そらまめのそらもよう 〜episode11 虹空〜
雨上がりの午後のことです。
そらまめの耳に歌が聞こえてきました。
♪芽を出せ 芽を出せ ふしぎな豆の木
はやく芽を出せ 時間がきたぞ
そらまめは気になって
歌声のする方へ行ってみました。
すると、たくさんの豆たちが、
小さな一本の木を囲んで
歌いながら踊っているではありませんか。
♪のびろ のびろ どんどんのびろ
どんどんのびて 天までとどけ
そして歌に合わせるように
木がスルスルとうねりながら
上へのびていくのです。
小さな木は、あっという間に
大きく太くなって、空の雲に届くまで
のびていきました。
豆たちは、いっせいに
大きな豆の木に飛び乗ると
木をつたって上へと登りはじめました。
はやくはやく
えんどう豆たちがそらまめの背中を押すものですから
そらまめも、ほかの豆たちについて
木を登っていきました。
やがて、そらまめはヘトヘトになりながらも
雲の上までやってきました。
雲の上には、なんと豆たちのゆうえんちがありました。
大きな観覧車がゆっくりと回り、
ジェットコースターがあっちこっちに走っています。
メリーゴーランドが音楽をかなでながら
木馬の背に豆たちを乗せて回っていました。
豆たちの楽しげな声が、あちらこちらでひびいています。
そらまめは、とても楽しい気分になって
雲の上を歩きました。
雲はふかふかで、歩くたびにフワフワと
宙に浮かぶのです。
トランポリンみたいに
たかーくジャンプもできました。
そらまめは、ぴょんぴょんと跳ねながら
ゆうえんちを見て回っていると
一番奥の方に、虹の滑り台が見えました。
なぜかそこには、ひとつぶの豆の姿も見えません。
そらまめは滑り台に近づいて行きました。
滑り台の先は、どこへ続いているのかなと
のぞいていたら、
後ろから、ドンっと背中を押されました。
そらまめは、虹の滑り台を滑りながら
後ろを振り向くと、一粒のそらまめが立っているのが見えました。
虹の滑り台は、はやくて先が見えないのだけど
虹がピカピカとかがやいて
どこまでも続いているようでした。
やがてストン、
と、そらまめは地面におりたちました。
そこは雲の上ではなくて
見なれた、そらまめの畑の前でした。
空を見上げると、
大きな虹がかかっていました。
そらまめは、虹が消えてしまうまで
ずっと空を見上げていました。