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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十七巡 なか
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第八十七話 冬沙 バス旅行

 ご近所のママ友のお母さんから聞いた話です。

 昔、そのお母さんが子育てをしている頃、隣りの地区の幼稚園で慰安旅行、みたいなものがあったんだそうです。

 夏に、母子と幼稚園の関係者で一泊旅行に出かけた。一緒のバスで出かけて牧場で過ごし、牧場から出る時にバスは親と子で別々の車両になった。

 夜は、母と子は別々にお泊りだったんだそうです。ホテルで分けると子供が嫌がったりするので、バスに乗る段階で別れたんですね。

 ママたちはママたちで宴会・・・・・・交流をして、子供たちは子供たちで先生方と一緒に大部屋にお泊りをする。

 希望者のみ参加で、参加者は三十人くらいしかいなかったそうです。

 そうして翌朝、女の子が一人、バスの中で発見されたんです。はだかで亡くなっていたそうです。暑くて脱いだんですね。

 バスは夜の間は大型車用のホテルから離れた駐車場に停められていた。おそらく、皆が降りる時に寝ていて、最後に車内点検がなされなかった。そして全員参加ではなかったので、いなくても気づかれず、子供たちの人数も確認されず、お母さんは牧場から翌朝まで別行動になっていた。ぐずるといけないからって、子供たちの部屋に行くのは禁止されていたんだそうです。

 今もたまにニュースになりますけど、昔からよくある事故なんですね、車中取り残しによる熱中症。パチンコ屋の駐車場も問題になっていましたけど、こちらはその業界が徹底したのでほぼなくなったようですけれど、保育園や幼稚園の送迎バスでの事故もまだ時々起きてますね。忘れたころに起きる。

 そのママ友のお母さんによると、その事故のあと、まるで試すかのように、同じ市内の送迎バスで頻繁に子供の取り残しが発生しそうになったのだそうです。

バスで、子供が寝てしまうんです。

 保育室などで人数を確認すると足りない。慌ててバスに行くと寝ていたり、子供が大泣きしていることもある。

 幸い、事故があったばかりなので出欠確認や点呼を徹底していて、だいたい十分以内に発見されていたそうです。

 車内点検で発見されることもあって、最終的にその市内で保育園と幼稚園全体で対策を決めることになって、送迎バス車内の徹底確認が、運転手さんと園長先生のダブルチェックになったんだそうです。

 運転手さんがまず確認して園長先生に報告。園長先生か誰か職員がもう一度改めて確認してから、ようやく運転手さんはバスに鍵をかけていいことになったんです。

 それでも、運転手さんが確認したあと、何故か園長先生が確認すると寝ているということがあって、バスの乗車下車のチェック表やらなにやらいろいろチェック項目を増やして、チェック表にも過去に亡くなった子がいますよ! とか、月一回は園長先生から職員全員に再度周知するとか、とにかくいろいろ対策したんだそうです。

 その成果か、子供がバスで寝てしまうこともほぼ無くなり、以降数十年、その市内ではその対策が継続されているのだそうですよ。ママ友の兄妹のお子さんの送迎を今、そのお母さんがしているそうで、昔話をして確認したら、今もやってますよ、ご安心ください、と教えてもらったのだそうです。

 最初から事故は起きない方がいいですけれど、起きてしまったなら、本当に、徹底的に、対策をしてさらに継続してもらいたいですね。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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