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8話 僕らと一緒においでよ

「…分かんないんです。」


「え?」


「分からないんです….。気づいたらここにいて。

東京だし…何でって…考えても分からなくて…」


「分からないって…もしかして、迷子?」


「はは…かもしれません。

この屋敷、おばあさんが住んでるんですけど、

今は住まわせてもらってる感じです。昨日からなんですけど…」


「ええっ…そうだったんだ…」


迷った末に出てきた言葉は「分からない」だった。

自分でもこの状況が分からないのに、どう説明すればいいのかなんて分からない。

私がそう言うと、長髪の青年は悲しそうな顔をした。

幼顔の青年も、困ったように口を一文字に結んでいた。

何も言えないよね。私だって、何を言ったらいいのか分からないし。

そう思っていると、長髪の青年が突然「あっ!」と声を上げて、手を叩いた。


「ねぇ、今日時間ある?よかったら俺たちのライブ、見に来ない?」


「え?ライブですか?もしかして、音楽されてるんですか?」


「そう!それで、今日これからライブハウス行って、リハーサルして本番なんだけど。

行くところがないなら、俺たちと一緒においでよ!」


「ちょっと!急にそんなこと言ったら迷惑だよ!ねぇ?

無理に付き合う必要ないからね?」


長髪の青年が突然言い出したのは、どうやら音楽の話。

今日はライブがあるらしくて、音楽好きな私の心は、少しだけ揺れた。

どうしようかと迷っていると、幼顔の青年が「無理しなくていいよ」と優しく声をかけてくれた。


その言葉に、私はふと気づいた。

この人たち、悪い人じゃないかもしれない。

私の直感が、そう言っていた気がした。


「ライブ…観たいです。私、音楽がすごく好きで…」


「本当?!じゃあ行こうよ!もうすぐ車が出るから、一緒に行こう!」


「ごめんね?本当に迷惑じゃない?大丈夫?」


「大丈夫です…!ちょっと凹んでて…。元気ほしいなって思ってたので。」


「そっか!じゃあ、俺たちの音楽で元気になれるといいな!」


自分の直感を信じて、ライブを観たいと伝えてみた。

すると、長髪の青年はパッと表情を明るくし、

幼顔の青年は心配そうに私を見つめてくれた。

「元気がほしい」と言うと、

「俺たちの音楽で元気になれるといいな」と笑ってくれた。


その二人の笑顔は、どちらもとても優しくて。

私は、少しだけ心が軽くなった気がした。


「よし、じゃあ行こっか!」


「はい!よろしくお願いします!」


突然の訪問者に驚いていたはずの私。

でも、その訪問者が優しくしてくれたから。

どんな音楽をやってるんだろう?

どんな楽器を使ってるんだろう?

どんなライブハウスなんだろう?


そんなことを考えているうちに、私は少しだけ、心が軽くなり楽しみになっていた。


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