第五十四話 森山 メモ
うちの社長が若い頃、別の会社で働いていた時の話です。
人事異動できた若いのが、よく居眠りをする。
まあ、とんでもないやつですね。
当然、発見次第起こす。
でも、懲りずにまた寝る。
ある時、また居眠りをしていたんで注意しようと近づいたら、手が動いていた。なにやら 書き物をしていたんで、ひどい姿勢で仕事してんのかと、それはそれで注意しようと思いつつ手元をのぞきこんだ。
そうしたら『右のたな』と書いてあった。でもって、ペンを持ったまま寝てる。
なんだろうと思ったら、そばにいた社員が話してて。
『あったあった、やっぱり右の棚だったよ』
『あれえ、なんだ、そっちかあ』って。
ん? とは思ったけど、まあ、ぽかーんと一発、ぶん殴って、起こした。
で、とある昼休みに競馬の話をしていたら、また、そいつが寝ていた。
昼休みだからどうでもいいんだけど、手が動いているのが見えて、で、社長はそれをのぞきに行ってみた。
そうしたら、ひらがなで馬の名前が書いてある。
で、社長はこっそり、その馬を買ったんだそうですよ、馬券を。
見事、大当たりで。
けど、社長は、黙ってた。偶然だろうって。
で、ある日、電話がかかってきて、上司が自宅で倒れて意識不明だと。
それで、その日はその話で持ちきりだったんだけど、また、その若いのが居眠りを始めた。そのそばで、重体らしい、ヤバイかもな、と話している奴がいた。
それで、社長は、恐る恐る手元をのぞきに行った。
見れば、ペンを持ったまま居眠りをしている。まだ、手は動き出さない。
見守っているうちに、腕が持ち上がって、メモ帳にペン先がのった。
そうして、数字を書き付けた。
『15 15 15』て。
社長はぶん殴って起こして、問いつめて、けど、本人、よく寝てて落書きするけど、静かな寝言でいいでしょう~って。
自分で、落書きの意味を考えていないらしくて、 そのメモもくしゃくしゃにして捨てちまったんですって。
けど、その四日後、倒れた上司が死んだ。
十五日の午後三時過ぎに亡くなった、と家族から連絡が来た。
社長は、たぶん、十五日の十五時十五分に死んだんだろうって。
結局、その若いのはクビになったらしいです。
語り終えると、森山は一本の蝋燭の火を消した。
このあと三話休憩中が入ります。百物語のみをお楽しみの方は、しばしお待ちください。
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