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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十五巡 悪い霊
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第七十七話 昴 事故物件

 今住んでいるアパートは、大学に入る時から住み着いているんですけども、当時はまだ築十年くらいの新しめ物件でした。

 二階建ての一階角部屋にいるんですが、アパート探しの時に、何故か真上の二階の方が家賃安かったんです。いわゆる事故物件ですね。

 一応話を訊いたら、自分の進学先の女子大生が去年自殺したってことでした。風呂場で、混ぜたら危険ってやつを混ぜて。内側から窓と折り戸と排水溝に目張りしてね。

 朝、新聞配達員がドアに「有毒ガス発生中注意!」って書かれた貼り紙をみつけて通報したので、遺体はすぐにみつかったし巻き添えになった人もいなかった。

 だから一階は大丈夫ですよ、ということでほぼ値下げしてもらえなかったんですがね。その二階に、同時に入居してきた人がいたんです。

 同じ大学の同じ学科の女の子でした。

 アパートの二階に上がる階段は反対側だったし、そっちからも私の部屋の脇からもすぐ道路に出られる構造だったんで、上下とはいえ特に顔を会わせることもなかったし、しばらくは二階の人とは知らずに授業で顔会わせてました。

 二階の人は静かに暮らしてくれていたし、たまに隣りが友達と騒ぐくらいで問題なく過ごしていたんですけどね。二階の人はちゃんと風呂場使ってるんだなあって物音はたまにしてましたよ、私はおおむねシャワーでしたけど。いや、聞こえるもんは聞こえるんで勘弁してくださいね。

 ちなみに部屋はね、玄関入って脇にキッチンがあって、反対側に風呂トイレがあって、通り抜けて引き戸一枚で六畳間がある。奥行半間のロフト付き。寝るほどは幅がないので、物置ね。二階はちゃんとキッチン風呂トイレの上がまるごと広々ロフトだったから、ロフトに物を放り込むたびに、あれでこの部屋より安いなんていいなあと思ってましたけど、選ばなくて良かったですよ。

 六月だったかな。暑くてね。でもエアコン入れるほどでもないし、網戸にしてたんですよ。

 シャワー浴びて夕飯作ってたら、二階でシャワー使ってるらしい音が聞こえて。暑いから風呂やめてシャワー派になったんだろうなあと思いつつ、部屋にご飯持って行きました。ちゃんとね、水回りなところで音が聞こえるときは部屋に行ってましたよ。そんないいアパートじゃないですからね。

 で、ご飯食べ始めようとしたら、悲鳴が聞こえて。

 何事? て思う間に上の部屋をつっきる足音がして、ベランダの窓を開ける音がして。

 あ、ベランダ出たな、と。でもって、二階の、玄関から引き戸までの間あたりが、ぎしって鳴るのが聞こえた。ものすごく重いものが、風呂場の前辺りに立った感じ。

 あ、これはヤバいなと、さすがに感知しましたよ。

 そしたら、ベランダでまた特大の悲鳴が聞こえて、網戸だったからね、生で悲鳴がもろに入ってきましたよ。で、ベランダから、私の部屋の前に、どさって、落っこちて来ました。裸の女の子が。

 一階はコンクリの物干し場で、隣りとの間は板が張ってあったけど一番奥は少し開いててね。そこから隣人が顔をのぞかせて来て、その上の階の人もベランダに出て来て、警察だ救急車だって大騒ぎね。私は女の子にとりあえずタオルケット掛けてあげたけど。素っ裸だからね、触れないし。二階の隣室の女の人が来て介抱してくれました。

 救急隊も私の部屋を通過するし、警察には事情を訊かれるし。まあ、隣りもその上も物音聞いてますからね、別に私が怪しまれることはなかったですよ。食べ損ねた夕飯の前を消防も警察も行き来してたしね。で、警察に一応ってことで二階の部屋のどこで物音したのかって確認で女の子の部屋をちょっとのぞくことになったんです。

 風呂場の前に、大きな水たまりができていました。異臭がしてね。プールの塩素の臭いを強くした感じの刺激臭。それで、不動産屋に聞いた話を警察にしましたよ。

 お風呂場は特に臭いはないって言ってました。彼女がシャワーだったのは暑かったからじゃなくて、湯舟でぬいぐるみとかを浸け置き洗いしてたからみたいです。そんなこと言ってました。

 自殺した女子大生は、湯舟で混ぜるな危険を混ぜて、そこにのしかかるようにして死んでいたらしいです。

 二階から落ちて来た子は、腕とか折れたけど半月くらいで大学出てきましたね。大学で顔会わせて、教えてくれたところによれば、シャワーを浴びていたら女の幽霊が湯舟に自分を突き落とそうとしたと。必死に逃げたら風呂場から出て来たので、慌ててベランダから逃げたんだそうです。もちろん、部屋は引っ越すと。

 次に二階に越してきたのは男でしたね。二、三人男が続いて、そのあと女の人が入ったけど、騒ぎはなかったけどすぐ引っ越して、その後は男ばっか。

 不動産屋も、男性専用の部屋にしたみたいです。

 ちなみに、今年度末でアパートは取り壊し予定です。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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