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最強陰陽師教師、問題児だらけの転移者クラスを任される ~王立魔術学園第零組~  作者: ささかま
楔共鳴編

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28話 選ばれる者

理事長室の空気は重かった。


窓の外では夜風が吹いている。

学園の灯りはまばらで、広場の焦げ跡も遠くから見ればただの影にしか見えない。


だがこの部屋の中だけは、静かに張り詰めていた。


机の上には巻物が置かれている。


楔。

そして十神刀の話。


理事長は椅子に座ったまま、しばらく俺を見ていた。

それから言う。



「君はどうする」



短い問いだった。


だが意味ははっきりしている。

俺は腕を組む。



「さっきも言いました」



理事長は頷かない。



「確認だ」



その言葉は静かだった。



「御影凪の楔はまだ不完全。

だが時間が経てば固定される。

そうなれば」



少しだけ声を落とす。



「彼は世界の楔になる」



梓の拳がわずかに震えた。

理事長は続ける。



「楔は境界を固定する。

つまり一生、そこから動けない」



沈黙。

部屋の時計の音だけが聞こえる。


俺は言う。



「凪はまだ学生です」



理事長は答える。



「だからこそだ。

共鳴は若いほど起きやすい」



理屈だ。


冷たいが、正しい。

俺は椅子にもたれながら言う。



「……それで理事長はどうするつもりです」



理事長は少しだけ目を細めた。



「私は学園を守る」



短い答えだった。

俺は小さく笑う。



「政治家みたいな答えですね」



理事長は否定しない。



「学園長だからな」



それから静かに言った。



「だが、私の選択は決まっている」



梓が顔を上げる。

理事長は続ける。



「凪を楔にする」



部屋の空気が止まった。

梓が低く言う。



「……本気ですか」



理事長は答える。



「世界を守るためだ」



その声には迷いがない。

俺は理事長を見る。



「つまり」


「犠牲は必要だと」



理事長は頷く。



「世界はいつもそうしてきた」



静かな言葉だった。


だが重い。

俺は少しだけ天井を見上げる。


そして言う。



「じゃあ」



視線を戻す。



「俺がやります」



梓が振り向く。

理事長の目もわずかに動いた。


俺は続ける。



「凪の共鳴はまだ不安定」


「楔は移せる」


「共鳴値が近い人間がいれば」



理事長は黙っている。

俺は小さく息を吐く。



「俺は一度やっている」



地球。

屋上。

黒い紋様。

梓の兄。



「だから」



俺は静かに言う。



「それが一番確実なら俺がやる」



沈黙。

重い沈黙だった。


理事長はしばらく何も言わない。

それから小さく呟く。



「やはりそう言うか」



予想していた声だった。

そして梓が口を開く。



「……先生」



その声は低かった。


怒りでもない。

悲しみでもない。

ただ静かだった。



「やっぱり」



梓はゆっくり言う。



「先生はそう言うと思いました」



俺は何も言わない。

梓は続ける。



「正しいですよ。

世界を守るため一番確実な方法」



少しだけ笑う。



「正しい選択です」



その言葉は、妙に冷たかった。

俺は梓を見る。


梓の目はまっすぐだった。

そして小さく言う。



「でも」



ほんの少しだけ声が揺れた。



「私は嫌です」



沈黙。

梓は続ける。



「正しいからって」



ゆっくり言う。



「許せるとは限りません」



その言葉は静かだった。

だが重かった。


理事長は目を閉じる。

何も言わない。


俺も言葉を探す。

だが見つからない。


部屋の空気は動かない。

窓の外で風が吹く。


夜の学園。

静かな屋根の向こうに、第零組の生徒たちがいる。

そしてどこかで、世界がわずかに軋んでいる。


境界。

共鳴。

楔。


そのすべてが、もう一度動き出そうとしていた。

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