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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十七巡 なか
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第八十九話 亜希 冷蔵庫

 正直、私は疑ってるんですけどね。次に話すけど、私も似た経験をしているので、もしかしたら本当かもと思って、話します。

 昔、同僚に聞いた話です。

 その同僚の親友の話だと言っていました。

 同僚とその親友は中学高校と同じで、卒業後の進路は分かれたけど、月に一度は会うし旅行に一緒に行ったりしていたんだそうです。

 住んでいる場所が違うので、もっぱら外で会っていたそうなんですけど、旅行の前日に親友のアパートに泊まってから出発することになった。

夏休みを利用して三泊四日。同僚は自室の食材を使いきって来たのに、親友の部屋に行ったら、まだ、バナナだの食パンだのいろいろ、使いかけがたくさんあった。

 大丈夫なのかと問えば、大丈夫だと言いながら、夕飯に食べきれないほどのから揚げがテーブルに載り、ご飯も炊かれていたんだそうです。

 心配しつつ、持ってきたビールをしまおうと冷蔵庫を開けたら、そこだけは扉や引き出し以外はおおむね綺麗になっていた。不思議なことに、開けた瞬間、から揚げの匂いがしたんだそうです。

 彼が持って行ったビールを飲みながらの夕食。彼が来る時間に合わせたのか、から揚げも熱々でした。しかし、見れば、台所に天ぷら鍋などない。

「これ、買ってきたのか?」

と聞いてみたら、いや、母が作ってくれた作り立てだ、と。ワンルームの部屋に、お母さんはいません。

「今までいたの?」

と聞いてみても、いや、実家だよ、と言う。

 わけがわかりません。

 それで詳しく聞いてみると、冷蔵庫が実家の冷蔵庫と繋がっている、と。

 確かに、先ほど冷蔵庫からから揚げの匂いがしました。

 彼は、いつでも実家のごはんを出来立てで食べられるのだそうです。

 そんなわけあるか、と思ったのですが、ビールを取りに行ったら冷蔵庫に違う種類のビールも追加されていて、サラダまで入っている。確かにさっきはなかったのに。

「だから、出かける前に腐りそうなものは全部冷蔵庫に入れておけば、実家でなんとかしてくれるんだ」

と彼は言います。

 疑いつつ、食べ残したものをすべて冷蔵庫に入れ、朝起きて朝食の予定時間に冷蔵庫開けると、食べ残しは消え、ベーコンエッグととサラダとみそ汁の鍋が入っていた。

「おまえ、まさかこれで実家に帰ったりはしてないよな?」

 と聞くと、残念ながらサイズが足りないので入れないとの返事だったそうです。

 出かける前に洗っていないお皿と鍋、旅の間に腐りかねないバナナなどを冷蔵庫に入れていくというので見ていると、開けたら封筒が入っていた。旅行のお小遣いと手紙だった。

『気を付けて行ってらっしゃい。親友君にもよろしくね。母』

と書いてあったそうです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


百物語第十八巡に続きます。

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