。
迅が息を吐く。
「……倒したか」
陽菜が言う。
「疲れた」
透が精霊を消す。
悠真が結界を解く。
乃愛が笑う。
結月が空を見る。
怜奈が静かに言った。
「……まだ終わっていません」
全員が空を見る。
裂け目。
まだ閉じていない。
その奥で。
何かが動いていた。




