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百物語が終わる迄  作者: 藤田 一十三
第十三巡 名残り
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第七十一話 亜希 お気に入り

宮内亜希。神谷家相談役代理。防衛大卒の元自衛官。二児の母。

 友人のお兄さんのお嫁さんのお祖母さんが、亡くなった時の話です。

 こう言うと、誰それ? て辺りから聞こえてきた話ですけど、友人が仲良くしている義理のお姉さんの体験です。

 おばあさんが亡くなって、まだ形見分けもしていない頃、夜中にそのお祖母さんの部屋から物音が聞こえてきたんですって。

 お嫁さんが高校生くらいの時だったらしいんだけど、お祖母ちゃんっ子だったから、もしかしたらと思って仕切りの襖を細く開けて、中を覗いて見たそうなのね。

 そうしたら、お祖母さんがお気に入りの着物を着て背中を向けて座っていたのが見えたんですって。

 背筋を伸ばして、じっと、床の間の掛け軸だか生け花だかを見ていた。

 彼女は、声をかけてはいけない、と何故か思ったんですって。それで、しばらく見守って、後は静かに襖を閉じて部屋に戻った。

 翌朝、家族にその話を伝えて、皆で部屋を見に行ったらば。

 お祖母さんのお気に入りの着物が、彼女が見たとおり、部屋の中央で床の間を向いたまま、帯や小物もそのままに、抜け殻のように人が着た形のまま、少し崩れてそこにあったんですって。

 その話を聞いてもなお、形見分けでその着物を含む和服を譲り受けた人がいたそうなんでうけど。そこでも同じことが起きて。結局、その着物一式はお寺に預けて焼いてもらったんだそうです。

 お気に入りのものをお棺や骨壷に入れるのはそういうことなのかなって、思った話です。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。


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