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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
休憩中 第1回目
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次の課題はなんですか?

休憩に入ります。

 森山の話が終わり、蝋燭が消されて室内の暗さが増す。語り部たちの前にある蝋燭立てには、それぞれ、まだ三本の蝋燭に火が灯っている。

 別に、人魂がふよふよしだすわけでもなければ、ラップ音が鳴り響くわけでもない。


「お疲れ様でした。二巡終わりましたので、休憩に入りましょう」

 神谷の言葉で、一同、緊張から解放された。

「地味に疲れるー」

 岩田が、テーブルに突っ伏した。

 そこで、部屋の三つのライトに明かりが灯る。

「おお、やっぱりどっかに監視カメラ?」

 相川がきょろきょろしたところで、ガタン、と扉が音を立てた。

「そういえば、軽食とか用意してくれる話だったっけ」

 森山が席を立ち、扉を開ける。

「おお?」

「ん? 何」

 森山が通路を見てつぶやくのに、岩田が席を立って見に行く。

 田中も、荷物持ちの出番かなと、そちらに向かった。

「ほお」

「おお?」

 岩田も田中も呻く。

 廊下には、ダンボールが置いてある。そして、その上に、三毛猫が座っていた。

 無言で、岩田が猫を持ち上げる。

 田中がそうっと、その下のダンボールを持ち上げて室内に持ち込んだ。

 田中がテーブルに置いたダンボールを、扉を閉めた森山が開封し、一番うえにあった紙をテーブルの真ん中に置く。


『御休憩用。

 南瓜にもおやつをあげてください。

 ゴミ等不要なものはダンボールに戻して

 南瓜と一緒に廊下に出してから

 再開してください。

                管理人』


「南瓜、は、猫の名前ですかね」

 相川が、猫の両脇を持ち上げている岩田に寄っていく。

「あれ、これオスですね、三毛猫なのに」

「幸運の三毛猫?」

 三毛猫はほぼメスで、オスは高い値で取り引きされている。そう岩田に説明され、みんなにオスと確認された南瓜は、「うにゅ~ん」と妙な鳴き声をあげた。

「ごめんごめん」

 岩田に床に下ろされ、猫はその場に座って人々を見回す。

「猫のおやつはこれかな?」

 相川が棒状のパッケージをダンボールから取り出し、南瓜に見せた。南瓜はそれを見ると相川の足もとに移動する。

 見下ろす相川。見上げる南瓜。

「わ」

 急に飛び上がった南瓜が、相川の胸にへばりついた。

 うらやまっ! しいっ、と田中は胸の内で叫ぶ。猫に胸に飛びつかれるとか、うらやましすぎる。

「待て待て待て」

 薄いワイシャツに爪を立てて張り付かれた相川は、必死で南瓜を引っぺがす。

「なにそれっ、うらやましいいいいい」

 岩田が口に出して騒ぐ。

 南瓜は相川の手のおやつに首を伸ばしている。

「相川さん、おやつ係ですね」

 神谷に言われ、

「しょうがないなあ」

 と、相川が猫を抱いて自席に戻った。しょうがないと言いつつ、交替を申し出る岩田に対し、口調だけは丁寧ににやにやと断っている。

「次のテーマは?」

 羽生がダンボールの人垣の外側から問うのに、森山が近くにいた田中と神谷に差し入れの包みを持たせてから、両手に一枚ずつ、メモをつかみ出した。

『③ 人ではないもの』

『④ 呪い』

 皆に向けられた紙面に、岩田が首をかしげる。

「あったかなあ、ネタ」

 羽生がテーブルから先にあったメモをずらして並べなおし、森山が新たなメモを追加する。

テーブルの中央で、四枚の紙片がその上辺で四角を作った。

『① 悪い霊』

『② 生きている霊』

『③ 人ではないもの』

『④ 呪い』


 差し入れを持たされた田中と神谷で、おやつを配分する。何気に若い二人に渡す辺り、総務副部長のお手並みなのかもしれない。一番年下だけに働かなければと思いつつ、うまく動ける自信がなかった田中は、地味に森山ファンになりかけている。自然に先に配り始めた神谷の詐欺師感もちょっと薄らいだ。神谷が煎餅を、田中が饅頭を一個ずつ配っていった。

「住み込みの管理人が地下にいる、って、石井さんが言っていたわね」

 羽生が言うのに、皆でメモを改めて見る。

「管理人室に監視カメラの画像が並んでいるのかしらね」

 岩田が楽しそうに言う。監視されている側になるのだが。岩田はなんでも楽しそうだ。

「それは石井さんではないということですね。誰か会ってます?」

 神谷の問いに、うなずく者はいない。

「おまえは管理人さんのペットなのか?」

 相川の問いに、南瓜は答えずにおやつをなめ続けている。

「いったいどこにカメラがあるのかなあ」

 きょろきょろする岩田に、

「これじゃないですか」

と、神谷が卓上を指さす。

 三本の火が灯る、蝋燭立てだ。

「上で音声。裏側で画像みたいですね」

 よく見ると、飾り気のない蝋燭立ては左右に六本の枝を伸ばしているのだが、真ん中の軸の上が少しだけ上に伸びて椅子側に傾げており、そのてっぺんに小さな溝が作られている。そして、一番上で枝分かれしている根元の溶接跡がごてごてとあるところに、小さなレンズがはまっていた。

「この蝋燭立て、固定されてますね。向かい席辺りの人に合わせてあるんでしょう、カメラ。椅子が重くて動かないから、事前に準備できたんでしょうね」

「多少身長の誤差はあるだろうけど、極端に背が高いのも低いのもいないしなあ」

 おおむね、全員が百六十から百七十ちょいくらいの身長枠に入りそうだ。

 神谷と森山の言葉に、岩田がしゃがみこんでテーブルの下を見る。

「これ、真ん中の脚に見えるのは、ケーブルの束だわ」

 更に、テーブルの裏をのぞき込む。

「本当は三角テーブルの真ん中は三角に開いてるんだわ。そのうえにこの蝋燭立て固定してケーブル用の穴を開けた天板を載せてるんですね、それで真ん中で電源ケーブルとLANケーブルをまとめて下ろしてる」

 田中がのぞくと、床の上にスイッチングハブと延長コードの差込口があり、それぞれ大量に突き刺さっていた。

 蝋燭は最初に神谷がつまんで消していたので田中も真似し、皆同様に消していたのだが、一番手足が短そうな岩田は前かがみになって手を目いっぱい伸ばしていた。土台のテーブルの真ん中の空き三角スペースを利用してケーブルをおろすために、遠くにあったものらしい。

「有線なんですね」

「まあ、失敗したくなければその方が安心ですよね」

「電波障害とか、霊障あるかもしれないし?」

「一番上の板は厚み薄いんですね、材質はいいけど。サイドはきれいになってるし、最初からこういうオーダーメイドの可能性もありますね」

 会社勤めの四人が仕組みを解明していく。田中は、感心しつつ眺めていた。自宅はWi-Fiだし、有線が役に立つというのがよくわからないが、霊障で無線がダメになることがあるのだろう。

見れば、羽生がうんうんと静かにうなずいている。テレビに出る霊能者がうなずいているということは、そういうものなのかもしれない。


休憩は3話です。

百物語だけを楽しみたい方は、飛ばしていただいて結構です。

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