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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十八巡 無題
133/143

第九十二話 冬太 人形

 某病院での出来事です。

 家の火事で、家族、四人だったかな? 全員救出されたものの重傷だったので、各病院に分散して運び込まれました。うちの病院には、大やけどを負った女の子が運び込まれて来ました。

 その子は大きな人形を抱いたまま運び込まれてきました。女の子は衣服も髪も燃えて、背中側は大やけどを負っていました。でも、人形をしっかりと抱きかかえていて、顔や前面は見えません。顔や腕の皮膚に人形の衣服が焼き付いてしまっている部分もあって、見えない部分が多かったです。

 意識があったその子はなかなか人形を離してくれなかったそうなんですが、その後の治療の過程で人形は引き離されて、そうして確認したところ、その人形のおかげか、女の子の体の前側はほぼやけどなしで済んだようでした。

 人形は一時保管することになって、僕に任されたんです。バスタオルにくるんでおくことにしたんですが。その前によく見てみると、背中側は女の子が抱いていた腕の部分から下は服もきれいに残っていましたが、後頭部の髪や体、手は黒焦げになっていました。

 一応手指はちゃんと残っていましたが少し溶けていて、顔も右の頬だけ溶けてしまっていましたが、おおむね大丈夫で、前面側もだいたい問題なかったです。

 その後、女の子も大やけどを乗り越えて回復していきました。

 それで、人形を返してほしいと女の子が言っているという話で、看護部から病院内で捜索願いが出ました。といっても、そもそもの受付が僕でしたので、事務方で預かってますよ、と。それで、病棟のナースステーションに届けに行きました。

 看護師さん方の前でバスタオルを広げて見せたら、看護師さん方がびっくりして。

 別に、人形は預かったときのままでした。背中側が焦げてて前面は比較的綺麗。

 どうしたのか尋ねたら、女の子とほぼ同じやけど状況だったのだそうです。

 女の子も、右の頬が重傷で皮膚移植予定。背中側は移植済みで、腰から下はやけどなし。

 手指のやけどはまだ引き攣れている。

 まあ、あとはおまかせして戻ったんですが、後日談としては、看護師さん方でお人形にもガーゼや包帯で治療をしてあげて、お裁縫が得意な人が病衣とお揃いの人形服を作ってあげた。スカート部分は無事だったので、そこはスカートに加工して、上半身だけ病衣。髪も根本の方を残して縮れて溶けたところはカットして、帽子をかぶせた。

 そうして届けてあげたら、女の子は喜んで、一緒によくなろうねって、元気に治療に向かってくれるようになったそうです。

 退院するときに人形を抱いた女の子を見かけましたけどね。

 帽子も、髪型も、洋服もそっくりでしたよ、人形と女の子。帽子付きのかつらだったと思いますけど、人形にも同じものを作ってあげたんでしょうね。頬の手術跡まで似ていました。

 人形の頬は穴があく寸前だったと思ったんですけど、ほぼでこぼこなくなってましたね。誰かが直したんだとは、思いますけどね。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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