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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第八巡 幽霊が出ない話
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第四十五話 旅行写真

 高校の時の話です。

 私は学校は芸能人が多く通う学校だったのですが、一応、修学旅行がありました。

 行ける人は行く、途中参加離脱自由という形でしたので、私は行きませんでしたが、旅行が終わった週明けに登校しましたら、クラスメイトが写真持ち寄って来ていまして、私ものぞかせてもらいました

 京都奈良方面でしたので、お寺や神社、古墳などの写真も多かったですね。当時はまだデビューしていなかったのですが、今は有名になっている人たちのプライベート写真もたくさんありましたね。もちろん流出禁止措置を取られていましたけれどね。

 私はこの仕事ですので、写真の中に不審なものがあると声がかかりまして。

 大半は、三つ点があれば幽霊に見えるというものでしたし、手ブレや被写体の速い動きなどでブレたものや、光の関係写ったものなどで問題はありません。

 おかげで、人に見せられない写真とやらも内緒で鑑定してくれと見せられて、いろいろな交友関係を知ることになりました。

 それは置いておくとして、一枚だけ、不思議な写真がありました。それは、お寺でも古墳でもなく、宿泊先のホテルの部屋で撮った写真でした。

 男子部屋の写真でした。大きな窓際に大勢で座って、ピースをしたり隣りの人の頭に角をつくって見せたりしている、普通の写真です。はじめは誰も気づかなかったそうなんですけれど、そのメンバーのうちの一人の男の子に好意を寄せていた女子が気づいたそうなんですね。

 彼の周りの腕の数がおかしい。

 ホテル内私服オーケーだったため、みんな、いろんな服を着ていました。半袖の人もいました。先ほども言ったように、隣りの人の頭に角を作っている人もいれば肩を組んでいる人もいる。大勢でもあるし、いたずらのために手を伸ばしたり縮こまっていたりするので不自然な手の腕の配置になっていてもおかしくはないのです。

 けれど、ようく数えてみると、数が多い。九人部屋の写真なのに、腕の数は十七。一人は撮影係だったので被写体は八人。十六のはずが腕が一本多かったのです。

 結局、その写真は被写体の男子の間では引き取り手がなくて、腕の数が多いことに気づいた女の子がもらったのだそうです。それで、私のところに持ち込まれたのですが、確かに一本腕が多く、彼女が気にする彼の肩に手を掛けようとしている茶色っぽい腕が半端な腕だとわかります。けれど、写っているだけで問題があるようには見えなかったので、彼女にはそのように申し上げました。

 その後、彼女は私と同じ大学に進学しました。

 ある日、食堂で会った際に、その時の写真を再び見せられました。

 彼女は、もらったはいいものの、部屋に親が入ってくることもあるので、飾っておくのはためらわれたそうで、しまい込んでいたのだそうです。恋心も知らず知らずのうちに薄れて行ったそうで、数日前に片づけをしていて久しぶりに写真を見つけたので、謎の腕を見てみたのだそうです。

 腕は、相変わらず一本多かった。けれど、彼の肩に触れようとしていた茶色っぽい腕は、隣りの男子の太ももを触っていたのです。

 私に見せてきたときは、その手は太ももをがっしりとつかんでいました。少し大きめの手でしたね。彼女が数日前に見たときは触っているなという程度だったそうで、ほんの数日の間にも移動していたのです。

 写真の上で移動してはいましたが、特に悪いものには視えませんでした。

 恋心もなくなっていた彼女は、怖いから引き取ってほしいと要望してきました。普段はそういったものを預かることはしないのですけれど、その時は食堂の食券回数券と一緒に引き取ることにしました。

 普段は自分でお寺や神社に持って行くように言うのですけれどね。食券回数券につられてしまった自分に悔みましたわ。その晩バッグから出した時には、その手は太ももから腰に移動していて、服の間に手を忍び込ませていたのです。

 私は、急遽、その写真をお経を書いた和紙でくるんで、クッキーの空き缶に入れて護符としていただいていたお札を載せておくことにしました。

 そうして翌日、護符をくれた知人にのお寺に持ち込んで処分をお願いしました。

 その時、手がどこに移動していたかは知りません。確認したお寺の知人は『おやおや、移動しているね。お嬢には見せられないね』と言っていました。

 最初肩に触れられそうになっていた方も、太ももをつかまれていた方も、テレビや雑誌で今も見かけることがありますが、特に健康上問題があった話は聞いていません。

 結果的に、回数券より高くつきましたので。

 一度決めた方針は貫くべきだと、学びましたよ。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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