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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十五巡 悪い霊
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第八十一話 亜希 ながらスマホ

 昔の友人が、数年前、自転車で車とぶつかって、亡くなりました。

 双方まっすぐ進んでいて、対向車にぶつかった感じですね。道路もまっすぐ。電柱やら脇の家の塀やら庭やらガードレールやらはありましたから、目が散らかって見えなくなっていたのかもしれません。あと、その日はすぐ近くの小学校で運動会をやっていて、その放送が聞こえていたんだそうです。自転車と電気自動車でどちらも静かだったから、対向車の音が聞こえなかったんじゃないかとも言われています。

 それにしたってね、まっすぐで見えないもんか? て。

 ドライブレコーダーの解析と車の方の運転手の証言で、原因がわかりました。

 双方の、ながらスマホが原因でした。

 友人も、自転車をこぎながら片手でスマホをいじって画面を見ながら走っていた。

 車の方も、道に迷ってナビにしていたスマホ画面をいじりながら走っていた。

 友人は地味な服装でヘルメットなし。車も黒でアスファルトに同化していた。

 運動会の音で相手の接近する音に気付かず、ながらスマホでいたために双方目視確認がおろそかになり、ごっつんと。

 友人は更に農業用水路に落ちました。それも大きい水路で、農閑期で水もないコンクリの底に弾き飛ばされた勢いのまま頭から転落しました。ちゃんと、ガードレールもあったんですけどね、道路の真ん中を走っていたようで、弾かれて横に滑って、ちょうどガードレールの縦棒の間に吸い込まれたようです。

 友人たちと、お葬式の後、お花とお水を置きに行きました。一年後にまた行ったときは、ご近所さんに撤去に来ないならやめてくれと言われて、お供えして手を合わせてそのまま持ち帰ったんですけど、その時に、そのご近所さんから聞いたんです。

 この一年で、何人も、滑って落っこちるようになった、と。

 単独事故ですけどね。自転車の人が、滑ってガードレールの隙間から農業用水路に転落するんだそうです。春から夏は水が流れているので、ぼちゃんと。あやうく溺死しかけた人もいたそうです。

 更に一年後にまた友人たちと行くと、その現場のところだけ、ガードレールの下に板が張られていました。命日だから気を付けていたんでしょうね、またご近所さんが現れたので、お参りしたら撤去しますと伝えてお供えしてね。それから、転落事故が続くので、町内会で板を張ったんだと聞かされました。転落はしなくなったけど、その板にぶつかる人は今もいるんだよと。跳ね返って車に踏まれた人もいるんだよ、と言われました。踏まれたけど警察も呼ばなかったそうですけどね。ケガはなかったようです。踏まれたのにね。

 ご近所さんが言うには、どうも、ながらスマホの人が転ぶらしいと。みんな、スマホが飛ばされたと、探し回っていたって話でした。

 自分が事故死したから、警告かな、と話していましたけど。一応、やり過ぎかなって、もう十分だよって、みんなで手を合わせました。

 更に翌年、今年で最後にしようかって話し合いながら行ったら、板が新しくなっていて、『ながらスマホはやめましょう』と、ペンキで文字が書いてありました。

 ご近所さんは現れませんでしたけど、お供えは持ち帰りました。その後は行っていないのでどうなったかわかりませんけど、近所に住む友人からも、大きな事故があった話は聞いていません。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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