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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十六巡 死者の主張
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第八十四話 冬太 確認

 高校の時の部活のOB会で聞いた話です。

 数日前からドタキャンが相次いだそうで、穴埋めにメンバーの友人知人が結構紛れ込んでいたんです。その中に、後輩の友人の医大生がいたんです。

 その子に聞いた話です。

 その子は、実家が病院で一人娘だったので、小さい頃から医者を目指していたんだそうです。それで、近所の塾にも通っていて、そこで、同じように 医者を目指す男の子と仲良くなったんだそうです。

 中三の夏には自転車で行かなきゃいけないところまで夏期講習に通った。その塾が市内にいくつかあって、夏期講習は一か所でまとめてやっていたんですね。二人一緒だったから、自転車通いも全然苦にならなかったんだと言っていました。

 なのに、夏休みも半ばを過ぎて、自転車塾通いにもすっかり慣れた頃、二人は交通事故に遭ってしまったんだそうです。

 車通りの少ない道を二人並んで走っていたら、珍しく車が来たので彼氏が前に、彼女が後ろに縦になって避けたそうなんですけどね。

 彼女の脇を車が通りすぎたところで、ゆるいカーブになっていて。

 車がゆるくハンドルを切ったその前に、彼氏の自転車がすーっと吸い込まれていった。

 大きな音がして彼氏と自転車が吹っ飛んで、彼女の前に跳んできた自転車のせいで彼女も転んで。起き上がったら、目の前に、 彼氏が血まみれで倒れていた。

 近所の人が集まってきて、救急車が呼ばれた。彼女はずっと、彼のそばに座って救急車を待っていたんだそうです。

 救急車の音が間近になって、彼女が音を頼りに道の先をじーっと見ていたら、ふいに、視野に影が入ったのでそちらを見たら、彼氏が起き上がって、彼女を見ていた。血まみれで、大きな目を開いて、彼女を見て。そうして、尋ねたんだそうです。

『俺、死んだの?』

 と。

 彼女が驚いて返事をできないでいるうちに、彼はまた、ばったりと倒れちゃったんだそうです。

 後はもう、意識を取り戻すことなく、その夜、息を引き取った。

 それから彼女は一人で勉強を続けて、医大にも無事合格した。

 話を聞いたのが、彼女が新米の医師として病院に出入りしていた頃だったんですけどね。その病院が、中三の夏に彼氏が死んだ病院だったんだそうです。

 ある日、彼氏と同じような事故で運ばれて来た男の子の手術に立ち合って。やっぱり、色々思い出しちゃったんだそうです。長い手術だったし、ひどく疲れちゃったんでしょうね。帰り支度をしてからもすぐに帰らず、廊下のソファでぼーっと座り込んでしまったんだそうです。

 そうしたら、隣りに、誰かが座った。

 誰だろう? と思って見たら、そこに、血まみれの男の子が座っていた。

 大きく目を見開いて、彼女の顔を見ている。それは、死んだ彼氏だったんだそうです。

 驚いている彼女に、彼は尋ねたんだそうですよ。

『俺、死んだの?』

 と。

 その時は、人が来たせいか彼はすぐ消えてしまったんだそうです。

 けれど、彼はたびたび、彼女の傍に現れるようになった。

 そして、尋ねるんだそうです。

『俺、死んだの?』って。

「ほら、来た。来たよ、また」

 その話を聞いてるとき、僕の隣りが、たまたま空いていたんですよね。そこを指差して彼女が言うんですよ。彼氏がいるって。また、尋ねているって。

 なので、言ってあげました。

「君ね。あなたね。死んでるよ」って。

 まあ、僕が言ってあげても特になんの効果もなかったようで、その後もたびたび、彼女のところに現れているらしいです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


次回は冬季回ですが、お昼寝中のため、別話が入ります。

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