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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十六巡 死者の主張
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第八十三話 冬沙 暖炉

 知人から聞いた話です。子供の頃、知人は洋館に住んでいて、広いリビングに暖炉があったそうです。大人が丸まって寝られるくらい大きいそうですよ。

その洋館は大正時代のもので、今は移築されて資料館として使われているそうですが、暖炉の部分はレンガ積みだったので半分くらい解体時に壊れてしまって、新しい資材も混ぜて作りなおしたものだそうです。

 日本で暖炉がある家というのはあまりないですが、よくサンタクロースが揺り椅子に座って暖炉の前で世界中から送られて来た手紙を読んでいる、なんて絵で見たことはあると思います。レンガ造りで、炉で薪が燃えていて、柵があって、上は飾り棚になっている。

 知人の家のものもそのような感じで、飾り棚に家族写真を飾ったりしていたそうです。

 私はあの柵は子供が入らないように置くものだと思っていたのですけど、実際には柵はあったりなかったり、あっても中に積んだ薪が崩れて室内に転がり出たりしないように少し柵のようなものがあるだけだったりするし、大きなものだと、それさえもないのだそうですね。

 そもそも、火がついていれば熱いので、子供がうっかり近づくこともないのだそうです。ストーブに手をついてやけどしたり、囲炉裏に落ちたりというやけどのイメージがありますが、暖炉ではその手のやけどはあまりないのだそうですよ。子供より油断した大人がやらかすことはあるそうですけどね。

 暖炉は、周囲に延焼するようなものを置いていなければ、火をつけっぱなしで寝ても大丈夫なんだそうです。

 知人の家の暖炉では、かつて死亡事故がありました。

 大正時代、家を建てて間もない頃。裕福なお宅で、使用人さんも数人いて、その使用人さんの一人が亡くなった。

 暖炉の前も広めにレンガ敷きになっていて、上半身が暖炉の中で、低い柵が胸の下、下半身はレンガ敷きの上にある状態で、朝、焼死体で見つかったのだそうです。

 その方が、寝る前に明朝の寒さをやわらげるために薪を追加していたところ、心臓発作を起こして奥に向かって倒れ込んでしまい、火が衣服に移って焼死してしまったという結論になったとのことでした。ご高齢だったのだそうです。

 さすがにその年はもう暖炉の使用は控えたそうですが、次の冬からはまた、暖炉の使用を再開したのだそうです。

 寒さが厳しくないうちは、そのまま燃え尽きさせていた。厳しくなってきて、最後に薪を足すようになった。

 すると、翌朝、灰が散らかっていることがある。

 毎日ではありません。数日に一度。

 続くために使用人(がしら)から主人にも報告され、共通点を探すよう指示された結果、灰が散らかる日は、共通して同じ使用人が最後に暖炉を確認していたことがわかった。

 最後に薪を足して延焼するものがないかよく確認する係を、交代制でしていたのですね。

 使用人頭に追及されて、その使用人は、前年に死んだ使用人を殺したことを白状したそうです。

 お金を借りていて、返済を求められて首を絞めて殺してしまったそうで、首を絞めたあとがばれないように暖炉に突っ込んだのだそうです。ちゃんと、延焼しないように気を付けた、と言い訳したそうですよ。

 前の年のことだったので警察には突き出さず、遠くに行けとお金を渡してその使用人を追い出したそうです。以降、灰が散らかることはなくなったと、当時を知るおじいさんに、知人は聞いて育ったのだそうです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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