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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
休憩中 第3回目
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「ごめんなさい」を言いたくて。

「親戚が、あなたを殺しました」

 二階に戻ると、神谷が相川の脇に立ち、言った。

 相川は、テーブルに載せた南瓜をなでながら、神谷を見る。

「あなたを殺した神谷冬治(ふゆじ)は、母方で言えば母の従兄(いとこ)です。父方で言えば、義理の兄ですね、異母姉の配偶者なので。家の関係で仕事をさせていれば、そちらの会社に入ることもなく、相川さんと会うこともなかったはずです。そうしていれば、あなたはそんな死に方をしなかったはずです。奥さんと娘さんと、仲良く暮らせていたはずです。取り返しのつかない結果になってしまい、本当に、申し訳ありませんでした」

 神谷が、深く頭を下げる。

 母の従兄。もしくは義理の兄。

 相川は、少し考える。

 自分の親の従兄弟。親は地方から東京に出てきて結婚し、東京に親戚は出てきていないので、誰も知らない。

 義理の兄。相川には兄と妹がいる。妹は関西におり、配偶者はいるが、冠婚葬祭以外でその配偶者に会うことはない。妹とも親が亡くなってからは法事でしか会っていない。そもそも義理の兄なんぞは、こちらで選べるものではない。

「うん、大丈夫。神谷さんが謝らなくていいですよ」

 相川は、南瓜を抱っこしながら言った。

「本人からいろいろ聞いてます。死んだ人を悪く言いたくはないけど、彼も意固地になってたみたいだしね。家を出たなら出たで、割り切れていればね」

 南瓜の前足をつかむと、相川はその足で神谷の頭をぽんぽんと叩く。

「私も彼にいろいろ言ったけど、全然通じなかったんだよ。ほら、頭上げて。そんな遠い親戚のことで謝らなくていいの。実家のことだとしたって、偉い家長さんがいるんでしょ? しかも家長さんて冬治さんの弟なんでしょ? そういう人を通りこして謝る必要ないよ。家としてはね、その家長さん、私の葬式に来て土下座してたよ。嫁も言ってたよ。いい大人なんだから、責任はすべて本人にあるって。この場合、怨霊が悪いんだし。もう死んじゃったんだから、どうにもならないしね」

 更に南瓜の足で神谷の頭をつつく。さすがに、神谷が姿勢を戻した。

 その向こうで、森山が手を挙げる。

「それで言ったら、俺もあれなんだけど。母親の配偶者だから、義理の父?」

「はは。ほら、被害が広がっちゃうよ。そりゃあ、生きていられたら一番だよ。でも、もう死んじゃったしね。恨んだって、どうにもならないし。妻子も、前向きに生きられるようになったみたいだし。そういうの、見届けられたから。私は、すでに一度成仏したはずの人間だからね。いろいろ通り越してるんだ。今回、どうして呼ばれているのかよくわからないけど、チャンスがあれば、私は途中で抜けて上がらせてもらうよ。なんか、上がれるような気がするんだよ。呼ばれてるっていうか、自分の居場所はここじゃなくて、あっちの方なんだって。だから、心配しないでいいよ」

「私の場合、神社育ちで神道です。私自身、神主の資格を持っています。こちらの考え方だと、亡くなられた方は神に祀り上げて先祖として子孫を見守る神様の一人になるんです。ずっとそばで見守られていて活性化したのか、お盆に戻ってそのままになったのかは、宗教の話なのでおいておきますけど。普段視えない人に視えるレベルになっているのは普通ではないです。ですので、途中でも良い状況になれそうなら、そうしてください。状況次第で、私もお手伝いします」

 確かに、成仏は仏教用語だ。そばで見守る子孫専用の神様という考えも悪くない。お盆の送り火がなかった結果、現状があるのは確かだと思うが、お盆だからといって戻って来たという認識はたしかにない。死後の世界のことは、死者にもわからないことがあるらしい。

「お手伝いが必要なときは、お願いね。もういい時間だし、お茶する時間なかったね。もう、始めようか」

「はい」

 二人が話している間に、田中と岩田が二種類のおやつを配ってくれた。羽生が南瓜のおやつゴミやおやつをまとめていた包みをダンボールに入れている。森山は、神谷の腰を押して席に戻らせている。

 自分がここに呼ばれた意味はなんなのだろう。

 何か、役割があるのだろうか。

 まあ、何もなくてもかまわない。

 ボーナスタイムは満喫できた。

 かなうならば、祈ろうか。

 彼らが、自分がここに来たがために、万が一の事態に遭わないように。

 無事に、この会を終えることができるように。

 自分は、最後まで見守ることが、できないだろうから。

 相川は、南瓜を抱いて席を立つ。

 森山が扉の外に出したダンボールのうえに、ちょこんと南瓜を座らせた。

 そうして、頭をなでる。

「元気でね」

 相川が戻るのに合わせて、森山が扉を閉める。

 各自が、席に着く。ペットボトルのお茶を慌てて流し込む者もいる。

 照明が、すうっと落とされていく。


 百物語、第八巡に入る。


休憩終了。次から百物語を二巡やります。

引き続きよろしくお願いいたします。

是非、ブックマーク、感想、評価を!

予定では月末まで毎日更新ですが、できる限り続けます!


相川が直に神谷に触れると、お札を仕込んであるので一気にパワーダウンします。

メンバーで神教の考え方を持つのは神谷だけですね。他の宗教の考え方も知識としてはもちろん知っています。

羽生は仏教寄りだけど宗教を学んではいるので、いいとこどりしつつ、相手にあわせて解説することができます。

ほかのメンバーは、正月には初詣に行きクリスマスにはケーキを食べ、観光地では神社もお寺もごちゃまでぜ行く、あまり宗教を気にしない方々です。


成仏というか除霊というか守護霊化というか。まあ、宗教で考え方違いますよね。

個人的に、八百万の神々という考え方は好きです。なんにでも神様が宿っている。そう考えると、草花にも物にもやさしくなれる気がします。

お日様がなければ人類いないし。すべての仕組みがうまくいっていて、そのおかげで少なくとも自分は今生きているので。良いも悪いもコミコミで、あるがままを否定せず生きたいですね。


理想の話ですがね、そんなに人間できてませんですけどね、わたし。

正月には地元の神社に行きお盆には迎え火と送り火でクリスマスにはケーキを食べるわたくしです。

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