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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十五巡 悪い霊
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第七十九話 冬太 シャッター

 勤め先の病院でね。改築前の時のことなんで今はもうないんですけど、地下に壊れたシャッターのある部屋があったんです。

 古い機材なんかを処分までの間、一時的に保管しておく部屋でした。シャッターとドア両方あったんで、普段はドアで出入りするわけです。大物を運搬するときだけシャッターを開ける。手動だし、音は大きいし、霊安室の奥だし、とても不人気な部屋でした。

 そのシャッターが、開けるときに大きい音がして、何故か勝手に静かに落ちることがあったんです。普通に閉めると大きい音がするんですよ。なのに、勝手に落ちる時は、静か。だから、気づかずに挟まれてしまうということが何度かありました。

 なので、開けている間はしまい込んであった古い衝立をシャッターの下に入れておくように通達して、貼り紙もしておいたんです。

 それでも、たまに怪我人が出て。それで通達しなおして、床にも極太のマジックで注意書きしたりもして、それでも、挟まる人が後を絶たない。

 挟まれた人に話を聞くと、うっかり衝立を忘れた、と必ず言うんです。何人も挟まれているから注意しているのに、たまたま、かかわった全員が忘れる。慣れのせいでもないんです、ちゃんと運んでいる途中に打ち合わせしていたりするんですよ、声掛けあってちゃんとやろうって、衝立担当も決めておいたりね。なのに、その時になったら全員忘れている。

 忘れずに衝立を挟んでおいて閉める時には大きな音がするので、そのよくわからない法則を利用して静かに閉めようと考えた人もいましたが、そういう時は誰も挟まらない。閉まるのを期待しているだけに、不用意に挟まれるような通り方をしないですからね、結局、大きな音を出して閉めるしかないんです。

 ある日、やっぱり複数人で機器をしまいに行って、衝立を動かすのを忘れた人たちが、静かに挟まれました。

 静かなくせに勢いがあるので、しゃがんで作業をしていた二人の頭にもろに落ちました。

 首痛めてね、労働災害です。手続きすごい大変です。

 なので、また通達しなおした。打ち身程度で本人もびっくりしたって言う程度だったのが、とうとう労働災害ですからね。

 衝立もシャッターを開けたら通せんぼをする形で置いておくように決めて、床にも衝立の定位置を書いて、シャッター本体にも、鍵を開けるときに必ず視界に入るところに注意書きしましたよ。

 それなのに、また一か月後くらいに、今度は足を挟まれて骨折。

 聞けば、関係者全員が、うっかりした、と。シャッターを開けて目の前にあった衝立も、わざわざ廊下に丸ごと出してね。

 もちろん、シャッターの点検は何度も業者にお願いしていました。建物の取り壊しが決まっていたので、交換こそしなかったですけどね。

 同じ場所で二回目ですから、労働基準監督署も来たし。だからって、入れるはずのものを廊下に放置していても怒られますからね。作業手順表とか作って、なんとかしのいだんですけども。

 これ以上どうすればいいんだと、ほとほと困りまして、まあ、神社にね、相談に行きました。

 こんなわけで困ってます、と。

 相談して戻ったら、事務員さんたちがすぐに報告に来ました。

 僕が出かけている間に、地下で、ぱあんっと、大きな音がした。手を打ち合わせたような音が、ものすごく大きく。地下の霊安室や電気室なんかにいた人たちも何事かと飛び出してくるような大きな音がした、と。

 それ以来、衝立を忘れる人はいなくなり、挟まれる人もいなくなりました。

 以降事故なく、二年後に建物ごと解体されまして、改築後もそのようなことは起きていません。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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