7話 見知らぬ訪問者
「はぁ…私、これからどうなるのよ……
おばあさんは、いてくれるんだよね?」
「どうだろうね?まぁ、何かあったら声をかけなさい。
とりあえず、この世界を楽しんでみなさい。」
「楽しむって言われても…」
「私はいつでも奥の部屋にいるから。
困ったことがあれば、言いに来なさい。」
「うーん…分かった…。分かんないけど。」
今のこの状況で、一人でいるなんて考えられなかった私は、
おばあさんに「ここにいてくれるよね」と懇願した。
すると、奥の部屋にいるからと優しく言ってくれて、私はホッと胸をなでおろした。
この場所で一人で暮らさなくてもいい。それだけでも安心だった。
「ひとまず、お風呂に入っておいで。沸かしてあるから。
着替えは置いておいてあげるからね。」
「ほんと?!それはめっちゃ嬉しい!」
少しだけ安心していたところに、おばあさんからの“お風呂”の提案。
服もお風呂もどうしようと思っていたから、まさにナイス!と思いながら、
浴室へ向かうと、湯気が立ちこめる暖かな空気が私を包み込んだ。
体を洗って湯船につかると、昨日だけで一気にたまった疲れが、じんわりと溶けていくようだった。
「今日から、どうやって暮らせばいいんだろうなぁ…」
首まで湯船に浸かりながら、これからのことを考える。
答えが出るわけない。怪奇現象とも呼べる意味不明な状況だし、何をすればいいのかも分からない。
ただただ、不安だけが募って、体を重くさせていくだけだった―…
*****
「いいお湯だったよー!って、あれ?」
お風呂から上がり、髪を乾かしながらキッチンに戻ると、
さっきまでいたはずのおばあさんの姿がなかった。
別の部屋にいるのかと思って探してみたけれど、どこにもいない。
“いつでもいる”って言ってたのに、もうどこかへ行っちゃったの?
そう思っていると、大きな時計がある広間の方からガタンッ、と音が聞こえた。
「なんだ、いたのー?」
そう声をかけながら広間へ向かうと、そこには見知らぬ二人の男性が立っていて、私は固まった。
一人は黒髪が長く、まるで女性のような雰囲気。
もう一人は私よりも幼く見える、可愛らしい顔立ちの青年。
…って、感心してる場合じゃない。
これは不法侵入では!?マズい!
内心パニックになっていると、幼顔の青年が焦りながら長髪の青年を止めに入った。
「やっぱりやめようってば!不審者だよ、俺たち!」
「大丈夫だって!
ねぇ、君はここに住んでるの?」
「え?」
「いつもはこの屋敷、暗いんだけど、今日は電気がついてたから。
まさかドアが開くとは思わなくて、勝手に入っちゃったんだけど…」
「ごめんね、勝手に入っちゃって…。止めたんだけど、聞かなくて。」
「いえ…」
幼顔の青年は焦った様子で長髪の青年を止めていたけれど、
長髪の青年はお構いなしといった様子で、私に話しかけてくる。
普通なら、すごく嫌な感じだし、怖いと思うはずなのに、
なぜか、そこまで恐怖は感じなかった。
とはいえ、この状況でどうすればいいのか分からずにいると、
長髪の青年は再び「ここに住んでいるのか」と問いかけてきた。
何て答えるのが正解なの?
そう思いながら、しばらく考えた末に、私は、ぽつりと言葉をこぼした。