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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十七巡 なか
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第八十八話 冬太 ジャンク品

 妻の伯父が亡くなった後、家の整理を手伝いに行ったときの話です。

 妻子もいたんですが、伯父は物をいろいろ集めるのが趣味で、家族だけじゃとてもじゃないが片付けきれないと、親戚一同で手伝いに行ったんですよ。

 地方の典型的なお土産物から、古い電気製品だのゲームのカセットだのレコードだの、焼き物だのなんだのかんだのね。

 部品取り用なんでしょうけど、同じ電気製品が複数あるのが普通でしたね。ラジカセとかビデオとか、今は使わないですよね。その同じのが三つ四つずつあるんです。部品取りと割り切ってたからか外観は汚れ放題で、もはやジャンク品としてただでも引き取ってもらえないものがほとんど。わざわざリサイクルショップのジャンク品コーナーから買って来てたそうですから、価値なんかありませんよね。

 結局、一万円以上の価値があるものは一つもなかったと思います。良いものはすでに家族がとりわけていたんだとは思いますけどね。とにかく、ジャンク品としか言いようのないものが半分以上。それが、八畳二間の離れと使われなくなった農業用倉庫にぎっしり。

 結局、半年くらいかかりましたかね。親戚で入れ代わり立ち代わり休みの時に通って。昼食と夕食を報酬にね。

 気に入ったものは持って行っていいとは言われていましたけど、僕は手のひらサイズの招き猫を一個もらったくらいですね。新品で箱に入ったままでかわいそうだったので、連れて帰りました。

 そのジャンク品の山の中には、まあ、もともとの持ち主の思い入れが深かったのかなってものもありました。ケース入りの三味線なんかは、法事の時にお寺さんに相談するように言いましたよ。別料金で持って行ってくれたそうです。

 一番やっかいだったのが、パソコンですね。家庭用が出て来た初期から持っていたらしく、歴代のパソコンがずらりと。しかも部品取り用とかそんなんで、基盤とかハードディスクとかマウスとかまあ、一間(いっけん)の押し入れぎっしりくらいありましたね。妻子が言うには写真やビデオのデータがその中のどれかに入っているはずだとかで、それ専門でパソコンが得意な親戚が一人、半年くらい漁ってましたね。

 苦労話はともかく、その中に、初期型家庭用パソコンがありました。多分当時は給料三ヵ月分くらいしたんじゃないかなって話でした。その頃はデジカメもなかったので、特に取り出すデータはなかったんです。その頃のデータ保存方法はカセットテープですし、今の写真は数メガバイト単位でしょうけど、当時は万事がバイト単位です。

 一千二十四バイトで一キロバイト。一千二十四キロバイトで一メガバイトです。メガがギガになって今やテラですからね。

 通信だって初期はひらがな一文字二バイトだから、て気を使って『あけおめ』とかって短縮してメールを送ってたそうですよ。その通信もごく初期がアマチュア無線界隈で始まってたかどうかって頃のやつですね。

 そのパソコンに詳しい親戚に聞いた受け売りなんで詳しくわかりませんけど、おそらくそれは昭和五十年から六十年代くらいに製造されたパソコンだろう、と。つまり、五十年くらい経っているパソコンです。経年劣化で色はだいぶ悪くなっていましたけど、大事にしていたようで、ちゃんと通路沿いに布カバーかけてあって、時々磨いていたのがわかる感じでした。ご多分に漏れず、それも三台ほど予備機がありましたけどね、予備機は後ろにただ積んでありました。そのメイン機は巨大なモニター、昔のブラウン管の、奥行きの方が長いくらいのモニターにも、カセットレコーダーにも繋げて飾ってありましたよ。

 家族の話では、よくそのパソコン関係を保管しているエリアで話し声がして、語りかけていたみたいだと。その相手が、そのパソコンじゃないかということでした。

 付喪神(つくもがみ)にね、なりかけている感じだったんですよ、それ。

 百年で精霊がついて付喪神化するとかいうじゃないですか。五十年といえばまだ若いし、そもそもなんでもなるわけじゃない。

 でも、具体的に何が視えるわけじゃないんですけどね、そのパソコンは、周りを見ていたし、聞き耳も立てていた。近くで話していると、揺らいだり、カセット入れるとこがパカンと開いたりするんです。

 さすがに、お寺さんもパソコンは断ったそうなので、それだけはまだその親戚の家にありますよ。

 妻子が残すと最終決断したんですけどね。パソコンの前で話していて、良かったなあ、ってパソコンに詳しい親戚が声を掛けたら、パカンて、カセットの口が開いたそうです。

 まあ、いつまで本当に残しておいてもらえるか、わかりませんけどね。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


次回は冬季回ですので、別話が入ります。

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