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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十六巡 死者の主張
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第八十二話 昴 報道

 うちの社長に聞いた話です。

 社長の友人夫婦が、従兄弟の子供を引き取った時の話だそうです。

 数十年前、津波を伴う日本海側の大地震が起きました。

 その震源地に住む従兄弟親子を心配して、夫婦でテレビをずっと見続けていたんだそうです。

 情報が入れば入るほど、心配は募っていく。震源地が近く、津波被害が最もひどいと報道されている場所に、その従兄弟は住んでいたんだそうです。

 当然、電話は通じません。当時はまだ、携帯電話もEメールも普及していなかったし、NTTが非常電話を設置してくれていた。でも、そこから本人が連絡してきてくれることもなかった。

 親戚の誰に電話しても連絡は入っていないと言うし、連絡が入ったら知らせてくれと頼んでも、逆に連絡はあったかと尋ねる電話が入るばかり。そうして、二日、経ちました。

 病院に入院していて連絡が取れないだけかも知れない。非常電話が混んでいて連絡を控えているだけかも知れない。

 そう思って、彼らはテレビを見続けていました。

 すると、従兄弟が住んでいた地名からの中継が流れ出しました。やっと、テレビ局が現地に入れるようになったんです。ヘリの映像はあっても、地上からはようやくだったそうです。レポーターが語る背後には、メチャクチャになった住宅街が映っていました。今もまだ、行方不明者がこの瓦礫の中に埋もれている、と、報じていました。

 背後で瓦礫を掘り返す人々の中に知った顔はないかと、彼らは食い入るように画面を見ていたそうです。

 レポーターがそばにいる人を呼び、マイクを向けました。マイクを向けられた人物を、彼らは知っていました。子供を抱いた女性でした。

 手当てを受けた子供を抱いて、その女性は、その子供が父親の死体と共に掘り出され、他に身内がこの辺りにいないことから、親戚に名乗りをあげて欲しい、と訴えていました。

 レポーターは、この子に心当たりのある方は下記の電話番号へお知らせ下さい、と言い、画面には、テレビ局の電話番号が表示されました。

今だとこんなのはないでしょうけど、昔はありだったみたいです。

 彼らは大慌てでその番号をメモして、電話をかけました。その子は従兄弟の子供だ、と。

 被災地に苦労して駆けつけて、彼らは従兄弟の亡骸と対面し、子供を引き取りました。テレビでもアナウンサーが口頭で、無事連絡がついたとか報じたらしいです。

 彼らは現地を離れる前に、崩れたお寺の墓地へ行きました。その従兄弟の奥さんのお墓があるところです。

 倒れた墓石を直して、従兄弟の遺骨は改めて納めにくる、そして、子供はちゃんと彼らで引き取って育てると、それらを奥さんに約束して、その地を去ったのだそうです。

 テレビ局には、子供を無事に引き取れた礼だけを言って、子供を抱いた女性が、もはや生きていない女性だったことは 黙っていたそうです。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


このお話の津波地震は、1983年の日本海中部地震を想定しています。

死者104人、うち津波による死者は100人だそうです。津波は10分足らずで到達し、高いところでは10メートル以上の波高。秋田では遠足中の小学生43人と教師が津波にさらわれ、児童13人が亡くなったそうです。港の工事現場でも多くの犠牲者が出たそうです。

昼の地震で、津波がすぐ来たために、漁船などがすぐに救出活動できたため、行方不明者もおらず、多くを救出できたのだそうです。

大震災と名称のついた関東大震災・阪神淡路大震災・東日本大震災は少なくとも名前くらいは覚えられているでしょうけれど、100人以上の死者が出ていても、わずか40年ほど前の地震でも知っている人はあまりいないのではないでしょうか?

日本では、それほどの地震が埋もれてしまうほど、被害地震が多いのです。

日本及び周辺海域ではたびたび大地震が起きており、津波被害も起きています。

日本は地震大国です。どうぞ、常に備えを。

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