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最強陰陽師教師、問題児だらけの転移者クラスを任される ~王立魔術学園第零組~  作者: ささかま
楔共鳴編

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32話 再共鳴

夜は、思ったより早く訪れた。


夕方の鐘が鳴ってから、まだ一時間も経っていない。

だが空気はもう夜の重さを帯びていた。


第零組の教室。

窓の外では、結界塔の光が夜空に広がっている。


俺は教壇の前に立っていた。


全員が席にいる。

誰も騒がない。


さっき見た空の歪みが、頭から離れないからだ。

迅が腕を組んだまま言う。



「先生」



「なんだ」


「来るんですよね」



短い質問。


だが意味は分かる。

俺は窓の外を見る。



「来る」



陽菜が言う。



「今日?」


「分からない」



だが。

時間はそう残っていない。

透が窓際で小さく呟く。



「……魔力が重い」



結月も黒板の前で言う。



「境界振動が増えている」



怜奈が言う。



「軍も気づいているはずです」



乃愛は椅子を揺らしながら言う。



「お祭りですね」



陽菜が突っ込む。



「お祭りじゃないから」



凪は静かに座っている。

胸の包帯の下。


楔の紋様が、ゆっくり脈打っている。

悠真が横で見守っている。


黒斗は窓の外をずっと見ている。

梓だけが、俺を見ていた。



「先生」


「なんだ」


「さっきの話」



理事長室での会話だ。



「本当にやるつもりですか」



楔の代替。

俺は答えない。


知っているのは梓だけだ。

他の9人には話していない。


梓は続ける。



「まだ決まってません」



少し声を落とす。



「私たちがいます」



迅が言う。



「そうっすよ」



陽菜も言う。



「まだ何もやってないじゃん」



透が静かに頷く。

結月が言う。



「理論的にも方法は残っています」



悠真が言う。



「凪を犠牲にする前に」



乃愛が笑う。



「みんなで何とかしましょう」



怜奈が腕を組む。



「可能性は低いですが」



少し止まる。



「ゼロではありません」



黒斗が言う。



「ならやる」



凪だけが言わない。

ただ俯いている。


俺は言う。



「……だから」



その時だった。


――ゴォォォン


低い音。

遠くで鐘が鳴る。


だがこれは。

学園の鐘じゃない。


警報。

結界塔の警鐘。

透が顔を上げる。



「……来た」



窓の外を見る。

夜空。


その中心。

空が揺れている。

水面のように、波紋が広がる。


次の瞬間。

――バキッ


空が裂けた。


黒い線。

それが一瞬で広がる。


裂け目。

異界亀裂。


学園の上空に、巨大な亀裂が開いた。

教室の空気が凍る。


迅が言う。



「……でかくない?」



陽菜が言う。



「さっき見えたものの十倍あるんだけど」



結月が言う。



「境界崩壊レベル」



透が言う。



「精霊が怯えてる」



凪の体が震えた。

胸の紋様が強く光る。


凪が小さく言う。



「……落ちてくる」



迅が言う。



「何が」



凪は空を見たまま言った。



「もっと」



次の瞬間。

裂け目の奥から。


影が落ちてきた。

 

一つ。

もう一つ。

……三つ。



迅が眉を上げる。



「おい」



まだ終わらない。

影がさらに落ちてくる。


五つ。

六つ。


影が夜空から降り注ぐ。

共鳴体。


だが。

今までのものとは違う。

体が大きい。


形が安定している。

怜奈が静かに言う。



「……形状安定」



少し間を置く。



「中型共鳴体」



結月が言う。



「完全体に近い」



窓の外。

影が地面に落ちる。


衝撃。

広場の石畳が砕ける。


次の瞬間。

共鳴体が立ち上がった。


三メートル。

黒い体。

歪んだ腕。

赤い目。


迅が笑った。



「いいじゃん」



椅子を蹴る。



「やるか」



陽菜が言う。



「魔玉撃っていい?」



透が言う。



「精霊呼ぶ」



悠真が符を握る。

黒斗が影に沈む。

乃愛が笑う。


結月が黒板を消す。


怜奈が言う。



「戦闘配置」



梓が剣を抜く。

静かな音。

全員が立つ。


俺は窓の外を見る。

裂け目はまだ広がっている。


共鳴は終わっていない。


これは。

始まりだ。


俺は言う。



「第零組」



全員がこちらを見る。



「迎撃する」



迅が笑う。



「了解」



教室の扉が開く。

十人が走り出す。


夜の学園。

空の裂け目から。


影が次々に落ちてくる。

世界が、再び軋み始めていた。

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