3話 初授業
転入翌日の2限目、訓練場に立つと、空気がわずかに重いと感じた。
昨日までは五人だった場所に、今日は十人が並んでいる。
だがそのうち半分は、まだこの世界の魔力の流れに馴染んでいない。
「今日は魔玉の前段階からやる」
迅が眉を上げた。
「前段階って、撃たないんすか?」
「撃てない。
そもそも天城も1週間はかかっただろ」
そう言ってから、転入組を見る。
「今のお前たちは、生成以前の問題だ。」
魔玉――
魔力で球体を作り出し、指定した属性と数で発射する攻撃魔術。
魔術学園で最初に習う基礎攻撃魔術だ。
威力は低い。
木板を破壊する程度。
ただし数を増やすことで戦闘能力が上がる。
地面に先ほど教室で教えた簡易式を描く。
【生成 → 循環 → 圧縮 → 属性付与 → 射出】
「魔玉はこの順序で成立する。だが最初に必要なのは循環の安定だ。転移直後の魔力は乱流状態に近い」
梓が腕を組む。
「自覚はありません」
「自覚がないのが一番厄介だ」
俺は指先に無色の魔力を浮かべる。
小さく、安定した光。
「これが生成だ。だが、そこまで届かない」
まず梓から前に出させる。
目を閉じ、魔力を集める。
「火・雷・光」の3属性持ちだと書類に記載されていた。
おそらく王宮で測定したのだろう。
才能と将来性の塊であることは確かだが、1発成功は不可能である。
光がちらつくが、形にならない。
循環が硬い。
流れず、溜めている。
「押すな。流せ」
「……分かっています」
分かっていない。
光は消えた。
次に怜奈。
魔力は洗練され、整っている。
だが、生成の直前でわずかに崩す。
「まだ不安定ですね」
残念そうな笑みを浮かべ、こちらを見やる。
……わざと失敗したな。
面倒なことになりそうだが、追及はしない。
凪は闇の気配を滲ませるが、空気が重くなるだけで形にならない。
俺が手首に触れ、循環を落ち着かせる。
結月は理論通りに流そうとするが、量が足りない。
乃愛は逆に集まりすぎる。
両手を広げた瞬間、周囲の魔力が引き寄せられ、空気が震えた。
「止めろ」
制御をかけて削る。
球にはならないが、密度は異常だ。
既存組を見る。
「迅、見せてみろ」
迅が土の球を安定生成する。
陽菜が火球を生み、透が水を形にする。
悠真は柔らかい光を浮かべ、黒斗は光を吸う闇を作る。
転入組は言葉を失う。
「これが生成だ。撃つ以前の段階だ」
梓が唇を噛む。
「……一ヶ月で届きますか」
「届かせる」
それが教師の仕事だ。
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