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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十一巡 人ではないもの
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第六十二話 森山 バッグ

 大学の同級生に合コンの時に聞いた話です。

 まあ、男ですね。そいつの彼女が、デートのたびにあれ買ってこれ買ってって言って、デート代も何も全部男に払わせるっていう女性だったそうです。

 本人はそういうもんだと調きょ・・・・・・いや、洗の・・・・・・いや、全部男が持つのが普通だと思っていたみたいで、まあ、尽くしていたらしいです。

話からすると、限界よりは数歩手前でうまくたかってたって感じでしたけどね。

 で、恋人同士の一大イベントであるクリスマスが近づいたある日、彼女が、プレゼントのリクエストを出してきたそうで。

 どーんと、十数万だか数十万だかする、ブランド物のバッグをね。当時まで二十代半ばの安月給の男にね。

 なんせ、クリスマスです。日本の場合、家族かカップルのイベントですよね。友達とか仲間とか、なんにせよグループイベント。彼にしてみればカップルイベント。当然ホテルもとっくの昔に予約済み。そいつは、数秒迷っただけで ボーナスをはたくと決めたんだそうですよ。

 で、喜ぶ彼女が欲しいブランドの製品の話を延々としゃべるのを、さっぱり意味がわからないけどニコニコと聞いていたんだそうです。デート先のカフェの窓際でね。

 しゃべっていた彼女が、目ざとく窓の外の通行人が持つバッグに目をとめて、あれはそのブランドの古いデザインのもので、お古でも数十万はするんだと説明してくれて、彼氏も中古で数十万ってのが信じられなくって、一目見ようと目的のバッグを持つ人物を窓越しに探したんだそうです。

 それが、七十歳くらいのおばあさんで、いい感じに歳とってて、ブランド物のバッグをごく自然に持っていて。それに比べると、彼女には似合わないなあと一瞬思っちゃったそうなんですね。バッグが良すぎて浮いちゃわないかなあと。金額が金額だけに、投資する決心もちょっと揺らぐよなあ。

 そのおばあさんがゆっくり歩いていたんで、彼らもじっくり見物してたそうなんですが、ちょうど、そんな彼らの目の前で、それは起きた。

 すーっと近寄って来た男が、さっと、おばあさんの腕からバッグを引ったくったんです。

 手提げ型のバッグだったからおばあさんは腕に引っ掛けてただけで、後ろから来てさっと抜いて、犯人はすぐに駆け出して、おばあさんが反射的に手を伸ばして。

 そんな動きがスローモーションで見えたって。

 直後、おばあさんと犯人が、そろってこけた。

 犯人は後ろに、おばあさんは前に。

 奴は、見たんだそうですよ。

 犯人が盗ったバッグから伸びた、バッグと同じ柄の細い腕を。

 その腕が、バッグからひゅっと伸びて、おばあさんの手にしがみついたのを。

 犯人はよろけてこけた程度だったけど、身の軽いおばあさんは急に引っ張られて派手に転んで、その後、救急車で運ばれちゃったそうです。けど、犯人がこけた隙に周りの人間が取り押さえたから、バッグは無事。

 長年使い込まれたバッグ君は、持ち主から離れたくなかったんでしょうね。

 結局、彼はそれでバッグを買う気が失せてしまって、それが原因でクリスマス直前にふられちゃったんだそうです。ホテルはキャンセル。

 合コンのネタとしてはまずかったですね。一応、彼も三十代でそれなりに出世していたしね。

 彼は合コンでひそかに奪い合いされて、二次会に連れ去られて行きました。そのあとのことは知りません。

 

 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


次は引き続き四人による百物語第十二巡となります。

田中・相川が抜けた分を、一巡増やしてノルマ分話せという管理人からの指示によります。

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