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最強陰陽師教師、問題児だらけの転移者クラスを任される ~王立魔術学園第零組~  作者: ささかま
楔共鳴編

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13話 共鳴

訓練場に残った空気は、妙に重かった。


凪が連れて行かれてから、まだ数分しか経っていない。

だが砂地の上には、さっきまでとは違う静けさが落ちていた。


迅が舌打ちする。



「……気に入らねぇ」



陽菜も腕を組んだ。



「ほんとそれ」



透は何も言わない。ただ、遠くを見ている。

悠真が小さく言った。



「先生、あれで本当に――」



その時だった。

地面が、わずかに揺れた。


最初は錯覚だと思った。

だが次の瞬間、訓練場の空気が歪む。


空間が、ほんの一瞬だけ“引っ張られる”。

俺は顔を上げた。


……来た。

まだ近い。


軍が向かった方向。

空気が、軋む。



「先生?」



迅の声。

俺は即座に言う。



「全員ここにいろ」



そして走った。

砂を蹴る。


校舎を抜け、石の廊下を駆け抜ける。

魔力の流れが、明らかにおかしい。


歪みが、広がっている。

嫌な感覚だった。

地球で感じたものと同じだ。


兵士達の前に着いた時には騒ぎが起きていた。



「結界が!」


「抑えろ!」



空き教室の扉の向こうから、低い振動が響いている。

俺は迷わず扉を開けた。


中の空気が、重い。

魔力が濃い。


床に倒れている兵士が二人。

奥に凪がいた。


拘束具がついたまま、膝をついている。


胸元。

服の下から、黒い光が滲んでいた。


紋様。

幾何学的な線。

絡み合う形。

……楔。


俺の喉の奥が冷える。

兵士が叫ぶ。



「共鳴だ!」


「押さえろ!」



凪が顔を上げる。

目が、少し違う。

焦点が揺れている。



「……先生」



声が震えている。



「俺、何か」



言葉が途切れる。


次の瞬間――

空間が、裂けた。


音はない。

だが空気が、歪む。

部屋の壁がきしむ。

床の石が浮き上がる。


凪の胸の紋様が、強く光る。

兵士の一人が魔術を放つ。


光の拘束。

だが、触れた瞬間に弾け飛んだ。


魔力の密度が違う。

楔共鳴。


俺は符を取り出す。

手が、少しだけ震えている。

頭の奥に、あの夜が蘇る。


屋上。

黒い紋様。



「術を組め」



あの声。

俺は符を展開する。


陰。

陽。

封印式。

床に術式が広がる。


兵士が叫ぶ。



「何をする!」


「黙ってろ」



殺気のこもった声で静かに兵士を威圧する。

俺は凪を見る。


胸の紋様が広がっている。

このままだと。


……固定される。

楔になる。


凪が苦しそうに言う。



「先生」


「止めてください」



心臓が、重く打つ。

止める方法は一つだ。


封印。

人格を削ってでも、楔を固定する。


あの夜と同じ。

符を握る手に力が入る。


その時だった。



「やめてください!」



扉が開く音。

梓だ。


息を切らしている。

俺と凪の間に立つ。



「先生」



声が震えている。

だが目は真っ直ぐだ。



「また同じことするんですか」



符が、わずかに止まる。

俺は言う。



「今やらないと世界が歪む」


無意識のうちに声が震える。

梓は首を振る。



「違う」


「違わない」


「違います!」



梓の声が響く。

部屋の空気が揺れる。



「正しいからって」



梓は拳を握る。



「それで全部終わりじゃない」


胸の奥が、軋む。

凪の紋様がさらに広がる。


空間の歪みが強くなる。

兵士たちが後退する。


時間がない。

俺は符を見下ろす。


梓の声が、重なる。



「先生」



あの夜と同じ言葉。



「また一人で背負う気ですか」



手が止まる。

ほんの一瞬。

その隙に。


凪の胸の紋様が、完全な形を描いた。

黒い光が部屋を満たす。


空間が、大きく歪む。

楔が――

刻まれた。


沈黙。

重い空気の中で、凪がゆっくり倒れる。


紋様は消えない。

胸に残っている。


俺はその場に立ったまま、動けなかった。

……間に合わなかった。


梓が凪の横に膝をつく。



「凪」



呼びかける。

凪は微かに呼吸している。


生きている。

だが胸の紋様は、静かに脈打っていた。


楔。

俺は自分の手を見る。


ほんの一瞬だけ。

掌に、同じ形の紋様が浮かんでいた。


だが、すぐに消える。

誰も気づいていない。


俺だけが知っている。


……始まった。

本当に、同じことが。

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