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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十一巡 人ではないもの
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第五十九話 神谷 読書

引き続き、四人で百物語を続けます。

 大学の時に、研修先で一緒になった東北の方から来たって人に聞いた話です。

 よくこういう怪談話の話で、最後にメンバーが順番に数字を言っていくっていうのがありますよね。五人でやったら最後に一、二、て、順番に言っていく。そうすると、五人でやったはずなのに、誰かが『六』という。幽霊が呼ばれて来たんだってやつ。こっくりさんとかと同じで、呼んじゃうダメなやつですね。

 まあ、そんな風に、話やなんかに誘われてくるモノはいろいろいますんで、その人の話も本当かなあと思ったんですけどね。現実に、今この塔にも、軽く千以上来てますしね。

 その人は、中学生の時に仲のいい友達に是非読んでねっとホラー小説を預けられたんだそうです。

 ホラーと言ってもそんなにエグイやつじゃなくて、十代の女の子向けの小説だったんだそうです。ホラーといいつつ表紙はピンクだったとか。本は結構なんでも読む人だったので、さっそく夜、二階の自室で読むことにしたんだそうです。

 六冊くらいだったからまとめて一気に読んじゃうことにしたそうです。文体も軽いから、一冊一時間もかからなかったそうで、二冊目にかかったのが夜の十時くらいだった。

 その本の中で幽霊が団体で駆け回ってるシーンにきたら、突然、ガサーッっと、外で、音がしたんだそうです。

 庭の木に何かが引っかかって落っこちたような音だったんで、窓を開けて外を見てみたそうですけどね、玄関の外灯や太陽光で光るライトなんかで庭は結構明るくて、庭の木の下なんかもよく見えたけど、特に何も落っこちていなかった。そもそも人が登れるほど大きなきではない。でも、風もないのにその細い枝が揺れてはいたんだそうです。

 でも、夜に猫がのぼるはずもないし、鳥だって夜活動する野鳥がいるような地域じゃないそうで。原因はわからなかった。

 とりあえず不審者はいなかったので、気にせずまた本を読み進めることにしたそうです。

 三冊目で、部屋の明かりが急に消えて幽霊が現れるってシーンになったら、今度はギーッて。自室のベッドに寝転がって読んでたそうなんですけど、部屋の扉がゆら~っと動いて、 そのまま、バタンって閉じたんだそうです。

 まあ、扉は開けっぱなしにしてたそうなんですけどね。人影はなかった、廊下も暗かった。夏場の習慣が抜けなくてドアを開けっぱなしにしていたけどすでに秋だったので廊下も部屋も窓は閉めてある。家族の足音もしない。

 なのに、開けっ放してたドアが、勝手に閉まっちゃったんだそうです。

 まあ、足音はしないので、不審者が侵入したわけじゃないからいいかと、また本に戻った。同じ幽霊がまた出てくるシーンで、今度は庭にドサッて何かが落ちる音がした。でも、もう三度目ですからね。今度は見もしなかった。

 三冊目が読み終わってから、窓と扉がきちんと閉まっていることを確認して、カーテンもぴっちり閉めなおして、四冊目にとりかかった。それが零時少し前くらい。

 四冊目の中で、幽霊から逃げて飛び込んだ部屋に閉じ込められた場面で、ぺたって、なんか、濡れた音が外から聞こえてきたんだそうです。

 部屋の外の、下の方。家の壁から、ぺたっ、・・・・・・ぺたって。上がってくる。

 本の方でも、なんか音だけで主人公に忍び寄っていく何かがいる。

 で、現実にも、ぺた・・・・・・ぺた・・・・・・て、家の壁を這いのぼってくる音が聞こえてくる。さすがに、怖くなって固まっちゃったそうですけどね。本を持ったまましばらくページもめくれずに固まって、耳をすましていた。

 濡れた物音は、彼女の部屋の窓に貼り付く音もたてた。ベッドが窓際だったので、すぐ脇で、べたって、確かに窓ガラスに貼りつく音がした。けど、そのまま上にのぼってって、屋根に到達したらしく、静かになった。

 カエルみたいに小さいやつじゃないし、だからと言って人間サイズでもなく、イメージ的には猫の肉球がカエル風になって登って行った感じだったそうで、想像したら怖くなくなったそうです。

 それで、更に読み続け、五冊目。二時ごろ、五冊目の佳境にかかって。いよいよ、化け物が姿を現すって場面。差し込んだ光で相手の顔が間近に見えて、ぎゃ~って主人公が悲鳴を上げる。そこで『ぎゃ~~~』て。本物の悲鳴が。隣りの部屋からしたんだそうです。

 隣りは妹さんの部屋。慌てて駆け付けたら、窓のそばのベッドから落っこちたところでへたりこんでいた。すぐに家族みんなが駆けつけてきて、妹さんは男の幽霊が窓に張り付いて いたって訴えて。お母さんがカーテンを開け放ったけど、何もいない。窓を開けても何もいない。まあ、寝ぼけたんだろうということになったそうですけど、妹さんは顔に顔サイズの体に手足がくっついた裸の男の幽霊だったと必死に訴えていたそうです。二頭身ですね。

 さすがに五冊目は諦めて、妹さんを自分の部屋に連れてきて一緒に寝たそうです。

 で、翌日。

 朝のおかず用に庭にパセリをとりに行ったお母さんが、騒ぎ出した。

 家の壁に、泥の痕がたくさんついているって。

 足跡とも手形とも判別できない何かが、庭をあちこち歩き回ってから家の壁に向かって、読書好きの人の二階の窓を通過して屋根に上がって、妹さんの部屋の窓を通過して、どうも途中で落っこちたらしく泥が途切れていて、真下の地面がちょっと荒れていた。

 前日は夕方まで大雨だったそうで、それがついたんだろうってことでした。

 女の子二人姉妹だったから、家族も不審者を警戒していて、そういう痕跡に気づかなかったらしいです。

 お姉さんの方の部屋の窓を先に通ったわけですけどね、そっちはまだ泥がたっぷりついていたみたいで、赤ちゃんサイズくらいの手と足裏の痕がついていたそうです。

 二頭身で赤ちゃんサイズの手足がついた裸のおじさん?

 とりあえず、見たくないなあと思って、本の続きは昼間、学校で読んで返したそうです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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