問答無用。みんなでお外に行きましょう。
休憩三話です。百物語のみお楽しみいただいている方は、三日間休憩になります。
よろしくお願いいたします。
森山の話が終わり、蝋燭が消されて室内の暗さが増す。語り部たちの前にある蝋燭立てには、それぞれ、まだ四本の蝋燭に火が灯っている。
別に、人魂がふよふよしだすわけでもなければ、ラップ音が鳴り響くわけでもない。
「お疲れ様でした。二巡終わりましたので、休憩に入りましょう」
神谷の言葉で、一同、緊張から解放された。
すぐに、ガタン、と扉が音を立てた。
既に立ち上がっていた森山が、すぐさま扉を開く。
廊下には、ダンボールと、その上に三毛猫が一匹。
「これは、南瓜がノックしてるとしか思えないねえ」
周りを見回す森山の脇で、岩田はつぶやいた。
廊下に人気はない。Staffonlyの扉も動いた気配はない。
「間髪入れずに開けたのになあ。無駄か」
岩田の席は扉に近い。会が始まって間もない頃、かすかに廊下で音がした。はっきり言い切れるほど耳に自信がないので言わないが、もしその頃に置かれているのであれば、どんなに急いでも管理人に会えることはない。そもそも、管理人ではなく石井が置いていると思う。
森山がダンボールを持ち上げるところで、岩田は南瓜を掠め取った。
「森山さん、おやつおやつ」
相川の言うおやつは南瓜のおやつだろう。まあ、今回もおやつ係は譲ってやろうと、今のうちにと南瓜を堪能しつつ岩田は思う。
森山がダンボールを置いて開くと、前日と同じく一番上の真ん中にメモがある。
『御休憩用。
南瓜にもおやつをあげてください。
ゴミ等不要なものはダンボールに戻して
南瓜と一緒に廊下に出してから
再開してください。
管理人』
前日と全く同じだ。
森山がダンボールの中身をすばやくテーブルに広げて出す。底から課題のメモをつかみ出すと、先に置いてあったメモに並べた。
『⑧ 幽霊が出ない話』
『⑨ ほのぼの』
メモは百物語の課題のはずなのだが。
「おやつはセルフね。さて、外のトイレ行く人ー?」
森山が、メモを見に来た神谷の腕に腕を絡める。
「はーい」
岩田は、南瓜のおやつをゲットした相川の前に南瓜を置きながら、元気に返事をする。
「僕も行きます」
田中も手を挙げ、早くも非常口の壁に手をかけている。
「手伝うわ」
羽生が田中の横につき、一緒に非常口を押し開けた。
「留守番は任されました」
相川を置いて、神谷を前後で挟んで三階に行き、エレベーターを呼び、乗り込んだ。
「そういや、今日、車か?」
「はい。一度門を出て裏門から遊園地に入りました」
問答無用とばかりに引っ張ってこられた神谷が、森山に問われてようやっと声を出す。まだ森山に腕を組まれたままだ。
「つまり地下を通ってないってことか。なんかさあ、さっき一階に入ったとき、すげえ床下が重く感じたんだけど? なんかあるのかね?」
「そうですね。とりあえず、地上に出るまで黙って走りましょう」
「賛成」
神谷の返事に、羽生が同意する。
地下一階でエレベーターのドアが開く、通路に明かりが点いているのに、照明の周りしか明かりがないかのようにねっとりと暗かった。
神谷がすぐに通路に駆け出し、非常灯の消えた非常口を開く。開くとすぐ後ろにいた森山を先に行かせて、羽生、岩田、田中と送り出してから、扉を閉めて後を追った。
森山が先頭になって地上の扉を開け、外に出る。
蒸し暑い中に駆け出して、地味に長い距離に、岩田と羽生は息を切らしていた。
「結局、来たんですね、森山さん」
神谷が、睨み上げるようにして言う。
「中途半端はちょっとねえ。まあ、情報収集はしてきたよ」
羽生が手を挙げる。
「私も真里亜ちゃんに話を聞いたわ」
「・・・・・・マリア?」
「ひかりさん。真里亜は芸名」
「ゴスロリさんね。私もちょっと聞いた。あと、森山さんからも」
「僕もゴスロリさんから母の話を聞きました」
誰がどんな話をどこまで聞いたかはわからない。しかし、それをすべて突き合わせている時間はない。
「田中さんのお母さんの話、というのは。二年前、巻き込まれてた?」
森山が最低限の確認、とばかりに、田中に尋ねる。
「そう言ってました。ひかりさんが、全部見てたって、現場で。僕は、海に落ちて死んだと思ってたんですけど。父にはもう話したって言ってました」
「えーと、つまり、今回のメンバーは埼玉の神社の殺人事件がらみの人たちってことで、合ってる?」
森山が確認する。
「真里亜ちゃんはそう言っていたわ。神谷さんは『七縛り』というそこの神様の器になれる人。森山さんと田中さんは母方がその血筋の人。岩田さんは今の神様の器、神宮の恋人で、相川さんは二年前巻き込まれて殺された人で、私はおまけの無関係な霊能者。管理人さんと真里亜ちゃんも七縛りだって言ってたわ。管理人さんは、地下で何かをやってるみたいね」
羽生が大雑把に回答する。
「で、何をしたくてこの会をやってるのかよくわからないんだけど。ただ、三日かけて百物語をしてくれたらいいんだってことだったけど」
そう言って、岩田は神谷を見る。全員の視線が神谷に向く。神谷は、少し嫌そうに腕を組んでいた。
「怨霊の話も聞いた。憑りついて殺人させるとんでもないやつ」
言って、森山は追加する。
「俺の母親は、三十年前にそいつに憑りつかれて親父と、親戚殺したって聞いた」
田中が、驚いて森山を見た。
「二年前も別の人が憑りつかれて、神谷さんのお姉さん夫婦を殺して、相川さんも殺して、神社でも三人殺したって。神谷さんも大けがしたんだって聞いた」
岩田が追加する。森山から、何百針も縫うけがをしたと聞いた。
「あの、うちの母とか、殺されるとこに、神谷さんいたけど、大けがしてて、助けるとか無理だったって、ひかりさんが言ってました。ひかりさんも、見てるしかできなかったって」
だから、気にするなと、田中は言いたいのだろう。
「あ、私、ひかりさんにお祭りに誘われたんだけど、行っていいもんなのかな?」
岩田の問いに、神谷が瞬きをする。それまでの話と種類が違うことは重々承知だ。岩田は、空気を読んで空気を壊すのが得意技なのだ。
「冬彦さんの姿を遠目に見られるって。タイミング合えば、話できるかもしれないから受付でひかりさん呼んでって言われたんだけど。あ、神谷さんは忙しいから、自分にって言ってましたよ」
神谷は、岩田をじっと見て、ようやく、口を開いた。
「最後に奥に戻った後なら、話せるかもしれません。それだと帰りのバスも電車も終わっちゃうんで。うちに泊まるといいですよ。言っておくんで」
神谷はそう言って、黒い塔を振り仰ぐ。
赤い屋根。黒い胴。周囲は日が沈んで、真っ暗になる途中の薄闇だが、園内の照明がまだ明るい。
まだ、閉園まで少しある。子供たちのはしゃぐ声が聞こえている。
休憩は3話入ります。
キャラが勝手に動き始めました。
慌てて予定を組みなおしたりしております。
勝手に動き始めると、自分のキャラになってきたなあと感じる、この矛盾(笑)
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