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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十一巡 人ではないもの
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第六十一話 岩田 戸袋

戸袋とは、雨戸を収納する場所のことです。

 高校の時、部活の合宿で怪談をやったときに先輩に聞いた話です。

 同じ部屋の六人で三話ずつくらいだったから、二十話もやってないわね。さっき神谷さんが言ってた数字を言うってのはやったけど、七とは誰も言ってくれなかったわ。

 先輩が中学の時、夏に林間学校に行く行事があったんだそうです。

青少年自然の家に泊まってオリエンテーリングしたりキャンプファイアーやったり、カレー作ったりするやつね。

大部屋に大勢詰め込まれて、夜には肝試しをやったり。別に、幽霊は見なかったそうなんですけども。

 まず、部屋に入って不審に思ったのが、窓際の壁に張られた注意書き。

『暗くなったら雨戸を閉めましょう』

『窓から身を乗り出して雨戸を閉めないで下さい』

 雨戸があること自体珍しいでしょう?

 最近はマンションとかアパートとかは雨戸ないし。一戸建てでも雨戸じゃなくてシャッターだったりするし。まして、公共施設ですしね。

ほとんどの部屋は二段ベッドだったけど、先輩のグループは一階の和室だったんですって。本来使うはずだった二階の部屋が雨漏りで、一階の引率者用の部屋に変更になったとかで。ほかの生徒たちとも離れた部屋になって、隣りは先生たちの部屋。。

 そこの雨戸は、窓が広いから六枚あって。それが、ちゃんと戸袋に入ってて、そこから引き出すようになってたんだそうです。

 変な張り紙してあるなあと、先生にきいたら、先生たちの部屋には貼ってないと。

いたずらにしては紙が年代物だったし。なんだろうなあと思いつつ、日ごろ雨戸を閉めるという習慣がなかったものだから、誰も彼もすっかり、そのこと忘れてキャンプファイアーに出かけちゃった。

 それで部屋に戻ったら、雨戸が一枚だけ、六枚の窓の真ん中へんまで引いてある。

 誰だこんな中途半端なことしたのは? て。

けど、誰も知らない。まあ、全員同じ行動してたわけだしね。

で、しぶしぶ、みんなで雨戸を閉めることにしたんだそうです。

 一人が戸袋がある右端の方へ。もう一人が、中途半端に引かれた雨戸を引っ張るために真ん中の窓を開けて、もう一人が一番端まで引くために左端の窓を開けて身を乗り出して。

 戸袋の方に行ったのが、私の先輩だったんですけど。窓を開けて、戸袋に手を入れようとした途端に、バーンッ! て、雨戸が中から飛び出してきたんだそうです。咄嗟に体を引いたんで被害はなかったんですけど、その雨戸、勢いのまま真ん中の雨戸にぶつかって、それに押されて、反対側にいてちょうど身を乗り出した同級生にぶつかっちゃったんだそうです。真ん中の子も無事逃げた。それはもう、すごい音がしたそうですよ。

 幸い、肩にあたって挟まれただけだったそうですけど。まあ、雨戸ってそんなに重いものじゃないしね。

 他の人間も見ていたから、先輩がやったんじゃないってことは証明してもらえて。で、大騒ぎになったから先生と、管理人さんも来たんですね。そうしたら、管理人さんが、ちゃんと注意書きに従わないからだ。て。

 暗くなっても閉めないと、雨戸が勝手に閉まろうとするんだそうです。その部屋だけ。で、身を乗り出したりすると、それ目掛けて雨戸が飛び出してくる。

 ちゃんと書いてあるだろう? て。

 管理人さん曰く、戸袋の中に妖怪でも住み着いてるんだろうって。で、暗くなっても雨戸を閉めてくれないと 出てこられないんで怒ってそんないたずらをするんだろうって。

『戸袋妖怪』って先輩は呼んでいました。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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