表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第九巡 ほのぼの
80/143

第五十三話 岩田 活字

 友人の高校での話です。

 その友達、高校の時はずっと図書委員で、放課後とお昼休みに貸し出し係をやるのが委員の仕事だったそうです。二か月に一回くらい、どっちかの時間を一週間ぶっ続けでやるんだそうですよ。

 図書委員をやるだけあって、彼女は本が大好きで。で、自分も借りるのに本を物色していると、中が真っ白な本に時々行き当たるんだって。生徒から言われることもある。

 そういう本をみつけた時には司書の先生にそれを渡すことになっていて、理由を聞いても「わからないのよ」てことで。

 本を入荷すれば、必ず誰かしらパラパラ中をめくってみるものでしょう? そうでなくたって、中が真っ白な本なんて、そういう本だってんでない限りお目にかかったことなんか私はないです。けど、その学校の図書室でだけは、頻繁にあるんだそうですよ。

 で、彼女、冬の放課後に貸し出し係になった時に、その原因を知ったんだそうです。

 冬だから、暗くなるのも早い。でも、図書室だから、いつも明かりはつけっぱなし。節電の関係で窓際を消していることはあるんだそうで、その日はよく晴れていたので窓際がついていなかった。それで、放課後の当番に入ったときに窓際の明かりをつけて、図書室内を見回したときに、彼女、なんか変だな、て感じたんだそうです。

 すぐに、明かりにスイッチを入れる前に誰もいなかったはずのところで、立ち読みしている人がいるせいだって気づいた。

 その学校では、何年か前に制服がブレザーに変わったのに、その女生徒はセーラー服を着ていた。それは、被服室に飾ってある、以前の制服そのもの。何より、明かりをつける前は絶対にいなかった。

 幽霊だっ! て彼女は思ったけど、他にも生徒がいたし、何より明るかったし、それで、彼女は気づかなかったふりをして、貸し出しエリアに入ったのね。残念ながら、そこからセーラー服の生徒の姿は見えない。で、数十分後には、部屋を閉めるために鈴を鳴らした。五時半には閉まるんですって。最後に点検する時には、もう、セーラーの女生徒はいなくなってたんですって。もちろん、出て行っていないのにね。

 彼女、本の配置とかをだいたい記憶していたから、その幽霊がなんの本を読んでいたか、なんとなくわかっていたんだそうです。それでその本を探すと、ちゃんと棚に収まっていた。

 その本を開いてみたら、案の定、真っ白いページだったの。

 でも、いつもと違って前半だけなのね、白いのは。これはまだ、読みかけなんだな、と。

 で、次の日も、やっぱり明かりを点けたら現れた。で、同じ本を読んでいる。

 帰りに確認したら、更に白いページが増えていた。

 一週間の貸し出し係の間に、その本一冊と、続編が少し、消えちゃったんだそうです。

 司書の先生に頼んで真っ白なページの本で、処分していないものを見せてもらったら、中にはあとがきや解説だけ残っている小説や、 目次や中身の一部分だけ抜けている本なんかもあったそうです。

 ああ、これは、セーラーの幽霊が読んだところだけ、消えちゃうんだな、て。

 消えた分は、あの世の紙にくっついて、また読めるようになるんでしょうかね。

 こちらにとっては迷惑だけど、彼女は、死んだら幽霊さんが持ち帰った本をあの世で読めるかなあって、ちょっと楽しみそうな顔をして話してくれました。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ