33話 迎撃
夜の学園広場に、重い衝撃音が響いた。
空から落ちてきた共鳴体が、石畳を砕きながら着地する。
黒い体。
歪んだ腕。
赤く光る目。
三体。
その背後で、空の裂け目がまだ揺れている。
第零組は広場へ駆け込んだ。
迅が最初に足を止める。
「来るぞ!」
共鳴体が動いた。
巨体が地面を蹴る。
鈍い衝撃が広場に響く。
見た目より速い。
迅が前に出る。
剣を抜く。
足元で雷が弾けた。
「任せろ!」
踏み込み。
雷が爆ぜる。
次の瞬間、迅の姿が共鳴体の懐にあった。
腕が振り下ろされる。
鉄柱のような腕。
迅は半歩だけ横へずれる。
腕が石畳を叩き砕く。
破片が弾ける。
その隙。
迅が剣を振る。
刃が共鳴体の脚を斬る。
黒い体が揺れた。
だが完全には切れない。
迅が舌打ちした。
「硬っ!」
その瞬間。
「どいて!」
陽菜の声。
迅が後ろに跳ぶ。
陽菜が両手を広げる。
火の魔玉が生まれる。
その周囲に風が巻く。
さらに雷の光。
三属性。
陽菜が叫ぶ。
「魔玉!」
光球が一斉に膨れ上がる。
「火・風・雷の三十連!!」
三十の魔玉が空へ広がる。
火球が風で加速し、雷が軌道を制御する。
弾幕。
共鳴体へ降り注ぐ。
爆音。
火花。
黒い体が揺れる。
それでも倒れない。
「まだ立つ!?」
陽菜が叫ぶ。
透が前に出た。
「精霊」
短い詠唱。
足元に水の魔法陣が広がる。
二体の精霊が現れる。
水精霊。
風精霊。
透が手を振る。
水が地面を走る。
広場の石畳が一瞬で濡れる。
共鳴体の足が滑る。
そこへ。
風刃が飛ぶ。
透明な斬撃が黒い体を切り裂く。
共鳴体が体勢を崩す。
透が言う。
「今」
影が動いた。
黒斗。
足元の影から滑り出る。
音がない。
共鳴体の背後。
刃が閃く。
首元を斬る。
影を纏った一撃。
黒い体が大きく揺れる。
その瞬間。
迅が戻る。
足元で雷が弾ける。
踏み込み。
一瞬で距離が消える。
「そこ!」
剣が共鳴体の胸を貫いた。
黒い体が震える。
次の瞬間。
影の粒となって崩れた。
迅が息を吐く。
「一体」
だが。
残り二体。
そのうちの一体が腕を振る。
地面が砕ける。
石片が飛び散る。
悠真が前に出た。
「防御!」
光の魔力が広がる。
半透明の結界が広場を包む。
石片が結界に当たる。
弾ける。
乃愛が楽しそうに言う。
「すごいですね」
結月は冷静だった。
共鳴体を指差す。
「核が胸にあります」
「そこを破壊すれば崩壊します」
迅が笑う。
「分かりやすい!」
だが。
その瞬間だった。
空が軋む。
全員が上を見る。
裂け目が広がる。
黒い影が落ちてくる。
今度の影は大きい。
さっきの共鳴体の倍。
四メートル。
落下。
着地。
――ドン
衝撃が広場を揺らす。
石畳が沈む。
迅が言う。
「……おい」
陽菜が言う。
「ラスボス出てきた?」
透が小さく言う。
「精霊が怯えてる」
怜奈が低く言った。
「大型共鳴体」
結月が頷く。
「完全体に近い」
影がゆっくり立ち上がる。
歪んだ腕。
赤い目。
その視線が向いた。
凪。
一直線に。
凪の体が震える。
胸の紋様が強く光る。
俺は理解する。
「……狙われてる」
迅が剣を構える。
「守るぞ」
陽菜が魔玉を生む。
透が精霊を呼ぶ。
黒斗が影に沈む。
悠真が結界を広げる。
乃愛が笑う。
結月が位置を指示する。
怜奈が言う。
「戦闘配置」
梓が俺の隣に立つ。
剣を構える。
大型共鳴体が動いた。
巨体が一歩踏み出す。
地面が軋む。
迅が笑った。
「先生」
俺を見る。
「これどうします」
俺は空を見る。
裂け目はまだ広がっている。
共鳴は止まっていない。
つまり。
これは前座だ。
俺は剣を抜く。
闇が刃を覆う。
「……まず」
大型共鳴体を見る。
「こいつを倒す」
大型共鳴体が吠えた。
夜の学園に、戦いの音が広がった。




